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DEZERT 初の野外ワンマンライブに見た、一切の責任を負って自らの足で歩いてゆくバンドの“第一歩”

SPICE

DEZERT 撮影=西槇太一

DEZERT SPECIAL LIVE 2022 in 日比谷野外大音楽堂 “The Walkers”
2022.6.18 日比谷野外大音楽堂

「認めたら楽になったんです。だから、これからみんなと仲良くしたい」

数年ぶりに目にしたDEZERTのステージは、筆者の中にあった“DEZERT像”を見事なまでに打ち砕いてくれた。“音楽は暇つぶし”と公言し、シニカルな目線で世の中を歌ってきた千秋(Vo)が、“やっと人生で伝えたいことが見つかった”と告白して、音楽と向き合う覚悟を決めたと本サイトの取材で語ったのは、2018年のアルバム『TODAY』リリース時。野音を前に行った最新インタビューでも、当日無料配布されるCD「The Walker」の真意は“Never Give Up”だと明言していた。とはいえ、過去のどこか人を食った印象のあるパフォーマンスを見慣れていた筆者からすると、ここまでオーディエンスに寄り添い、ステージで己の想いを叩きつけていたとは全くの予想外。自らの弱さを認め、それでも生きていける場所が欲しいと訴える――この変わりっぷりは果たして何なのか? 終演後、その疑問を思わず口にしたとき、千秋から返ってきたのが冒頭の言葉である。

千秋(Vo)

考えてみれば“弱さを認める”ということほど、人間にとって勇気を必要とする行為はないだろう。となれば、この日、バンド史上最大キャパの会場で彼らが発したパワーと説得力の強さも当然かもしれない。曇り空の下、スモークが立ち込めるステージに4人が登場し、「DEZERT始めます」とドロップされたのは最新シングル「再教育」。石造りの地面を揺らして足元から突き上がるSORAのヘヴィなドラムビートや、悠然とステージを往くMiyako(Gt)とSacchan(Ba)が放つ激烈なプレイにオーディエンスは拳を上げ、激しく身体を折り畳む。そんな狂乱の中でもステージ後方に設置された大型LEDモニターから、そして千秋の口から発せられるのは《変わらなきゃ》《学びなさい》《進みなさい》という、あまりにも明確なメッセージ。ライブタイトルが『The Walkers』であることを鑑みても、この夜に彼らが掲げた最大のテーマが“歩き続け、進み続ける”ということであるのは疑いの余地がない。

一方、「Thirsty?」では“満たすために渇いていこう”と歌って、梅雨真っ只中の蒸し暑さからくる苦しさを高揚に変えたり、「暑い! 静かな曲をやろう」と告げた直後に「インビジブルビリーヴァ―」で頭から凄まじいシャウトをかましたりと、天邪鬼気質を活かした扇動手腕も健在。また、ダークな詞世界をメロディックかつアグレッシヴな音で表現する初期曲「Sister」では、ヘッドバンギングから拳、咲き、ジャンプとヴィジュアル系のフルコースを堪能させ、「ミスターショットガンガール」で炸裂するSacchanのバキバキのスラップベースが、沸き立つ客席を一瞬でマスゲームの様相に変える。「殺されちゃう」の前奏では、「今、DEZERTお花畑集団なんです。お前たちは今日は種なんだ。こいつは花。だからギターソロが始まったら全然咲いていいんで!」と言う千秋に応え、咲きまくる客席を前にMiyakoがギターを掲げて歯で弦を弾くトリッキーなパフォーマンスも。だが、そんな楽曲でも最終的に心に残るのは“生きる限り諦めてはいけない”というフレーズだ。どうせ殺されちゃうから、さぁ、生きろ――そんな逆説的なフレーズで真にポジティヴな心意気を訴える楽曲は、まさしく今のDEZERTに相応しい。

