野食を楽しむための基礎知識とは?野草・山菜との付き合い方を紹介【野草・山菜・きのこ図鑑】
野食を楽しむための基礎知識《3》野草・山菜との付き合い方
野草・山菜の魅力を知ると、採集と賞味を止められなくなるだろう。だが、時には失敗もあるし、大変な思いをすることもあるにちがいない。ここでは、筆者の経験から言える失敗回避策をまとめておきたい。
含まれる栄養素と有害成分
筆者の知人に野草を毎日のように食べている方がいるのだが、まさに健康そのものといった感じで、健康診断でも常人ではありえない良好な数字を叩き出しているらしい。実際のところ野草には食物繊維やビタミンをはじめさまざまな栄養素が含まれており、体によい食品であることは間違いないだろう。
一方で、野草は野菜のように食品として改良されたものではないので、人体に有害なものを含んでいる可能性がある。というよりも、基本的に野草には体に悪い成分が含まれているので、調理によってそれを除去したり変質させてからでないと安全に食べることはできない、と考えるべきだ(本書においては、ごく一部の生食しても美味しい野草はその旨も記載しているが、生での食べ過ぎは避けてほしい)。
有名な山菜であるワラビやフキは、生の状態ではかなり強い毒を含み、長期間摂取するとがんや肝障害などの重篤な症状を引き起こすことが知られている。それでもしっかりと下処理すれば、確実に安全なレベルまで毒を抜くことができるため、これらの野草は長らく食材として親しまれてきた。大切なのはむやみに毒を恐れることではなく、その野草がどのような下処理で安全に美味しく食べられるようになるかを知ることなのだ。
先人たちの経験を生かす
ところで筆者は「野食ハンター」なる珍奇な職業を名乗り活動しているのだが、その活動の趣旨は「食べられないとされているものを美味しく食べる方法を見つける」ことと捉えている。野草の場合、まずその草にどのような有害成分が含まれているかを調べ、見当がつけばその成分を除去するための処置を考え、実行して試食してみる。
そういうことをしていれば当然、しばしば毒抜きに失敗し、口中を激痛に襲われてよだれを垂れ流してのたうち回ったり(マムシグサ)、一日中トイレから出られなくなったり(ヤブカンゾウ)といった惨事に見舞われてしまう。そのたびに筆者は、あまたの野草にトライし、その食毒をあからさまにしてきた勇敢な先人たちに思いを馳せてしまうのだ。
本書に載せている野草はいずれも、そういった彼らの尊い犠牲のうえにその調理法が確立され、安全に食べられてきたものばかりである。安心して採取し、食べてみてほしい。
ただし一部の掲載種については、食べるためにテクニカルな毒抜きが必要であったり、また体質によっては軽度な消化器異常が発生してしまう可能性がある。そのようなものについては「!」マークを付与しその旨を記載しているので、不安があれば試食は控えてほしい。
【出典】『野草・山菜・きのこ図鑑』著:茸本 朗