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転職すべきか残るべきか悩んでいる人へ 「後悔のないキャリア選択」で必要なことを古屋星斗さんに聞いた

りっすん

勤続年数が長くなるとキャリアの停滞感を感じ、転職するべきか悩む人は少なくありません。

「転職」か「今の会社に残る」か“後悔のないキャリア選択”をするためにはどのような考え方や行動が必要なのでしょうか?

「キャリアの作り方」を研究する古屋星斗さんに伺いました。

お話を伺った方:古屋 星斗さん

リクルートワークス研究所の主任研究員。労働市場分析、未来予測、若手育成、キャリア形成研究を専門とする。著書に『ゆるい職場-若者の不安の知られざる理由』(中央公論新社)、『会社はあなたを育ててくれない』(大和書房)などがある。

転職するべき? それとも、今の会社に残るべき?

💡POINT
•20〜30代会社員の3分の2が現状に不安・不満を感じている
•「環境を変えたくない」という選択ももちろん問題ない
•ただし「同じ職場で長く働くこと」が条件・キャリアにおいて合理的な選択ではなくなってきている
転職が当たり前の選択肢となった今、20代〜30代のキャリアに対する考え方はどのように変化していますか?

古屋星斗さん(以下、古屋):昔は「1つの会社に長く勤めたい」という考え方がスタンダードでしたが、今は半々ですね。

「なるべく同じ会社で働き続けたい人」と「転職を重ねて、今より良い条件の会社に行きたい人」に二極化しています。

実は、正社員として働く20〜30代の会社員に調査したところ、およそ3分の2が「(現状に)不安・不満を感じている」という結果が出ています。

「自分の労働条件が悪い」や、「自分の成長速度が遅い」といった現状への不安・不満が、転職の動機につながっていると考えます。

一方で、同じ環境に留まった方がいいのかな?と悩む方もいます。古屋さんは著書『会社はあなたを育ててくれない』のなかで、「勤続年数が長くなるとキャリアに関する行動や情報収集をしなくなる」とし、それを“会社への過剰適応”と表現されていますが、「環境を変えたくない」と考えることはキャリアにおいてネガティブなのでしょうか。

古屋:いえ、そんなことはありません。

同じことを繰り返した方が精神的にはラクですし、人は基本的には安定を求める(≒大きな変化を避けたい)生き物ですから。

ただ、今は会社に過剰適応することが必ずしも合理的な選択肢ではなくなりつつあるということは、頭に入れておくべきかもしれません。

というと?

古屋:10年ほど前までは、新卒で入社した会社で働き続けることが生涯賃金を最大化するという点でも、社会的地位を上げるという点でも、最も有利な選択肢でした。

しかし、現代は「転職によって賃金が上がる」という統計も多く見られるようになりましたし、中途採用の人が良いポストに昇進することも当たり前になっています。

また、会社に過剰適応することで、より好条件の仕事に就くチャンスを逃すだけでなく、大きなリスクを抱えてしまう可能性も高まると思います。

例えばどんなリスクがありますか?

古屋:社会人のスキルには「企業内特殊スキル」と「一般的スキル」の2種類があります。

「企業内特殊スキル」はその会社だけで通用するスキル、「一般的スキル」はどこの会社にも通用するスキルのことです。

「企業内特殊スキル」は会社に長くいれば習得できますが、「一般的スキル」はさまざまな場所で働いてこそ身に付くもの。

もちろん、ずっと同じ会社にいたいと考えるなら「企業内特殊スキル」で十分。

しかし、今後もさまざまなスキルを身に付けてステップアップしていきたいと考えるなら、転職して「一般的スキル」を習得することが重要だと思います。

後悔のないキャリア選択のヒント【1】転職経験者との会話で「自分」と向き合う

💡POINT
•「辞める理由」だけでなく「辞めない理由」とも向き合う
•転職経験者との会話が「理由」を深めるヒントになる
•「転職をした同期」は最適な話し相手
ここからは「転職する」か「今の会社に残る」かで迷ったときの「後悔のないキャリア選択のためのヒント」を伺いたいです。

古屋:転職する・しないにかかわらず、その選択をする「理由」を考えるのが大切です。

特に、会社を「辞める理由」を考える人は多いですが、「辞めない理由」を考える人は少ないと感じています。

なぜその会社に留まるのか明確な理由があれば、「会社に残ること」も立派な「選択」の1つだと思います。

「理由」を明確にするためにはどのようなステップを踏めると良いでしょうか。

古屋:自分1人で考えると冷静な判断がしづらいと思うので、他者のキャリア選択の話を聞きながら「自分はどう感じるか」を考えてみるといいと思います。

例えば、転職経験がある人に「前職を辞めた理由」を聞いてみて、「自分も他の環境にチャレンジしてみたいな」と思うのか、それとも「自分はまだ辞めなくていいかな」と思うのか。

あまり難しく考えず、その時「率直に感じたこと」をヒントに深めてみるのはどうでしょうか。

話を聞く相手はどのような人が望ましいでしょうか?

