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【新聞の読者投稿欄】読んでみたら面白い!「チクリ」だけでなく、うるっとくるものも。編集者がページづくりに込める思いとは?

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静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「新聞の読者投稿欄」です。先生役は静岡新聞の山本淳樹生活報道部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年4月25日放送)

(山田)今日は静岡新聞の読者投稿欄の話題ですね。

(山本)はい。投稿は読者の「生の声」です。現在はSNSが身近にありますが、読者投稿欄を読むと、それとは違った多様な意見があり、新聞の楽しみ方の一つとなっています。

どの新聞にも読者投稿のページはありますが、静岡新聞は「読者のひろば」という名称で展開しています。毎週月曜日から土曜日までページを設け、毎日4本ずつ掲載しています。水曜日と土曜日は「10代の思い」というタイトルで、10 代からの投稿に特化しています。それ以外の日は20代以上の皆さんの声を載せ、時には100歳以上の方から投稿をいただくこともあります。

(山田)どのくらいの数が届くんですか。

(山本)おかげさまで毎日たくさん届きます。全てを掲載するスペースがないので、編集者の方で選んでいます。

(山田)へぇー。たくさん届く投稿を皆さんが読んで、ということですね。

(山本)私だけではなく、担当者が手分けをして全ての投稿に目を通します。投稿はさまざまな形でいただいていて、3分の1ほどが電子メール、残りは郵便やファクスで届きます。

郵便ですと、手書きのきれいな字で書いてくれる方もいます。字数は400字程度と制限があります。若干の伸び縮みはこちらで調整しますが、多くの方は400字に合わせて書いてきてくれます。

(山田)調整も静岡新聞の方でやるんですか。

(山本)編集担当者は校正や修正をします。用語を一般的に新聞に載っているものと同じにしたり、データを引用している場合は事実関係を確認したりします。

(山田)ラジオを聞いて自分も投稿したいと思う方もいるかもしれないのですが、どういった投稿内容が載るんですか。

年代や居住地を超えた多様性を重視

(山本)私たちの考えとしては、年代や居住地など多様性を大切にしています。さまざまな立場の人が議論をする場にしたいと思っているので、「こういう内容を書いたら載る」というのは言いづらい部分があります。

(山田)ちなみにどういう投稿があるんですか。

(山本)本当にいろいろあります。例えば社会問題に対して憤りを書く方もいます。最近ですと、やはり川勝平太静岡県知事の発言や、静岡県知事選に関するものも見ます。一方で、個人的なことを書いたものもあります。私が最近印象に残ったものは、自分の家族のことを書いた投稿です。

(山田)今日は山本さんが印象に残った投稿をいくつか名前を伏せた形で紹介してくれるそうですね。

目頭が熱くなった親子のエピソード

(山本)最近読んで泣きそうになったのは4月19日付の紙面に掲載した「巣立つ子に感謝とエール」という、浜松市に住む51歳の主婦の投稿です。

「この春、子供が大学進学のため、家を出て一人暮らしを始めました」という書き出しで始まります。親として不安や寂しさを感じながらも駅までお子さんを送った際、車からたくさんの手荷物を降ろし終わったお子さんがふと立ち止まって「18年間、育ててくれてありがとう!」と叫ぶように言ったそうです。

文章は「子供の前では涙は見せたくなかった私は車からは降りずに『何かあったら連絡しなさいね』と言って車を出しました。帰りの道は、涙が流れて仕方ありませんでした」と続き、最後は「こちらこそ、育てさせてくれてありがとう。たくさん苦労かけた親なのに。私の子供に生まれてくれてありがとう。君の幸せをずっと祈っています」と締められていました。

(山田)いやー、いいですね。

(山本)自身の体験に基づいた実感の込もった文章だと思い、採用しました。この短い文章の中からこの方の親子関係、子供の気持ちや親の気持ちが透けて見えました。私もこの方と同じぐらいの年代なので。多くの親がこういう思いで春のシーズンを迎えているんだろうなと思います。

(山田)他にもありますか。

(山本)社会問題に関する投稿でも、新たな気づきを与えるものがあります。その一つはセルフレジに関して書かれた静岡市の73歳の方からの投稿です。4月23日付の紙面に掲載しました。

最近の小売店はセルフレジが多くなってきていますが、時々困惑している年配者を見かけるという話です。店員が忙しそうにしていたので、困っている人に自分が声を掛けて使い方を伝えたことがあったそうです。

小売店は接客サービス業だと考えるこの方は、客が黙って商品を選び、黙って機械と向き合い代金を支払い、黙って帰る状況を見て、「セルフレジに限らず、人間は便利さや効率化と引き換えに少しずつ何かを失っていくような気がしている」という思いを綴りました。私は共感を覚えました。

(山田)いいですね。最後の一言が。

(山本)これも自身の経験を踏まえた言葉なので説得力ありますよね。

(山田)こういう何か世の中に自分が感じたこと、身近な対社会問題に対してチクリと言うパターンもありますよね。他にはどうでしょう。

(山本)鉄道の話もありました。富士宮市の59歳の方の投稿で4月11日付の紙面に掲載しました。

少し前に全国的なニュースになったんですが、JR東日本管内の東京と千葉を結ぶ京葉線のダイヤ改正で不便になると地元から強い声が上がり、一部が修正されたということがありました。

投稿ではこの事例を基に、富士宮から静岡まで直通する朝の1本の電車がJR東海のダイヤ改正で廃止されて不便になったことに対し、「地元の富士宮市や富士市はJR東海に抗議はしたのだろうか」と疑問を呈しています。こうした投稿が利便性を考えるきっかけになれば良いなと思いました。

読者投稿欄の価値は実名にあり!

(山田)「読者のひろば」はチクリとするものがあればほっこりするもの、うるっとするものといろいろありますね。載った投稿を見ると、やはり気付かされるものがありますね。

(山本)読者投稿欄の価値は、自分の住所と実名を出して言いたいことを400字にまとめているという点にあると思います。大変な作業だと思いますし、それが編集担当者の目を通して世に出ます。最近は自分の言いたいことをSNSで簡単に発信できるようになりましたが、それとは違うものがあると思います。

実名を出すには覚悟が必要ですし、少し立ち止まって考えるのではないかと思います。何かを批判するにしても、相手のことも思いながら書くのではないでしょうか。私たちは新聞がSNSとはまた違った議論の場になればいいなと思いながら毎日編集しています。

(山田)先ほどのセルフレジの話も、10代や20代の中にはセルフレジのほうが便利だと考える人もいるかもしれないですよね。でも、投稿した73歳の方はこんなふうに思っているんだということで、年代や性別を超えて何かしらの気づきがあるかもしれない。それが読者投稿欄ですよね。

(山本)現在、浜松市で浜名湖花博が開催されているので、「花と私」というテーマで投稿の受け付けを始めました。今後はこちらからテーマを絞って投稿を募ることもしていきたいと考えています。

(山田)そこはラジオリスナーさんたちが得意とするところですからね!皆さんもぜひ投稿してみてください。また、「読者のひろば」を読むのが楽しみになりました。今日の勉強はこれでおしまい!

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