職場で「いい人」でいるのに疲れた。人間関係に疲れたときに見直したいこと
――職場の人間関係が悪いわけではないのですが、「感じよく対応しなきゃ」と、いつも気を張ってしまいます。断りたい仕事も引き受けてしまったり、モヤモヤしても飲み込んでしまったりすることが多く、最近は人と関わること自体に疲れを感じています。
周囲からは「いい職場だよね」と言われることもあり、「こんなことでつらいと思う自分がおかしいのかな」と悩むこともあります。
“いい人でいようとするほど苦しくなる”感覚と、どう向き合えばいいのでしょうか。
職場の人間関係に悩みがあるわけではない。それなのに、なぜか働いていると疲れてしまう。そのような感覚を抱えたことはないでしょうか。
その疲れは職場の人間関係そのものではなく、「周囲に配慮し続けること」や「自分の気持ちを後回しにすること」から生まれているかもしれません。
そこで今回は、キャリアコンサルタントの林碧先生に、
•なぜ「いい人でいよう」とするほど苦しくなるのか
•その状態が続くと何が起こるのか
•周囲も自分も大切にするための考え方
について解説いただきました。
「人間関係は良好なはずなのに疲れてしまう」「周囲に合わせることが当たり前になっている」と感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
キャリア・コンサルタント
林 碧(はやし みどり)
株式会社キャリアイズ 代表取締役社長、国家資格キャリアコンサルタント・キャリアコンサルティング技能士1級、両立支援コーディネーター。
企業人事経験および個別相談対応経験を活かし就職・転職の相談からライフキャリアビジョン構築、育児・傷病など個別事情との両立まで、幅広い相談に対応。通算6000件以上の個別面談実績、年150件以上の研修登壇実績を保有。特に若年層のキャリア形成支援を得意とし、大学での登壇実績が豊富である他、企業向けの育成者研修や若手定着支援、組織コンサルティングも実施。日経Womanアンバサダー。小学生2児の母。
•「人間関係がいい職場=楽」という思い込み
•「いい人でいよう」とするほど苦しくなる理由
•それは「性格」ではなく「構造」かもしれない
•「言わなくても伝わるはず」と思っていないか
•「待つ関係」から「調整する関係」へ
•変えられない自分を責めなくていい
•「いい人」をやめるのではなく、扱い方を変える
•周囲も、自分も、大切にできる関わり方へ
「感じよく対応しなきゃ」
「相手の気分を害さないようにしなきゃ」
職場でそんなふうに気を張り続けて、家に帰るとどっと疲れてしまう。
人間関係が特別悪いわけではないはずなのに、なぜかしんどい——。
そんな感覚を抱えている方は、決して少なくありません。
周囲からは「いい職場じゃない?」と言われることもあるとなおさら、「こんなことでつらいと思う自分がおかしいのではないか」と感じてしまうこともあるでしょう。
けれど、そのしんどさは、決して“気にしすぎ”ではありません。
そこには、少し見えにくい理由が隠れています。
「人間関係がいい職場=楽」という思い込み
私たちはどこかで、「人間関係がいい職場なら、働きやすいはずだ」と思い込んでしまいがちです。
確かに、対立や衝突が多い環境に比べれば、穏やかな関係性は安心感につながります。
ただし、ここで見落とされやすいのが、「摩擦が少ないこと」と「負担が少ないこと」は別だという点です。
一見うまくいっている関係性も、実は個人の負担によって成り立っている、という状況は時折見受けられます。
•空気を読んで発言を控える
•断りたい依頼を引き受ける
•モヤっとしたことを飲み込む
こういった行動が積み重なれば、内側には確実に負荷がたまっていきます。
つまり、「人間関係がいいのにしんどい」という状態は、決して矛盾ではないのです。
「いい人でいよう」とするほど苦しくなる理由
では、なぜこのような負担が生まれるのでしょうか。
ひとつの鍵になるのが、
「自分の本音(WANT)」と「こうあるべき(SHOULD)」のズレです。
本当は
「今回は引き受けるのが難しい」
「それは少し違和感がある」
と感じていても、
•感じよく対応するべき
•相手に迷惑をかけてはいけない
•空気を乱してはいけない
という思いが強いほど、自分の気持ちを後回しにしてしまいます。
人によっては、そうした気持ちを優先することが「わがまま」だと感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、この状態が続くと、人は少しずつ疲れていきます。
「人と関わること」そのものよりも、“自分を抑え続けること”に疲れてしまうのです。