だから切ない美しさの際立つバラード「Stranger」でも、悲恋の物語に《戻れないのなら進むしかない》という文言を重ねるし、本降りになった雨を目にして「虹、かかるから。恵みの雨だ」と雨合羽への着替えを促してからの「Call of Rescue」では、《救いの声が 近づいている》と懸命に手を伸ばす。圧巻だったのは、その後。「強くなくても、ただ生きていける場所が欲しいよな。生きられる場所が欲しい! そんな人間はごまんといる。苦しい人、哀しい人、辛い人……俺たちだけじゃない」と客席に千秋が語りかけ、始まった「「擬死」」で彼が歌い上げたのは、ただ“苦しいのはお前だけじゃない”という一点だ。それは聴き手にとって、彼らも同じ苦しみを持ち、自分に寄り添ってくれるという安心感をもたらす一方、“だから甘えるな”という痛烈な突き放しともなり得る。事実、重厚なドラムがズシリと響くドゥームなサウンドに乗せて、《ねぇちゃんと考えて じゃなきゃもう前に進めない》と歌い替えた千秋は、「我儘を言うのは、これくらいにしよう。自分の居場所は自分で守ろう」と、あらん限りの叫びをあげて客席をヘドバンの渦へと変えてしまう。

Miyako(Gt)

「強く、真っ直ぐに、正直に、誠実に、優しく……違う。全部受け入れて、ただ進む。それしかないな。俺たちにはそれしかないから。今日できる全部を置いていくから、良かったら気づいてください。俺たちはあんたを見つけに来たんで、精一杯お互い気づき合おう。俺は音に乗せるから。俺はこの綺麗な音に乗せて歌うからさ。この時間だけちょっと幸せになる方法を一緒に考えてはくれないか?」

そんなことを口にして千秋がギターを抱えると、それまでステージを赤く染めていた照明が、一気に緑へと色を変える。それは“止まれ”から“進め”へと切り替わる合図のようでもあった。そこから雪崩れ込んだ「神経と重力」では、「そうだ、僕たちは愛されたいから生きてるんだよね!」と、千秋が従来のイメージを180度覆すような台詞を吐き、《ああ 「強くなりたい」 生きてこそなんだ》と歌い上げる。ブレイクのたびにあがるSORAの掛け声や、神経を直に撫でるような弦楽器隊のプレイにより、ピークまで高まった緊張感の中、描き出される“生きられる場所を探している弱い人間の煩悶”はあまりにもドラマティックで、これがロックバンドのライブであることを一瞬忘れそうなほどだった。一転、「秘密」では「カッパ脱げ! お前らの方が雨より強かったら全部弾く(はじく)!」「生きてる実感を少しの間、俺達と共有しよう!」と煽り立て、会場をアッパーに煽動。「デザートの楽しいマーチ」でも演説調のボーカルで自分たちの置かれた状況や心理をシニカルに笑い飛ばしながら、《生きるために 進むために 変わるために 力つけよう》と痛烈な言葉を浴びせ、《今日も生きてくれててありがとう》と締めくくって大きな拍手を受ける。あまりにも一貫したメッセージに圧倒されながらも、痛感したのがロックバンドとしての懐の広さと深さ。軽重も緩急も自在に操って、どんな曲調でも緩みのないグルーヴを実現する手腕には、成長や進化と同時に、彼らが生来持つセンスの高さを感じさせられた。

Sacchan(Ba)

「生きてるかい? 俺たちもDEZERTとして、もうかれこれ10年やってます。次やる曲は初期の頃からだいぶお世話になった曲ですが、当時は生きたくもなく死にたくもない、そんな普通の青年でした。でも、前に進むためにはどちらか選ばなきゃいけない。カッコつけてちゃいけない。なんで前に進みたいのか? それは、いろんな人に出会いたいから。俺にとって“前”しか価値がないんだよ、だから、この歌は絶望でもなく希望でもなく、もっと前に行くために自分を殺さなきゃいけない。そんな勇気の歌を、僕たちDEZERTからお前たちにぶつけます。さぁ! 遺書を書こう!」(千秋)

