フジファブリックの休止前関西ラストライブ、岸谷香らの共演などドラマが詰まった『RADIO CRAZY 2024』全組レポート【2日目・L-STAGE】
『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024』2024.12.28(SAT)インテックス大阪
大阪のラジオ局・FM802が主催する関西最大級のロックフェス『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024』(以下、『レディクレ』)が、12月27日(金)〜29日(日)の3日間にわたり、大阪・インテックス大阪にて開催された。今年は開局35周年だけでなく、『レディクレ』も15周年の節目となり、「ロック大忘年会」の名にふさわしいお祭りに。
SPICEもお祝いすべく、前代未聞の全組レポートを実施! ここでは12月28日(金)L-STAGEのbokula.、ハルカミライ、flumpool、BLUE ENCOUNT、ウルフルズ、CRAZYMAN CLUB BAND、04 Limited Sazabys、フジファブリックのライブレポートをお届けする。終演後のDJ大抜卓人&加藤真樹子による振り返りも併せてチェック(こちら)。
【L-STAGE】
■bokula.
2日目、L-STAGEの先鋒は広島発の4人組。えい(Vo.Gt)は登場から「おはよー!」と元気いっぱいで、「涙ばっかのヒロインさん」から「青くね」へとテンポアップさせ、アッパーな2曲で朝いちの会場を覚醒させるが、「熱い曲やります!」(えい)と人気の「夏の迷惑」で追い打ち。
ファンが弾んでコールでも上昇すれば、思わず「よくできました!」(えい)のはなまるだ。また「バイマイフレンド」ではファンも<全部 全部 愛してる>と歌い、モニターに映るえいの表情も輝いて、せつない青春を描くメジャーデビュー曲「最愛のゆくえ.」では若い世代のハートをわしづかみ。
MCでも「売れるとか売れないとか関係なしに、これからも音楽やれたらいいなと思います!」と思いをぶつけ、「愛すべきミュージック」で音楽愛を爆発させれば、リスナーの拳が上がり、クラップは大きくなる一方。
そしてラストスパートが「愛してやまない一生を.」から始まると、再び観客の合唱が轟き、かじ(Gt)とさとぴー(Ba)のパフォーマンスも一層エネルギッシュに。加えて「群青謳歌」でも<ほら大丈夫>と背中を押して行き着く「満月じゃん。」で猛ダッシュ。潔いエンディングでもその存在感を印象付けるようだった。
取材・文=服田昌子 撮影=ハヤシマコ
■ハルカミライ
「サンキュー、『レディクレ』! はっちゃけようぜ!」。橋本学(Vo)のこんな言葉で開幕した12時過ぎのL-STAGE、ハルカミライのショータイム。
もはや馴染みの切り込み隊長「君にしか」から「朝の挨拶」こと「ファイト!!」を挟み込み、「カントリーロード」へ。「2年ぶりの『レディクレ』、飯食う前にひと暴れしませんか」「FM802の35周年、盛大に祝いにきました!」の言葉通り、2度目の「ファイト!!」や「フルアイビール」を連打しながらド派手に会場を染め上げていく。
そんな4人の剛胆さに裏に隠れたテクニカルな一面を読み取ることができたのが、小松謙太(Dr)の4撃から静寂の中に大熱唱が響き渡った「PEAK'D YELLOW」を終え、プレイされた「世界を終わらせて」の直前。「G(コード)頂戴」と要求した橋本に対し、関大地(Gt)がギターを鳴らす。キーを確認した橋本がアカペラで歌い始めたこの数秒のやり取りは、非常に即興的であると同時に、スタジオセッションを垣間見ている感覚も抱かせた。
積み重なるコーラスワークで高まったテンションを集約し弾き語る橋本へ白い光が注ぎ、さながら天使の羽のように見えた「つばさ」から、置き土産に「エース」「To Bring BACK MEMORIES」を届けてゴールテープをカット。
入場制限がかかるほどの超満員っぷりだったが、会場外のモニター前も大盛況だったそう。彼らの音楽が鳴る場所は、どこであっても世界のど真ん中であり、舞台であり、フロアである。そんなことを改めて確信させるL-STAGEの2番手だった。
取材・文=横堀つばさ 撮影=ハヤシマコ
■flumpool
2024年は約3年ぶりの全国ツアー『This is flumpool !!!! 〜15の夜に逢いましょう〜』でデビュー15周年を祝った4人が、3年連続で『レディクレ』に。1曲目は同ツアーでのライブ映像が前日に公開されたばかりの「君に届け」で、あいさつ代わりといったところ。
