二枚貝の減少はエイが原因の可能性 身近にいる『アカエイ』の生態と食性を紹介
潮干狩りシーズンに注意が必要なアカエイ。日本各地に広く生息し、近年増加傾向にあるこの魚は、有毒な棘を持つことで知られています。こちらの記事では、アカエイの食性や生態、さらには食害の問題について詳しく解説し、地域によっては食用として活用されている現状にも触れます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
アカエイの生態と特徴
アカエイはトビエイ目アカエイ科アカエイ属の板鰓類。本種は日本各地の浅海からやや深場の砂地に生息し、時に汽水域に出現することもあるようです。
体は著しく縦偏し背面は茶褐色、腹面は白色に黄色の縁取りがあることが特徴。沿岸のエイ類で最も普通に見られる魚です。
アカエイは定置網や釣り、底引き網など様々な漁で漁獲されることに加え、尾部に有毒の棘を備えることから、漁業関係者や釣り人からは危険視されることも。
アカエイの主食と食害の実態
近年、一部地域ではアカエイが増加傾向にあり、アカエイは肉食性であることから本種による食害が懸念されているようです。しかし、肉食性であるものの、二枚貝のみを食べる訳ではなく小型魚、甲殻類、多毛類など多くの水生生物を捕食することが知られています。
アカエイによる食害の研究・調査は各地で行われており、本種がアサリをはじめとする二枚貝を捕食することは確かであるものの、甲殻類を好んで食べるようです。むしろ、同じくトビエイ目に属するナルトビエイのほうが二枚貝を好む傾向があるとされています。ナルトビエイもアカエイ同様に増加傾向にあり、本種による食害が懸念されています。
エイ類による食害は各地で調査されているものの、実態は不明であるため今後も研究を続けていく必要があると言えるでしょう。
参考:(汽水域に設置された小型定置網内におけるアカエイの餌選択性)
参考:(水温下降期の有明海におけるアカエイの漁獲分布と食性)
参考:(斐伊川水系における水産有用二枚貝に対するアカエイの捕食特性)
アカエイを食用として活用する地域
一方、本種を食用としている地域もあります。
アカエイを専門に狙った伝統漁法「空つり縄」が有明海、豊前海で行われており、福岡県有明海沿岸では食用として流通するようです。柳川地方ではアカエイをエイガンチョと呼び、煮付けなどで食べます。
また、佐賀県鹿島市では二枚貝が不漁の中、本種を有効活用しようと漁協がアカエイの試食会を開催しました(有明海の二枚貝保護へ 食害のアカエイの料理試食会 鹿島市-NHK)。アカエイを食用として漁獲し二枚貝への食害を減らす他、漁師の新たな収入源となることが期待されています。
実際、エイ類は味がよく日本各地で食用とされている魚でもあるのです。前述の福岡県のアカエイの他、北日本ではガンギエイ目の魚(カスベ)が食用として流通。カスベは関東への入荷もあり、主に加工品で出回り食用になります。
アカエイの食害の実態は不明
有毒魚であることに加え、食害のイメージが強いことから厄介な魚として扱われることの多いアカエイ。本種による食害の実態は未だ不明であるものの、地域によっては本種を有効活用しようという取り組みがあるのでした。
(サカナト編集部)