それは「性格」ではなく「構造」かもしれない
ここで大切にしたいのは、このしんどさを「自分の性格の問題」とだけ捉えないでほしいということです。
職場によっては、
•空気を読むことが前提になっている
•“いい人”が評価されやすい
•役割や線引きが曖昧で断りにくい
といった環境の影響で、無意識のうちに感情面での配慮が求められやすくなっている場合や、自分の思いを発しにくい構図が成立していることもあります。
つまり、組織として「いい人でいようとするほど負担が増える構造」になっている可能性もあるのです。
「いい人であろう」とする人は、 自分の責任を必要以上に感じてしまうことも多いのですが、あなたのせいだけではない構図もあることを、どうか知っていてほしいなと思います。
「言わなくても伝わるはず」と思っていないか
とはいえ、ひとつ見直してみたいポイントもあります。
それは、「言わなくても察してもらうこと」を前提にしていないかという点です。
•これくらいは気づいてほしい
•言わなくても分かってもらえるはず
•言ったら面倒なことになりそう
そう感じて、言葉にすることを控えてしまってはいないでしょうか。
ただ一方で、こういった悩みをあなたが人知れず抱えていることを、 周りの方は知らないだけかもしれません。
「もう我慢の限界で…」とご相談に来た方に、
「退職も視野に入るほど追い詰められているのであれば、その気持ちを伝えてみたら?」とご提案してみることがあります。
実際、その後
「そんな風に思っていたとは知らなかった」
「それなら、それはやらなくていいと言ってもらえた」
といった反応があったとお聞きすることも少なくありません。
中には「組織が変わるきっかけをくれてありがとう」と感謝されたケースもあるのです。
もちろん、すべての職場でそれがうまくいくとは限りません。
ただ、「どうせ分かってもらえない」と決めつけてしまうことで、 可能性を閉じてしまっている場合もある、ということです。
思っている以上に、言葉にしないと伝わらないこともある。
そのことも、ぜひ知っておいていただけたらと思います。
「待つ関係」から「調整する関係」へ
だからこそ大切なのは、
“気づいてもらうのを待つ関係”から、
“少しずつ調整していく関係”へシフトしていくことです。
といっても、急に強く主張する必要はありません。
いきなり本音をすべて伝えようとすると難しいものです。まずは「小さなNOを伝える」ことから始めてみましょう。
たとえば、
•すぐに返事をせず、一度持ち帰る
•「今回は難しいかもしれません」とやんわり伝えてみる
•小さな違和感をひとつだけ言葉にしてみる
できるところから少しずつ、いつものパターンを変えてみる。
そんなふうに、少しずつ変えていくのも一つの方法です。
変えられない自分を責めなくていい
もしここまで読んで、
「わかっているけれど、でも難しい」と感じているとしたら——
簡単には変えられない自分を、どうか責めすぎないでください。
周囲の期待を大切にしすぎてしまう背景には、
•これまでの人間関係の経験
•周囲に配慮することでうまくやってきた実感
•養育環境の影響
といった、長い時間をかけて形づくられてきたものがある場合も少なくありません。
そのため、「分かってはいるけど、なかなかできない」と感じるのも、とても自然なことです。
短期間で変えられるものではありませんし、そう思ってしまう自分を「ダメだ」と否定する必要もありません。
「変えてもいい」
「今までのように振る舞えない自分も、受け止めてもらえる可能性がある」
まずは、そのことを知っていただけたらと思います。
「いい人」をやめるのではなく、扱い方を変える
大切なのは、「いい人であること」を手放すのではなく、そのあり方をどう扱うかを見直すことです。
周囲を大切にできることは、あなたの強みでもあります。
だからこそ、それを否定するのではなく、
•自分の気持ちに気づく
•すべてではなく一部を守る
•無理のない範囲で伝えてみる
そういった形で、少しずつバランスを整えていく。
周囲も、あなた自身も大切にできる方法はないか。
少し深呼吸して、考えられるといいですね。
周囲も、自分も、大切にできる関わり方へ
人間関係を大切にしたいと思う気持ちは、とても自然で、尊いものです。
ただ、そのために自分を後回しにし続けてしまうと、結果的に関係そのものをつらいものにしてしまうこともあります。
だからこそ、「周囲を大切にしながら、自分も大切にする」。
少しずつでも、「自分はどうしたいのか」を大切にしながら、あなたにとって無理のない関わり方を探していっていただけたらと思います。
この記事を読んだあなたの未来が、より心地よいものでありますように。
制作:マイナビ転職編集部