イントロだけでざわつくタイムレスな代表曲は、山村隆太(Vo) が「『レディクレ』が好きだー!」のアドリブも入れて甘酸っぱさを全開にし、続く「two of us」ではカメラ目線で指差し<「愛してるんだよ」>と歌うその姿でもファンをロックオンする。
しかしMCとなれば、阪井一生(Gt)が関西人の魂と15年のキャリアを見せ付ける安定の爆笑トークを繰り広げて「ごっついバラードやるから(笑)」と、言い回しと音楽の落差を最大にして「証」へ。予告どおりに胸をきつく締めつければ、拍手がじわじわと湧き、「どんな未来にも愛はある」でのスケール感もひとしおだが、「夜は眠れるかい?」の鋭利なロックでダークサイドもあらわにし、迎える大詰めは「星に願いを」。センチメンタルなメロディであふれさせる思いは身も心も揺さぶり、大歓声に山村と尼川元気(Ba)がガッツポーズで応え、最高潮で幕は下された。
3月5日(水)にはニューアルバムを発表する彼ら。今日の熱狂はまだまだ続きそうだ。
取材・文=服田昌子 撮影=ハヤシマコ
■BLUE ENCOUNT
「あれ? flumpoolのときみたいな歓声が足りていない」と嘆いて、笑いを起こす田邊駿一(Vo.Gt)。「昨日の夜にflumpoolの山村(隆太)さんとLINEをしていて、「同じステージで並びだね、俺ら。ブルエンにバトンを繋げるようにがんばるから」って。でも一個だけ言わせてくれよ。山村さんと俺の顔面偏差値が違いすぎるんだよ。カメラさん、俺を映さないでくれ!」と自虐をまじえつつ、「バトンを繋げられるかどうか分からないですけど、俺らは暑苦しいロックしか出せない」と自分たちらしい音を届けたいと告げる。
その言葉通り、「MEMENTO」では江口雄也の鋭角なギターサウンド、辻村勇太の強烈なスラップベースが観客を突き刺し、「chang[e]」では高村佳秀の激しいドラミングが繰り広げられ、「THANKS」では「どのバンドの真似もできないけど、俺たちは、俺たちのやり方で音楽を届けにきました」と語った田邊が<その自分を誇れるのは 君が待っているから>という歌詞の一節を<『レディクレ』が待っているから>とアレンジ。暑苦しさ、熱気、温かさが込められた演奏の数々となった。
「DAY×DAY」でも<どんな奴にバカにされても 僕が信じたのはあなただけ>を<僕が信じたのは『レディクレ』だけ>と歌うなど、全編にわたって気持ちを乗せ続けたブルエン。「(年末の)お祭りムードは一瞬で終わるじゃん? またすぐいつもの日々がきて、「またか」と思うときが連続する。でもそのとき、この言葉を思い出してほしい。俺たちはそんなバンドです」と、ラストに演奏したのは「だいじょうぶ」。終演後、ブルエンが奏でたメッセージを受け取った観客が「最後に「だいじょうぶ」はあかん……」と感極まる姿があった。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=ハヤシマコ
■ウルフルズ
大阪独自のフェスで、「大阪のウルフルズ」を見て一緒に歌う特別感はなにものにも変えられない。そんな興奮を残すステージだった。
「楽しんでください、よろしく!」 というトータス松本の笑顔でライブはスタート。今年あったこと浄化させる「笑えれば」に始まり、大阪人の骨の髄まで染み込んだ心の歌「大阪ストラット」へ。するとトータスが曲中に「ちなみに今日誕生日です! 58歳になりました!」と放つと会場は大歓声で祝福。
そんなムードの中ギターのカッティングが聞こえただけで演奏される喜びに会場が揺れた「ガッツだぜ!!」ではかつて聴いたことない大音量の大合唱、トータスの声も聴き取れなくなりそうなほどみんなが歌っている。これぞ参加型『レディクレ』……! との感動もそこそこに、そこからは「借金大王」「バンザイ〜好きでよかった〜」「暴れだす」とヒットソング目白押し、歌え叫べの大騒ぎだ。
MC中トータスが語った「この1年にあったいろんなモヤモヤを全部ここに置いていってください」という言葉を体現する、みんなでアホになって年忘れできるセットリスト。そしてラストには大阪で「ええねん」が歌われ、その言葉を日常的に使う人たちが「ええねん!」と叫ぶ光景に目が眩む。「新年、楽しいことあるし大丈夫やで」とウルフルズが言っている気がした。……知らんけど!
