人と自然をつなぐ、葉山のパワースポットベーカリー【earth7716factory】(神奈川県・葉山町)
「リジェネラティブ・ベーカリー」シリーズvol.23
『環境再生型農業』を応援するパン作りをしているベーカリーを紹介するシリーズ。
JR逗子駅からバスと徒歩で向かった山側の住宅地に現れる、ハワイアン&ナチュラルテイストな建物。
神奈川県葉山町にある「earth7716factory(アースナナイロファクトリー)」は、太田千恵さんと杉妻幸枝さんが営むベーカリーです。
2023年3月に今の場所で実店舗を構える前は、シェア工房を借りながらイベントや出張販売でパンを販売していました。
お二人に共通しているのは「人にも地球にもやさしいものを届けたい」という思い。その想いが形になったのが現在の店舗です。
この場所を選んだのは、近くのバス通りにある偶然目にしたオレンジ色の小屋に出会ったのがきっかけ。
自分たちがオーストラリア・バイロンベイに行ったときに感じた、ナチュラルで地球や人にやさしい町のイメージと重なり、そこから持ち主の方を探して辿り着いたのが、現在のお店の隣にある建物(アトリエ)のオーナーさんでした。
オーナーさんが「君たちは自家製酵母でパンを作るのだから、もう少し山側の自然を感じる場所がいいんじゃない?」と勧めてくれて今の場所にお店を開くことになりました。
元々はアトリエのガレージで、トタン板打ちっぱなしの雰囲気も「バイロンベイにあるパーマカルチャー的な農場レストラン『The Farm』みたいじゃない?」と運命に導かれたかのように「ここしかない!」と決めました。
オーナーさんのセンスが好きだったこと、オーナーさんの後輩の大工さんが古材を使うのが得意な方で古いものを大事にする感じも自分たちの想いと通じるところがあったので、完全にお任せしました。温もりのある店舗は、唯一無二の空間に仕上がりました。
大きく焼いた食事パンが並ぶ店内
パンは国産小麦&ライ麦100%。農薬や添加物への不安をなくし、安心して食べられるものにこだわりました。
大手企業で体調管理が必要な社員さん達への栄養指導などをしていた管理栄養士の資格を持つ千恵さん。仕事を続けていくなかで「身近な人から少しずつでいいから食べることの大切さを伝えたい」とパン屋を開くことを決意。
「お代をいただくなら体のためになるものじゃないと意味がない」と考え、国産でオーガニックに強い粉を扱っているところを探していたときに、富士山溶岩窯オーブンを扱っている櫛澤電機さんから寿物産さんをご紹介いただき、アグリシステムさんの粉に出会いました。
幼少期から「平和について考えることは呼吸をするように自然なことだった」とおっしゃる幸枝さんは、国際交流や未来への平和を考える場としてピースボートに参加し、自然に寄り添える仕事としてキャンプ場でアウトドア関連の仕事をしていました。
「食から人の健康」を考える千恵さんと、「環境と平和」を考える幸枝さんが起業を考えるための場で出会い語り合ううちに『次世代の子どもたちに少しでもいい地球をバトンタッチしたい』という想いに至りました。
アグリシステムさんのホームページで『未来の子供たちにより良い地球環境を紡いでいく』というメッセージを見た時、「私たちと一緒の想いを持っている会社さんだ!」と出会うべくして出会ったと思われたそう。
「アグリシステムさんの“十勝産オーガニックライ麦”で酵母を起こすようになると、焼き上がりの香りだけでなく、ゼロから酵母を起こしていくところからの香りも自分が心地よく楽しめて、触っていて気持ちがいいんです」とおっしゃる千恵さん。
現在、自家製酵母はライ麦のルヴァン種、自然栽培の玄米麹と白米を合わせた酒種を使用。バゲットだけレーズンのストレート液種を使用。色々試してみてお客様が美味しいと言ってくれたのがこれだったのだそう。
アールグレイの茶葉から起こした酵母を使った紅茶の食パンも香りがすごく良くて人気だそうです。
7716factoryさんのパンの一部をご紹介
左:コミスブロート、右:ライ麦100
◆ライ麦100
ライ麦全粒粉100%、オーツ、フラックスシード、サンフラワーシード入り。
発酵の香りの後から爽やかなライ麦の香り。一口目からほんのりやわらかな甘みがあり、ごくわずかな酸味が最後に感じられます。しっとりむちっとした生地にぷちっコリッとした粒感が後引く美味しさ。
常温で数日置いておくと梅のような食欲を促進させる酸味も感じられてとても美味しい。
◆コミスブロート
ライ麦全粒粉84%、はるゆたか使用。スーッとする風味のキャラウェイシードが印象的。
生ハムと合わせたら肉の重さを軽く感じさせてくれるのでオススメ。
左:シナモンロール、右:プレッツェル
◆シナモンロール
みっちり厚めの生地に上質な香りのシナモンシュガーがたっぷり巻き込まれています。食べ進めるとカルダモンの風がさ~っと吹き抜けて、シナモン好きだけでなくカルダモン好きも必ずや満足できる味。
◆プレッツェル
ラウゲン液のスモーキーな香りはまるで媚薬のよう。細い部分はポリッ、太い部分はむぎゅむぎゅと引きがあります。岩塩のはっきりとした塩味とクセになる香りでエンドレスに食べ進めてしまいます。
木曜日限定!食いしん坊サンド 左:プレッツェルバンズ、右:ライ麦100
◆食いしん坊サンド
木曜日限定。千恵さんの気まぐれ&スペシャルサンド♪当日、挟むものや使うパンをInstagramストーリーズにアップされます。この日はライ麦100とプレッツェルバンズの2種類から選べたので、同行者とシェアすることに。
