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ACIDMANが圧巻の視覚効果とともに未発表の最新アルバム曲群を表現 詳細レポートで振り返る

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ACIDMAN 撮影=Taka"nekoze_photo"

ACIDMAN ニューアルバム配信ライブ 2021.5.21

爆発する色彩とめくるめく仮想現実の映像が、画面を閉じた今も目に焼き付いて離れない。5月21日19時に初回配信された『ACIDMAN ニューアルバム配信ライブ』。それは未だタイトルも発売日も発表されていないニューアルバムからの新曲を披露する、ロックバンドとして前代未聞の試みというだけではない。巨大な4面LEDパネルとXR映像のメディアサーバーを常備した新設スタジオ「BLACKBOX3」をフルに活用した、新時代のライブパフォーマンスの扉を開ける挑戦だ。五感を震わす光と画像、そして輝く新曲たち、すべてが至高のひとときだった。

モノトーンの暗闇と無音状態を切り裂く浦山一悟のスティック一閃、佐藤雅俊がファンキーなスラップベースを決め、大木伸夫がキレキレのカッティングで曲を加速させる。「Visitor」と題された1曲目は、ACIDMANらしいアッパーなロックンロールの骨格にファンクの衣装をまとい、フィジカルなグルーヴで駆け抜けてゆく曲だ。背後のLEDパネルと画面上のエフェクトがシンクロし、幾何学模様とサイケデリックなシンボルが発光する、驚くほどにクリアな色彩が画面を覆い、精密な演奏がぐんぐん熱を帯びてうねりだす。短い曲だが、インパクトは絶大。続いて登場するのは、重いグランジばりのギターリフに、久々に3人の掛け合いシャウトが聴ける「歪んだ光」だ。ライブで聴いたらとんでもない熱狂を巻き起こすであろう、堂々たるヘヴィロックチューン。白い閃光が縦横無尽に画面を突っ切る姿はまるで3Dのようで、乱反射に目がくらむ。ひとこと、かっこいい。

「1日も早く作ったものを聴いてもらいたいと思って、何がベストか?を考えた時に、配信ライブをもう一回やろうと思いました。このBLACKBOX3は俺たちにとって最高の空間です。画面越しではありますが、本気でやりますので、みなさん最後まで楽しんでください」

トレードマークのハット、ブラックスーツにネクタイで決めた大木がこの日の趣旨を丁寧に語る。「アルバムは八割方できていて、今日はその八割を全部やります」と宣言する。3曲目「Rebirth」は昨年9月に配信リリース済みの曲で、サウンドはある意味ACIDMANの王道路線、大木の弾く切れ味鋭いギターリフ、リズム隊の繰り出すファンクでロックでダンスなグルーヴに乗って軽やかに疾走する、ライブ映え間違いなしの1曲。続く「灰色の街」も昨年にリリースされた曲で、生のライブでも聴いているが、ここでは配信ならではのエフェクトを使い、モノクロームな映像から曲がぐんぐんエモーショナルに盛り上がってゆき、ラストは一気にカラー映像に変わるという劇的な演出がぴたりとハマった。ACIDMANの楽曲にはそれ自体にドラマがあり、照明や画像エフェクトとの相性が極めていい。最新機器を備えたBLACKBOX3のシステムならばなおさらだ。

サトマと一悟がストイックに刻むワンコードのファンキーなリフに、大木がエレクトリックピアノでメランコリックなメロディを添えるインスト曲「Link」は、その次の「ALE」へのいわば序章。“願いはきっと星に変わるんだ/夜のファンタジー”と、大木のピュアな少年性をそのまま映し出す歌詞を持つ「ALE」は、ACIDMANには珍しいほどに明るく伸びやかな開放感を感じる曲調に、自然に心が躍る。LEDパネルとXR映像の凄みを駆使し、画面いっぱいに雪のように星が降る、立体的でファンタジックな映像も素晴らしい。

「もともと音楽が先にあって、ライブの音を家でも聴きたいと思って、レコードやCDができたんだと思います。そう考えると、発売前にみんなに聴かせてもいいんじゃないか?と思うようになりました。これはチャンスだと思います」

「シンプルな昔の状態に戻ったんです」と語る、大木の言葉にバンドマンとしての責任と自信がにじむ。この日の7曲目「素晴らしき世界」は、サトマと一悟のいかしたフィンガースナップで始まり、大木が情感豊かなアコースティックギターを弾く、柔らかく優しく体を揺らすようなミディアムチューン。「この世界は素晴らしい」というテーマは大木のライフワークのようなものだが、酸いも甘いもかみ分けた大人の人生観をベースに、「ALE」と同じようにこれまで以上に純粋な希望と人間の悲しみを、この曲の歌詞の端々から感じ取れる気がする。ACIDMANは大人になった。

「コロナの中で、音楽にできることはほんの少しだけど、心の奥底に光を当てることはできると思います。感動、喜び、心を動かすことができると信じています。今日の配信ライブが、みなさんの力になればと思います」

ネタバレになるので詳細は伏せるが、ここでニューアルバムのタイトルについて、ACIDMANらしい発表のサプライズ演出があった。そしてこの日のラストに演奏されたのは、「INNOCENCE」と題した、たっぷりとラウドでドラマチックなミドルロックバラードだった。おそらくアルバムの中で重要な位置を占めるだろうこの曲を歌う前に、大木は歌詞のテーマについて語り、「INNNOCENCE=純真無垢に人間は戻って行くべき」と語り、「きれいごとを歌い続ければ、世界は少しでも美しくなるんじゃないかという祈りをこめて」と、力強い決意を語った。ステージの4面スクリーンをフルに使い、足元には大地、背景には銀河の星のまたたき、そして宇宙空間に太陽が輝く映像が、人が還ってゆくべき“INNNOCENCE”のある場所を指し示す。五感が激しく揺さぶられるXR映像の世界の中で、ACIDMANの音楽が雄大に鳴り響く。なんと荘厳なフィナーレだろう。

「今度は、今度こそは、リアルな目の前のライブで会いましょう。ACIDMANでした」

アルバムのタイトルは『INNOCENCE』。この日披露した8曲のほか、さらに2,3曲の追加録音を予定。アルバムの全貌が明かされるのはもう少し先になるが、この日の楽曲を聴く限り、前作『Λ』よりもアッパーでリズミックな楽曲が多く、楽曲の表情は開放的で明快、歌詞もさらに純粋で肯定的な印象を与えるものが多くなる、そんな予感がする。ニューアルバムの楽曲をこんなに早く披露してしまうなんて、ネタバレにならないかと危惧したが、逆だった。アルバムへの期待は俄然高まった。今回の配信ライブのアーカイヴは、5月31日23:59まで視聴可能だ(※「Streaming+」のみ、5月27日23:59まで)。ACIDMANは今、新たな創造の高みに到達しようとしている。

取材・文=宮本英夫 撮影=Taka"nekoze_photo"

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