そうして贈られた「「遺書。」」では、ありったけのパワーをステージと客席でぶつけ合い、「まだ声出せないけど歌ってみる?」と、心の中での合唱をオーディエンスと果たす。最後は“明日を諦めますか?……僕は諦めません!”と自ら書いた歌詞に答えを出して拍手喝采。すっかり暗くなった空とは対照的に、観る者の心に確かな光を射して、「ミザリィレインボウ」を前に千秋はこう告げた。

「メンバーとDEZERTに言いたい。10年ありがとう! 今日は個人的には生きててよかった日だと思っております。でも、人生なかなか上手くいかないことも多くある。むしろ人間、生きてて楽しいことなんて、ほんの少しだけなんだよ。君たち、これから望んでなかった辛いこと、たぶんいっぱい起きると思う。そのとき、僕たちDEZERTは君たちの傍にいる!……なんてことは言わない。顔も名前も知らないのに無理だもん。じゃ、何ができるかって、物理的にではなく、あんたらの傍にいるということ。みんなが俺たちのことを忘れてしまっても、貴方たちが気づいたとき、DEZERTは必ずココにいるので。俺たちの音楽は俺たちが死んでも貴方たちの隣にいるので、信じてほしい。次の曲は絶望でも希望でもなく、ただ今日この場所が美しかった、正しかった――ただそれだけを表明する曲です。もっと傍に来れるか? ちゃんと気づいてやるから、行こう」

SORA(Dr)

渾身の演奏が生む壮大な空気感の中で、クリーンなボーカルが紡ぐ《違いを赦して 違いを愛して》というフレーズは、まさしく平和への希求から生まれたものだろう。虹は七色あるからこそ美しい。同じように、さまざまな人が、感情が、そして希望だけでなく絶望もあるからこそ、世界は美しいのだ。そして「きっと私たちなら前を見なくても大丈夫さ。ただ歩いていこう。時に止まってもいいから歩いていこう。俺たちと一緒に、這い上がっていこう」と、本編ラストの「The Walker」へ。この曲のために今日のライブがあったと言っても過言ではないナンバーは情緒とヘヴィネスが交錯し、《向こうへ》と手を伸ばす千秋の動きや《這い上がるんだ》というシャウトも併せ、単に希望の光にあふれるのではない、泥の中から這い上がるような強さと決意を感じさせた。《“誰かのせい”はもう終わりにしよう》《きっと綺麗な未来だけじゃないけど 僕は諦めないと決めた》――そう歌われた文言こそ、この日、DEZERTというバンドが最も表明したかった覚悟であったに違いない。

アンコールでは10年やってきて初めてだという客席との記念写真撮影を敢行したり、「True Man」ではオーディエンスに携帯のライトを振らせて、一面の光が揺れる光景に「ありがとうございます、最高のプレゼントです!」と素直な感謝も。千秋の言葉遣いやイントネーションがだんだん関西弁交じりになってくるのも、テンションが上がっている証拠だろう。さらに、オーディエンスに撮影許可を出した「包丁の正しい使い方~終息編~」では、「(SNSで)ハッシュタグ絶対つけてね!」と拡散を要望し、「この曲、本来モッシュするんやけど、今できんやん。代わりに回ってみて!」と、客席を撹拌。とことんファンを楽しませたあげく、最後は「お前の限界の挑戦に付き合う!」とキラーチューン「「殺意」」でダメ押しして、記念すべきDEZERT初の野外ライブは幕を閉じた。

「俺ら、これからまた歩き出すんで、お前らもお前らの人生、明日から歩いてください。お前らのこと気づいてるんで、それを忘れないで。忘れてもいいけど、思い出したら絶対ココにいるから。じゃあね」(千秋)

弱さを認めた者にしか歌えない歌があり、作れない音楽がある。そして、それはリスナーが歩みを進めるための、何よりも強い力を与えるはずだ。どんな苦難が待ち受けていようとも、一切の責任を負って自らの足で歩いてゆく――そう心に決めた彼らの、真の意味での“第一歩”が、今、踏み出された。

取材・文=清水素子 撮影=西槇太一

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