「新幹線や渋滞で子どもがもたない…」スマホより子どもに読ませたい“遊べる絵本”3選[絵本専門店の書店員が選出]
絵本は、子どもへの贈りものに最適なアイテム。とはいえ、ぴったりな1冊を選ぶのは、なかなか難しいもの。連載【子どもの本のプロが選ぶギフト絵本】では、絵本の専門家が、プレゼントにふさわしい絵本をセレクトします。第23回は、子どもの本専門店「ブックハウスカフェ」店長の茅野由紀(ちの・ゆき)さんが、お出かけのお供におすすめの“遊べる絵本”をご紹介。
シリーズ40万部突破! 大人気絵本の最新作
お出かけが多い時期、移動中やちょっとした待ち時間など、お子さんが退屈してしまうことも多いでしょう。そんなときの助けになるのが“遊べる絵本”。
そもそも絵本は、親子でコミュニケーションをとったり、インタラクティブであったり、遊びの要素がたくさん含まれています。そんな絵本の中でも、今回は親子で一緒に夢中になれるもの、成長の記録になるものなど、持て余したはずの時間でさえ楽しい思い出になるような3冊をセレクトしました。
最初にご紹介するのは、今年(2026年)7月に発売されたばかりの新刊『パンダたいそう なーんだ?』(講談社)。2016年に『パンダともだちたいそう』『パンダなりきりたいそう』が刊行されてから、『パンダたいそう』シリーズは今年で10周年。パンダの動きがとにかくかわいくて、「ブックハウスカフェ」でも大人気です。
『パンダたいそう なーんだ?』(作:いりやまさとし/講談社)
記念すべきシリーズ10作目となる本作は、これまでの『パンダたいそう』とはひと味違うジェスチャークイズのような内容です。たくさんの“たいそう”を描いてきた作者・いりやまさとしさんですが、まだこんなに素晴らしいアイデアがあったのかと驚かされました。
読み聞かせをしながら、子どもにクイズに答えてもらったり、一緒に体操をしたり。さらに親子のコミュニケーションが生まれるように、との想いから作られた絵本なのだそうです。
「りょうて カクカク りょうあし カクカク。
パンダたいそう なーんだ?」
「りょうてを まえに ちからを ぬいて ゆーらゆら。ゆーらゆら。
パンダたいそう なーんだ?」
発売前、いりやまさんが「ブックハウスカフェ」でイベントを開催し、大勢の子どもたちの前でこの絵本の読み聞かせをしてくださったのですが、みんな大盛り上がり! クイズに正解しても楽しい、間違っても楽しい。たくさんの笑顔にあふれていました。
文字が読める子なら、今度はお子さんから親御さんにクイズを出してもいいですし、自分たちでオリジナルのジェスチャークイズを作るのもいいですね。読み終わった後も楽しみが広がり続けるところが、この絵本のお気に入りのポイント。ぜひ移動中や待ち時間にもチャレンジしていただきたいです。
最後のページに描かれた、親子パンダのイラストにもほっこり。小さなお子さんへのプレゼントに、間違いなく喜ばれる一冊だと思います。
*読み聞かせ 1さいくらいから
*ひとり読み 3さいくらいから
子どもも大人も夢中になる“迷路絵本”
次にご紹介するのは、シリーズ累計330万部超えの大ベストセラー『迷路絵本』シリーズ(PHP研究所)。作者は、歴史考証イラストレーターで、迷路絵本作家の香川元太郎さん。
見開きごとに簡単な迷路と難しい迷路の2つのルート、さらに隠し絵やクイズまで、楽しい遊びが盛りだくさん。私の子どもたちも大好きで、とにかく飽きないので、お出かけ先にもよく持っていった記憶があります。
『乗り物の迷路』『昆虫の迷路』など、多くの人気作がありますが、書店員として特におすすめしたいのが『物語の迷路 アンデルセンから宮沢賢治の世界まで』。
『物語の迷路 アンデルセンから宮沢賢治の世界まで』(作:香川元太郎/PHP研究所)
迷路の舞台は、本屋さんからスタートして、いざ物語の世界へ。『海底二万里』『不思議の国のアリス』『ガリバー旅行記』『銀河鉄道の夜』など、迷路の旅を通して国内外の名作の世界をめぐります。どの迷路にも、お宝「話のタネ」が隠されているので、途中で拾ってゴールをめざしましょう。
“遊びながら学べる絵本”として大人気の本シリーズ。この作品ならではの特徴は、迷路の正しいルートと原作のストーリーが連動しているところ。迷路を解くワクワク感と、名作の世界に浸る喜びを一度に体験できるのです。
物語を知っている子はもちろん楽しいですし、まだ読んだことのない子は「読んでみようかな」と、興味を持つきっかけになりますね。
そして、もうひとつのお楽しみが、精巧な絵の中にいくつも描かれた隠し絵。私は友人にプレゼントしたことがあるのですが、「ココにもある!」「ココにもあった!」と、見つけるたびに大興奮で、とっても喜んでもらいました。
大人も子どもも同じ熱量で夢中になれて、親子で共通の楽しみが生まれるのが、この絵本の最大の魅力。移動中や待ち時間もきっと楽しく過ごせますよ。
*読み聞かせ 3・4さいくらいから
*ひとり読み 5さいくらいから
らくがきをして自分だけの絵本を完成させよう
最後にご紹介するのは、『らくがき絵本 五味太郎50%』(ブロンズ新社)。絵本作家・五味太郎さんの『らくがき絵本』シリーズの1作目として、1990年に発売されたロングセラー絵本。世界中で翻訳され、たくさんの子どもたちに愛されている一冊です。
『らくがき絵本 五味太郎50%』(作:五味太郎/ブロンズ新社)
この作品が画期的なのは、絵本に直接らくがきができるところ。五味さんの描きかけの絵と、「かおをかきましょう」「ふくにもようをかきましょう」「ごちそうをかきましょう」などとお題が記されていて、絵を描き足したり、色を塗ったりして“自分だけの絵本”を完成させるのです。イチから絵を描くのとは、また違ったおもしろさを味わえます。
ベースとなる絵はバリエーション豊富で、五味さんからのお題もユニークでワクワクするものばかり。中には「とうめいにんげんを、かきましょう」「かきそうな絵を、かきましょう(この人たちがかきそうな絵を予想して、かきましょう)」など、子どもの創造性を刺激するお題も。
「らくがきを思いっきり自由に楽しんでほしい」「私が考えていた以上のアイデアで描いてほしい」、そんな五味さんの想いが伝わってくるようです。
全368ページとボリュームがあり、図鑑のような厚さですが、描きやすい再生紙を使っているため、さほど重さは感じません(きっとこの軽さも、デザインのひとつなのでしょう)。らくがき帳と絵本の2冊を持っていくことを考えれば、十分にお出かけのお供の選択肢になると思いますよ。
大人も一緒にらくがきができて、楽しみ方は無限大。完成した絵本は、お子さんの大切な“成長の記録”としても残るので、プレゼントにぴったりではないでしょうか。
*対象年齢 およそ2さいくらいから
取材・文/星野早百合