戦争を伝えてきた新聞・ジャーナリズムの役割を考える企画展「戦後80年 戦争を伝える」が12月21日まで、横浜『ニュースパーク(日本新聞博物館)』で開催中
戦後80年を経て、これまで新聞やジャーナリズムはどのように戦争を伝えてきたのか、その役割を考える企画展「戦後80年 戦争を伝える」が2025年12月21日(日)まで、神奈川県横浜市の『ニュースパーク(日本新聞博物館)』で開催されている。
戦中・戦後に新聞・ジャーナリズムが果たしてきた役割とは
第二次世界大戦の終戦から80年が経ち、戦争体験を直接聞く機会が極めて少なくなった状況下で、新聞では記憶と記録の継承に力を入れた連載や企画が多くみられた。しかし、戦時下の新聞は、真実を伝える使命を果たすことができず、戦意高揚の一端を担ったことも少なくない。
企画担当者は「戦意高揚の一端を担った戦時下の新聞を所蔵資料で紹介するとともに、体験者らの証言を通じて戦争の実相に迫り、公的記録に残っていない事実を明らかにしてきた新聞各社の戦後の連載・企画も展示しています。ベトナム戦争、ロシアのウクライナ侵攻など、世界各地の戦争・紛争を日本の新聞がどう報じてきたかも取り上げています。現代はSNSや生成AIが情報戦の武器として使われ、偽情報・誤情報があたかも真実であるかのように出回っています。本展を通じて、戦争を伝える新聞の役割を考える機会にします」と見どころを語る。
世界の戦争に対する報道からSNS時代の役割までを問う
全4章に分けて戦中・戦後の新聞やジャーナリズムの役割が紹介される本展。1章「戦後80年、次世代への継承と課題」では、新聞各社の戦後80年の紙面が紹介。また2章「戦中、戦後の報道にみる新聞の役割」では、戦時下において繰り広げられていた情報戦・宣伝戦をはじめ、戦争の実相に迫るものや、戦中の報道責任を検証した試みなど、戦後の各社の報道が紹介される。
3章「世界の戦争・紛争はどう報じられたか」では、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争における報道の特徴や課題を取り上げるとともに、ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘を日本の新聞がどう伝えてきたかが紹介される。4章「SNS時代の戦争報道」では、衛星データやSNS画像や動画などの分析によって真相を明らかにしようとするオシント(OSINT=オープンソースインテリジェンス)の取り組み、可能性も取り上げる。SNSによる偽情報や誤情報が大量に出回る現代において、戦争における情報を見極めることの大切さを考えさせられる。
開催概要
企画展「戦後80年 戦争を伝える」
開催期間:2025年9月6日(土)~12月21日(日)
開催時間:10:00~17:00(入館は30分前まで)
休館日:月(祝の場合は翌休)
会場:ニュースパーク(日本新聞博物館)2階企画展示室(神奈川県横浜市中区日本大通11 横浜情報文化センター)
アクセス:横浜高速鉄道みなとみらい線日本大通り駅直結、JR・地下鉄関内駅から徒歩10分
入場料:一般400円、大学生300円、高校生200円、中学生以下無料
【問い合わせ先】
ニュースパーク☏045-661-2040
公式HP https://newspark.jp/exhibition/
取材・文=前田真紀 画像提供=ニュースパーク
前田真紀
ライター
『散歩の達人』『JR時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。