鶏ささみを割いて自家製マヨネーズで和えたものにサルサソースをオン、その上にかぼちゃの素揚げをのせて葉物野菜をプラス。
※ライ麦100はパンのサイズが小さいので、クリームチーズと薬味麹を混ぜたものを塗ったサンドも一緒に。
プレッツェルバンズはもっちりむぎゅむぎゅ食感、ライ麦100はしっとりむっちり。どちらも食べ応えがあって食べた直後は満腹だったのに、消化がいいのでしょう。数時間後には少食の私の胃腸がスッキリとしていて驚きました。
食べる人の体を思って作られたサンドであることが体感できました。
人気のカンパーニュは地元のホテルの朝食用に卸していて、この日も店頭から早々に無くなっていました。
アグリシステムさんとパタゴニアさんとの出会い
アグリシステムさんとパタゴニアさんに出会ったときに、自分たちと規模は違いすぎるけれど「一緒の方向を向いている人たちだ!」と感じ、『次世代の子どもたちに少しでもいい地球環境をバトンタッチしたい』という想いを軸に進むことに迷いがなくなりました。
アグリシステムさんとの出会いは前述の通りで、リジェネラティブベーカリーの勉強会に参加してからはどういう粉を使っているのかお客様にお伝えしたり、その場にいらした他のベイカーさん達の活動に興味が沸いて一緒に何かできたらいいな等々、今まで以上にアンテナを張るようになりました。
同様に、環境活動に積極的に取り組むアウトドアブランド、パタゴニアさんとご縁が繋がったことも私たちの活動に非常に影響を与えています。
実店舗を持つ前、イベント出店時にリピーターさんが増えてシェア工房では手狭になってきて、「自分たちでお店や工房を構えるか、辞めるかの2択だね」と考えていたときに、友人の友人からパタゴニアさんの社内に向けたケータリングをお願いできないかと言われました。
月に2回程度本社に行くうちに、より地球環境のことを考えるようになり、いっぱい学ばせてもらい、自分たちはこうしたいということを彼らが聞いてくれたおかげで今の私たちがあると思っています。
今でも朝のミーティング用の軽食を頼まれたり、「つぎはぎ号」という廃油で走る車の燃料に、毎週土曜日に販売しているドーナツを揚げる際に出た油を使っていただいたり、ご縁が続いています。
これからやりたいことは?
左:杉妻幸枝さん、右:太田千恵さん
実店舗がオープンして「夢に向かって頑張ろう!」というモチベーションだけで2年半を駆け抜けてきました。
体も疲れが出たり、色々見えてくることもあって、ここらで働き方改革をしないと継続していくのが大変になると思い、次のステップについて考えているところです。
パン屋はもちろん続けますが、地球環境に関わることについてもう少しなにかやっていきたいと思っています。
6年くらい続けているのは、葉山の自然を一緒に楽しみながら歩く『葉山歩き』というトレッキングと、
『トレランチ』という葉山公園をスタート&ゴールに設定し、トレイルランニングをナビゲーター付きで楽しく行うもの。
どちらのイベントも最後に私たちが作ったご飯を食べていただきます。
・おいしくてカラダの役に立つものを食べること
・気持ちよく自然の中でカラダを動かすこと
・心身ともに健康で健やかであること
フィジカルな部分とメンタルな部分の両面から健康になる、こういうイベントをもっと進化させて、葉山の街をヘルシーにしたいねと話しています。
もう一つ、お店の前のスペースで春から秋にかけて月1ペースで『earthマーケット』を開催しています。
私たちがいいなと思っているもの、人にも地球にも優しいものを扱っている方にお願いして出店してもらい、来てくださるお客様とシェアできたら嬉しいねという感じでやっています。
新たな試みとして、幼稚園などで子供向けに一緒にパン作りをしたいです。
口にするものにこだわっている保育園の園長先生から「ハード系のパンを子どもたちに食べさせたい」というご要望があって時々パンを届けてはいます。
小さいときから安心できるものを口にしてほしい、その味を知って、それらがどのように作られるのか学んでいってくれたら、未来の食や環境への影響も変わっていくと考えています。
earth marketのご案内
地元近郊で採れる蜂蜜など
小麦の粉袋の再利用で、地元の社会福祉事業所にお願いして作ってもらっているバッグやポーチなど
お二人に話を伺って
お店に伺ったとき、常連のお客様たちがすれ違いざまに「こんにちは」と笑顔で声をかけてくださったのがとても印象的でした。お客様同士が自然に会話し、お店の方とも気軽に近況を分かち合う。パンだけではなく、笑顔のコミュニティが広がっているのだと実感しました。気づけば私もずっと笑顔で取材していました。
earth7716factoryさんは、葉山の自然と人々の暮らしを結びつける「リジェネラティブ」なパン屋として、これからも地球にやさしい活動を広めていかれるでしょう。
私も、美味しいパンとお店の皆さんの笑顔に元気をもらいに、また足を運びたいと思います。
SHOP INFORMATION
【店名】earth7716factory(アースナナイロファクトリー)
【住所】神奈川県三浦郡葉山町長柄1032-3
【電話番号】046-854-7472
【営業時間】11:00~16:00(水・木・金)、8:00~16:00(土)
【定休日】日・月・火
※写真の商品の種類、価格は、2025年8月現在の情報となります。
※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗もしくはSNSなどでご確認ください。