取材・文=桃井麻依子 撮影=ハヤシマコ
■CRAZYMAN CLUB BAND
キーボード・奥野真哉(SOUL FLOWER UNION)、ギター・佐藤タイジ(THEATRE BROOK)、ドラム・クハラカズユキ(The Birthday)、ベース・隅倉弘至(初恋の嵐)、ギター・KOHKI(BRAHMAN/OAU)で構成されたスペシャルバンド、CRAZYMAN CLUB BANDが『レディクレ』15周年を記念し、5年ぶりに復活を遂げた。
『レディクレ』各開催日のオープニングで流れるテーマソング「CRAZYMAN CLUB BANDのテーマ」を、ゲストギタリストの宮藤官九郎をまじえて演奏した後、GLIM SPANKYを迎えて「怒りをくれよ」と、そして2023年11月にこの世を去ったチバユウスケが所属したROSSOの楽曲「シャロン」を演奏。GLIM SPANKYの松尾レミの歌い回しは、チバを思わせるもの。“ガレ感”のある声質、そして舌の巻き方、睨みつけるような表情。まさにチバの精神性が憑依したようだった。
次のゲストボーカルをつとめたBialystocksの甫木元 空は、マイクのコードを片手に持って、膝を折り曲げてリズムをとる歌唱スタイルで、荒井由実のカバー「翳りゆく部屋」と自らのバンドの曲「ごはん」を歌い上げた。特に「ごはん」では甫木元の情感たっぷりのボーカル、奥野の鍵盤の音色が、曲の背景にある素朴な光景を浮かび上がらせた。
3番手のゲストボーカルはスガ シカオ。「19才」でドライビングな演奏と弾むような歌声を披露した後、誰もが一度は耳にしたことがある「Progress」のイントロが流れるとドッ沸きあがる。<“あと一歩だけ、前に 進もう”>の歌詞に合わせて、フロアには観客が人差し指を突き上げる光景が広がった。
SCANDALのHARUNAは、自らのバンドの曲「Sisters」でマイクを握った。手を振りながらとびっきりの笑顔を浮かべ、気持ち良さそうに歌唱した。そんな彼女の呼び込みでステージに登場したのが、岸谷香。
ここでプリンセス プリンセスの名曲「M」のイントロが流れると、どよめきが起きた。岸谷が歌う冒頭のフレーズ<いつも一緒にいたかった>を耳にして、会場中の観客が鳥肌を立たせたはずだ。さらに、岸谷香&HARUNA with宮藤官九郎による「DIAMONDS」が演奏されると、ボルテージは最高潮。もちろんサビは大合唱とコールアンドレスポンスの嵐。
CRAZYMAN CLUB BANDが届けた夢の時間はあっという間に過ぎ、最後はウルフルズのトータス松本、Kroiの内田怜央もやって来て、RCサクセションの「ドカドカうるさいR&Rバンド」をパフォーマンス。途中、トータスが佐藤タイジを指差しながら「タイジ、タイジ、ギターを弾けタイジ!」と忌野清志郎をオマージュしたマイクパフォーマンスもおこなうなどし、ドカドカうるさい最高のショーの幕を下ろした。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=ハヤシマコ、河西沙織
■04 Limited Sazabys
