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謎の古代遺跡?岡山を代表する巨石信仰の山「番田の立石」の実像に迫る!(玉野市)

岡山観光WEB

玉野市周辺には「王子が岳」など多くの巨石スポットがあります。そのなかのひとつ、玉野市番田にある巨石群は、そのすばらしさの割には一般の観光客にあまり知られていません。今回は謎に包まれた「番田の立石(ばんだのたていし)」の実像に迫りたいと思います。

番田の立石とは

児島半島の東部に位置する「立石山」の山頂に、古代から信仰の場だったとされる謎の巨石群があります。地名から「番田の立石」、その形状から「鉾立岩」などと呼ばれています。

まずは近くからご覧いただきましょう、これが「番田の立石」です。高さは10メートルほどあり、写真から受ける印象以上に実物は巨大です。サイズ感が伝わるような写真があればよかったのですが、今回はひとりで訪れ、荷物を軽くするため三脚も持ち合わせていなかったので人物を入れた写真を撮れなかったのは失敗でした…。

本当に大きくて、不思議な形状をした岩です。こちらの面は磨かれたように平らで、太陽の光を受けると白く輝きます。そして驚くほどまっすぐに直立していて、とても自然にできたものとは思えません。


祭壇のようなものが設けられていて、かつては祠もあったそうです。いろいろ調べてみましたが、古来より祭祀が行なわれていた「磐座」であろう、ということ以外に詳しいことはわからないようです。

Column

磐座とは

「磐座(いわくら)」とは日本の原始的な祭祀形態のひとつで、降臨した神がそこに宿ると考えられた岩のことです。神社のような神殿が発達する以前の非常に古い祭祀形態で、現在でも神社の境内や背後の山にある“しめ縄の張られた岩”は磐座信仰の名残です。

古代の技術でも、水運を利用したり、コロ、テコ、滑車などの道具を駆使すれば巨石を運んだり積んだりすることは可能です。しかし、この場所は周囲から屹立した狭い山の頂上なので、大きな岩を移動させることはもちろん、起立させる作業ですら困難ではないかと感じます。だとすれば、やはり自然にできたものなのでしょうか…。

「番田の立石」からは瀬戸内海の絶景が望めます。左手に小さく見えているのは犬島で、その後方に広がる山並みは小豆島です。フェリーや貨物船などが頻繁に通過していくのが間近に見え、瀬戸内海を往き来する船からも「立石」を容易に視認できることが想像できます。

写真のほぼ中央にある陸地と砂州でつながった小さな島は「鉾島(ほこしま)」と呼ばれます。神功皇后が鉾を突き立てたという伝説の残る地ですが、「番田の立石」はまさに鉾のような形状をしているので、何か関係がありそうです。

また、玉野市の市街地にある「玉比咩神社(たまひめじんじゃ)」には同名の「立石」と呼ばれる巨大な磐座があり、かつては海岸に面していたと言われています。県内では寄島町の「三ツ山」の例などもあるので、航海の目印になる岩は信仰の対象とされる傾向があるのかもしれません。

八丈岩山方面の現況

背後には、ここより標高の高い「八丈岩山」(玉野市)が続いているので、少し登って「番田の立石」の全体像を見てみましょう。

「八丈岩山」へと続く登山道には花崗岩の砂利のようなものが堆積していて、いわゆる「ザレ場」になっています。これがメチャクチャ滑りやすくて危険で、この時の私は慎重に移動しても二度ほど転倒しました…。

「八丈岩山」の中腹あたりから見下ろした「番田の立石」です。もう絶景としか言いようがありません。転倒の苦労も報われます(笑)。今回の道中では他の登山者とはひとりも出会うことがなく、これだけの景色を独り占めできました。

もう少し登って「八丈岩山」の頂上付近まで来てみました。「八丈岩山」から先にも登山道は続いているので、本来は「三頂山」や「貝殻山」(ともに岡山市南区)にもつながっています。しかし、2025年3月に発生した大規模な山林火災によって登山道の一部が損傷しており、現在は岡山市南区方面からの立ち入りは規制されていますので、くれぐれもお気をつけください。

「八丈岩山」付近から見た「三頂山」です。山火事の爪痕が生々しく、まるで城が焼け落ちたかのような凄惨な光景となっています。こちらも磐座信仰のある山ですが、頂上の岩と祠は奇跡的に無事なようです。

登山方法について

現在、岡山市南区方面から「番田の立石」へ行くことはできないので、玉野市方面からアクセスする方法をご案内しておきます。少し難易度の高い行程になりますので、ある程度は登山の経験があり、余裕を持った計画を立て、登山に適した装備で登るという前提でお話します。危険ですので、遊歩道を散策するような気持ちでは行かないでください。

「番田の立石」の南側の山麓に「新池」(グーグルマップでは摺針池と表示される)という溜池があり、その北東あたりに位置する農道を山裾へ向かって進むとイノシシ対策の防護柵が見えてきます。柵に沿って歩くと開閉できる扉がありますので、これを開けて中へ入り扉をもと通りに閉めます。そこから先は樹木に付けられた赤や黄色の目印を頼りに雑木林の山道を進みます。

地面には道らしい痕跡がほとんどないので、樹木の目印だけが頼りです。これを見失うと進むべき方向がまったくわからなくなります。さらに、直接「立石」へ向かうルートと大きく迂回するルートの2通りあるので、その目印がどちらを指し示しているのかを見極めることが必要となります。ある意味、今回の行程のなかで難易度が最も高いのはこの雑木林のセクションかもしれません。

正しいルートを見つけて無事に林を抜けると、このように石で補強されたつづら折りの坂道にたどり着きます。見た目はキツそうに見えますが、歩きにくいながらも勾配はそれほどでもなく、このあとは一本道なので迷う心配もありません。

つづら折りのセクションが終わると、最後の難関として先述したものと同様の「ザレ場」が待ち受けています。とにかく滑りやすいので、場所によっては地面に手をついて登るくらいの慎重さが必要となります。距離はそれほどないので、ここまで来たらゴールはもうすぐです。

まとめ

今回ご案内した行程は、かつて祭祀を行なっていた人々がたどっていたのと同じ道のはずです。やはり、磐座のような信仰の場は容易にたどり着けないところにあるのだと、あらためて実感しました。

登山道の状況は季節や訪れるタイミングによって変化する可能性がありますので、今回の情報が絶対ではないことをお断りしておきます。意を決して登れば想像を超える絶景が待ち受けていますが、無理をせず途中で引き返す勇気も必要です。麓から眺めるだけでも一見の価値がありますので、ぜひ一度現地へ足を運んでみてください。

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