大河のレガシー、永遠に 鎌倉に刻まれたものたち
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で2代執権北条義時が最期を迎えたのは、2022年12月18日。あの最終回から1年半、今夏は14代執権北条高時の息子・時行を描くテレビアニメ『逃げ上手の若君』が7月6日から始まる。週刊少年ジャンプに連載され、アニメ化で注目高まる”逃げ若”を前に、一昨年を彩った”鎌倉殿”のレガシーを追ってみた。
地図に入った大江殿
「放送前はここを訪れる人は月に数名。人がいるのが珍しかった」。近所の50代男性が語る場所とは、大江稲荷社(十二所)だ。鎌倉幕府の要職としてドラマに終始登場した大江広元を祀る。
同所は以前まで、鎌倉市発行の観光案内図に記されておらず、22年1月の放送開始に向け新たに加わった。「放送中は現在の5倍ほどでピークだったが、今でも週末は1日50人ほどが来ているのでは」と前出の住民。ドラマを機に刻まれた大江稲荷社は、今後も観光案内図に残っていく。
小中学生に大人気
鎌倉殿は地元の子どもたちをも惹きつけた。鎌倉歴史文化交流館(扇ガ谷)は放送終了後の23年から、弓矢やすごろくといったドラマ関連のワークショップを実施中。市内の小中学生を中心に、応募の多いものは定員の4倍にのぼるという。
同館学芸員の山本みなみさん(34)は、「泰時たちがどうなったのかとか、ドラマの先を知りたいという声が多い」と言い、放送後も時代を追った展示を行い、今秋には「北条氏150年栄華の果て〜鎌倉幕府滅亡〜」を企画する。また、講座で鎌倉時代について語る山本さんは「以前は北条氏の話をすると名前が似ていて理解されづらかったのが、今は俳優さんの顔が浮かぶのか受講者の反応や理解が早い」。放送開始時に2300フォロワーだった同館のXも、放送後に減ることなく現在4700まで増加している。
覚園寺の風向き変化
主人公・北条義時ゆかりの覚園寺(二階堂)は、ドラマによって風向きが変わった。「『義時は狡猾な逆賊』『誰?』という評価が多かったが、参拝者から好意的に質問されることが増え、義時さんの名前を堂々と言える雰囲気になった」(仲田順昌住職)
武家政権始まりの鎌倉時代を支えた北条氏。ドラマを通じた観光PRに奔走した市観光協会の大津定博専務理事(61)は、地元への効果も大きかったのではと語る。「自分の街が果たしてきた役割を見返すことができ、市民の記憶に残ったのが1番」。大河のレガシーは明日へと続く。
記者が鎌倉で気になった物事を調査する連載「その後を追ってみました」。不定期で掲載しています。