サウンドチェックから本番さながらに会場を盛り上げていた彼ら。「『RADIO CRAZY』イケる??」とGEN(Ba.Vo)が軽く観客を煽ると、「Feel」へ。HIROKAZ(Gt)、RYU-TA(Gt.Cho)のギターのイントロだけで気分が高まった感度良好な観客が一斉に拳を突き上げていく。GENのハイトーンボイスは感情を開放しつつも、哀愁を感じるグッドメロディに胸が締めつけられる。もちろん、締めつけた心はそのまま最後まで掴んで離さないのが彼らのスタイル。「楽しいをキャッチして帰って!」と、「Kitchen」の軽快なKOUHEI(Dr.Cho)のビート、「My HERO」のドカドカうるさいバンドサウンドが心をスカっと晴れやかにしてくれる。
生粋のライブバンドとして、2024年も相変わらずライブの本数が多かったものの、作品のリリースはなかった彼ら。新作を掲げてFM802の番組に出演する機会がなかったものの、年末の締めくくりである『RADIO CRAZY』に出演できたことを喜びつつ、2025年は1月には待望の音源をリリースすると、新曲「magnet」をいち早く披露。噛みしめるように聴き入る観客の表情を見渡し、メンバーもご機嫌な表情に。
その後も興奮は留まることを知らず、「Jupiter」「fiction」とキラーチューン祭りに。最後は「2025年は挑戦の年にしたい。安定を求めず自分を蔑まず、人生1回、やりたいことを積極的にしていこう! 手つかずの未来へ、光が指しますように」と、オーディエンスにエールを送り、豪快なステージで駆け抜けた。
取材・文=黒田奈保子 撮影=ハヤシマコ
■フジファブリック
2025年2月6日のライブを最後に活動休止に入ってしまうフジファブリック。関西ではラストライブとなる今回だが、1曲目「徒然モノクローム」から明るいエネルギーしか感じない。<あきらめるのはまだ早い>という歌詞が際立って響いてくる。「楽園」「KARAKURI」には独特のミステリアスさも感じるし、フジならではのリズムとビートをメンバー3人になってからも魅せつけてきたのだなと改めて驚嘆してしまった。大トリということもあり、遅い時間まで多くの観客が残ってくれたことへの感謝も伝えて、「LIFE」「電光石火」へと続いていく。
活動休止ということよりもメジャーデビュー20周年ということに焦点を当てて、ポップでキャッチ―でハッピーなムードを醸し出してくれる。その軽快なサウンドに自然と身体共に踊ってしまう。極めつけは祭囃子ビートに胸騒ぎしかない「Feverman」。観客みんながまるで盆踊りみたいに心から楽しんでいる。ラストナンバーの前に、山内総一郎がFM802と『レディクレ』との深い縁を、自分たちが特集されたフリーペーパー『802noOTO』をまじえながら振り返っていく。ついつい思わずしみじみしてしまうし、そんな中でラストナンバーは何を歌ってくれるのかと期待してしまう。
山内は「これが『レディクレ』最後とか嫌で、みなさんと逢いたいと思っているので、最後の曲を何を歌おうかなと。2月で活動休止を発表しているのに、どうかと思いましたが、また笑顔で逢いたいですし、フジファブリックがなくなるわけではないので、最後にこれを演奏したいと思いました」と「破顔」へ。破顔という本来の意味は活動休止の現在とは合わないはずなのだが、そんなときだからこそ「破顔」を歌ってくれて嬉しかった。そして、まさかのアンコールでは「手紙」を歌う。決してさよならではなくて、これからもフジファブリックの旅路が続いていきそうな歌がとても悦ばしかった。
取材・文=鈴木淳史 撮影=ハヤシマコ
■2日目の別ステージレポートは以下よりチェック!
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