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犬は飼い主の好みを理解して尊重してくれるだろうか?【研究結果】

わんちゃんホンポ

他者の感情表現から好き嫌いを推測すること

私たち人間は、誰かの行動や顔に表れた感情から「ああ、この人はこの花が好きなんだな」とか「この飲み物は好きじゃないようだ」といった好き嫌いを推測します。

感情表現から好みや欲求を推測するということを学ぶ過程で、他の人の好みは自分と異なる可能性があるということも認識していきます。乳幼児の研究では、18ヵ月齢の子供はこれらのことを理解しているけれど、14ヵ月齢の子供はまだ理解できていないことが示されたそうです。

では犬はどうでしょうか?飼い主と自分の好みが違うことを理解したり、飼い主の表情から好き嫌いを推測することができるのでしょうか?

ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学の動物行動学の研究者がこのテーマで実験を行い、その結果を発表しました。

犬の好きなものと人間の好きなもの、どっちを持ってくる?

以前の研究では、2つの物があって犬にとって馴染みの深い人間がどちらか一方を嬉しそうに扱い、もう一方にあからさまな嫌悪感を示して、犬にモッテコイのキューを出したところ人間が嬉しそうに扱った方を持ってきました。ただしこの2つの物はどちらも犬にとって好きでも嫌いでもないというもので、持ってきた時には犬はトリーツの報酬を受け取りました。

今回の実験では、犬の好む物とそうでない物が使用され、報酬は無しとしました。

実験に参加したのは一般から募集された家庭犬51匹と飼い主でした。雑種を含めて小型〜大型犬まで様々な犬種が含まれています。

犬たちには最初にドーナツ型の犬用おもちゃとアクセサリーのブレスレットが見せられました。同じくらいのサイズで同じような形をした2つの物体です。

どちらが良い?と2つの物体を示すと全ての犬は犬用おもちゃの方を選びました。

次に飼い主が、犬用おもちゃに対して「これは嫌いだ」という感じを、ブレスレットに対して「大好きだ」という感じを言葉と表情とジェスチャーを使って犬に示して見せました。

こうして飼い主がそれぞれの物体に持っている感情を表示した後で、両方の物体を投げて「モッテコイ」のキューを出しました。

結果は全ての犬が自分の好きな犬用おもちゃだけを持って来ました。研究者は犬が自分の好みを捨てて飼い主の好むブレスレットを持って来ることを期待していたのですが、予想は外れてしまいました。

自分はそうでもなくても飼い主が好きなものには興味を示す?

モッテコイの実験では犬が自分の好みと飼い主の好みを区別できるのかどうかが明らかにできなかったので、研究者は別の実験を行いました。

51匹の犬を2つのグループに分けて再び犬用おもちゃとブレスレットへの好意と嫌悪感を示しました。

1つのグループの犬たちには、飼い主が犬用おもちゃに対して「好きだ」という感情を示し、ブレスレットには「嫌いだ」を表現しました。つまりこのグループの犬と飼い主の好みは一致しています。

もう1つのグループの犬たちに対しては、飼い主が犬用おもちゃに対して嫌悪感を示しブレスレットに対して好意を表しました。こちらのグループは犬と飼い主の好みが反対になっています。

飼い主の好みを犬に見せた後、犬用おもちゃとブレスレットの両方を犬が届かない位置に置いて、犬がそれぞれの物体を見ていた時間を計測しました。

犬と飼い主がどちらも犬用おもちゃが好きだと好みが一致していたグループでは、犬たちは明らかに犬用おもちゃを長く見つめていました。

犬はおもちゃが好きで飼い主はブレスレットが好きと好みが一致していなかったグループでは犬たちがおもちゃとブレスレットを見つめていた時間はほぼ同じでした。

この結果と最初のモッテコイ実験の結果とを併せて見ると、実際に手に入れられる状態では犬は自分の好みを優先しますが、2つの物体を見せた場合には飼い主が表示した好みは犬に認識されていたことが示されました。

まとめ

犬の目の前で、ある物には好意を、別の物には嫌悪感を表現して見せたところ、犬は飼い主が好きなのだと認識した物を知覚していたという実験の結果をご紹介しました。

犬が人間の好みや欲求を、1歳半の子供と同じくらいに理解しているかどうかまではこの実験では分かりませんでした。しかし、ある1つの物に対して他の人(この場合飼い主)が自分とは違う感情を持つということは犬も認識していると言えそうです。

このような動物の認知についての研究は人間の心の進化を理解するのに役立ちます。

また動物福祉に関わる法律を作る際の科学的な証拠としても重要なものです。

それにしても、飼い主が好きであることを理解していても目の前の好きなものには勝てないというのは、大切なものを壊してしまって私たちを悩ませる犬の行動を説明しているようで、ちょっと苦笑いしてしまいますね。

《参考URL》
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2020.588916/full

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