古屋:今の環境が良いのか悪いのかは、“比較”してみないことには分かりません。

ですから、対話する相手は年齢の近い先輩・後輩で転職した人、副業をしている現職の同僚や他社から転職してきた人など「今の環境」と「他社の環境」の両方を知っている人がいいでしょう。

特に「もともと同じ会社にいて、別の会社に転職した同期」は、年齢や環境が近いケースも多く「共感する部分」と「異なる部分」の差異が分かりやすいため良い対話相手になるはずです。

後悔のないキャリア選択のヒント【2】副業や兼業で「社外」の経験を積む

💡POINT
•転職後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐコミットメントシフトという考え方
•本業の「良いところ」を見つめ直す機会にも
•副業や兼業で見つけた「得意・苦手」はキャリア形成の軸になる
【1】を踏まえても、まだ「転職か」「継続か」は決断しづらいと思います。キャリア選択において、起こすとよい行動は他にありますか。

古屋:私は副業や兼業、プロボノ(社会貢献活動)などから始めて、今の会社から徐々に軸足を移していく「コミットメントシフト」を推奨しています。

最大のメリットは転職後の違和感やズレを軽減できること

「配属される部署の雰囲気」や「上司や部下の特徴」など実際に働いてみないと分からないことも見えてきて、転職後の「こんなはずじゃなかった」を防ぐことができます。

また、本業の「良いところ」を見つめ直す機会にもなり、人によっては「辞めない理由」を深めるきっかけになるかもしれません。

実際、若手社会人への調査では社外での活動経験がある人ほど「自社への評価が高い」「自社のことが好き」という結果が出ています。

仕事の適性や、向き・不向きも見えてきそうですね。

古屋:はい。「コミットメントシフト」は、副業や兼業を「始める」ことそのものよりも「振り返り」が大切です。

例えば、今いる会社と副業先の会社、それぞれの業務を通じて「自分が得意なこと・苦じゃないこと」を書き出してみる。

もしどちらの環境にも共通する「得意」がみつかれば、それはきっと他の環境でも通用する「一般的スキル」であり、今後のキャリア形成の軸にできるものだと思います。

反対に「苦手なこと」の共通項を見つけることも、キャリアを考えるヒントになる。

「向いてないからやっぱり辞めた」ができるのも「コミットメントシフト」の良いところですから。

なるほど。

古屋:いずれにせよ、自分の経験から見出した気づきや発見以上に信頼できるものはない、と僕は思っています。

「転職するかどうか」の判断材料を集めるくらいのつもりで、週に数時間だけでも副業や兼業にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

後悔のないキャリア選択のヒント【3】組織と対話する

💡POINT
•不安・不満があるなら組織と対話してみる
•転職するにしてもできるだけ「円満退社」を目指そう
現職には少なからず不安・不満があり転職にも前向き、でも「辞める」という大きな選択はなかなか決断しづらい……というケースもあるかと思います。そういったときはどうすればよいでしょうか。

古屋:「転職」にせよ「継続」にせよ、不安や不満があるなら「組織との対話」も試してほしいと個人的には考えます。

自分がしてみたい仕事内容や働き方を会社に率直に伝えてみたら、案外希望が通ることもあるかもしれません。

自分にとって有意義な制度や支援が見つかることもあるでしょう。

その上で「ここでは自分の願いが叶えられそうにない」「不安や不満が解消できない」と判断し退職することになったとしても、何もアクションせずに辞めてしまうよりは全然いいと思います。

ちゃんと対話ができれば、円満退社につながると思いますし。

やはり会社を辞める時は「円満退社」を心掛けた方が良いのでしょうか。

古屋:そう思います。近年は一度辞めた会社で再び働くことも珍しくありませんし、元同僚との仕事のつながりといった“関係資本”が利益をもたらすこともあります。

ですから、本業の会社と完全に縁を切るのはもったいない。

今後の良好な関係に繋げるためにも、円満に退職できるに越したことはないと思います。

この世に「ベスト」な会社は存在しない

💡POINT
•「ベスト」な会社は存在しない。転職では今よりも「ベター」な会社を見つける
•まずは誰かに話を聞いてもらうだけでもOK
やはり「後悔のないキャリア選択」をするためには、自ら能動的に思考したり、行動したりすることが重要なんですね。

古屋:そもそも転職というのは今よりも「ベター」な会社を見つけること。

この世に「ベスト」な会社というのは存在しませんから。

どこの会社に行っても良い面と悪い面がある。

それを自分や他者の経験を通してなるべく冷静に見極めることが、のちに後悔しないためにできることではないでしょうか。

1人でぐるぐる考えていると「今の会社への不安・不満」につい目が行きがちですから、まずは誰かに話を聞いてもらうだけでもいいので、何かしらアクションを起こしてみる。

その一歩が、自分に合ったキャリア形成につながるのではないかと思います。

取材・文:榎並 紀行編集:はてな編集部

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