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海で手に入れた生き物を<液浸標本>にしてみよう! 身近なものを使って手軽に標本に

サカナト

標本(提供:PhotoAC)

海に行くと魚や生物の死体が流れ着いていたり、釣れた魚がそのまま死んでしまったりすることも少なくありません。

鮮度が良ければそれらの魚を食べるというのも一つで手かもしれませんが、「液浸標本にしてみる」というのも一つの手です。

「標本」と聞くと小難しいイメージがあるかもしれませんが、意外にも身近にあるもので簡単に作ることができます。

液浸標本に必要な材料は?

まず、液浸標本を作るために、液浸標本にしたい生物、ヒレ立て用の針(まち針など)、発泡スチロールもしくは厚めの段ボール、アルコール消毒液、容器、タグもしくはその代用品、そして鉛筆と消えないボールペンを用意しましょう。

標本となる魚・生物は釣りで採集するほか、スーパーで魚を購入して作ることもできます。

また、漁港や砂浜に行くと魚などの生物の死体が浮いて居たり打ち上がっていることがよくありますが、この場合、腐敗が進んでいるものや損傷が激しいものは避けましょう。

液浸標本づくりの進め方

標本にするものが手に入ったら、準備に移ります。

まずヌメリや汚れが付いている生物は体をよく洗いましょう。ウロコが剝がれやすいデリケートなものは清潔な水、もしくは海水で少しすすぐ程度で問題ありません。

汚れが取り除けたら、発泡スチロールや段ボールに横向きで乗せて、胸びれ以外のすべてのひれを広げてまち針で刺して固定し、アルコールの消毒液スプレーを吹きかけて20分ほど待ちます。すると、ひれが広がったまま固定されます。

紛失したり、怪我をするリスクを避けるため、慣れるまではなるべくまち針のような目立つ形をした物を使用する事をおすすめします。またあまりにも小さいものや魚類ではない生物にはこの工程は必要ありません。

ヒレを広げた魚(提供:俊甫犬)

標本を入れる容器として、ジャムなど調味料の空き瓶や100均で売っている小瓶などが活用できます。しかし、落として割れるリスクを考慮すればプラスチック製の物が理想的です。

容器はそれぞれの生物に合った大きさのものを選びましょう。アルコールは揮発性が高いので、密閉できるものをおすすめします。

薬の空き瓶。1センチ以下の大きさのものを入れるのに良い(提供:俊甫犬)

固定液は消毒用アルコールを使用します。アルコールは、エタノールとイソプロピルアルコールの2種類がありますが、経験上エタノールのほうが綺麗に作れました。

体が丈夫な生物は先に容器に入れてアルコールで浸すほうが良いですが、体が脆くデリケートなものはアルコールを先に容器に入れて後から入れるほうが良いです。

基本はアルコール80%海水もしくは真水20%の割合で固定します。

これは筆者なりのやりかたですが、クラゲなどのゼラチン質のものを標本にする場合は60%アルコール・40%真水にしています。浸透圧によって水分が抜けてしまうのを極力抑えるためです。

最初はクラゲがアルコールで固定出来るのかわかりませんでしたが、ヨウラククラゲの保護葉を入れてみたところ、問題なく固定出来ました。

クラゲの標本(提供:俊甫犬)

また、アルコール類は引火性が強く、危険物でもあります。アルコール液・液浸標本を保管する際は周囲に火種になる物を置かず、なるべく日が当たらない涼しい場所で保管・作業を行いましょう。

標本を作成している際にこぼれてしまったら、素早くハンカチなどの布で拭き、水道で洗い流せば安全に処理できます。

標本の情報を記録しておこう

標本には、採集者・生物の種名と学名・採集した場所・年月日等の情報を記録しておく必要があります。それをタグやラベルに記載するのですが、私は100均でも売っているシールを使用しています。

筆記用具は鉛筆もしくはボールペンなどの簡単に消せないものをえらびます。

採集した場所などは確定した情報なので、消せないボールペンで書いた方が良いですが、名前などは誤同定だった場合の修正がしやすく尚且つ耐久性に優れている鉛筆で記入したほうが良いでしょう。

液浸標本づくりの注意点

液浸標本づくりの注意点としては、生物種によってうまく固定できずに固定液が濁ったり、タンパク質が散らばって原形を留めなかったりすることが挙げられます。筆者も、魚類だとハダカイワシ、無脊椎動物だとツツボヤの一種とヨウラククラゲの触手はうまく標本にできなかった経験があります。

また、魚類の標本作りの際に魚体の洗浄が不十分だと、表面の汚れや粘液によって濁ってしまうことがあります。このような場合は固定液を入れ替えるか、底に溜まったタンパク質をスポイトで吸い取れば概ね綺麗になります。

ラベルも貼りましょう(提供:俊甫犬)

標本の活用

作成した標本は自宅で保管するのも良いですが、博物館などの研究機関に寄贈することもできます。

実は博物館に保管されている身近な生物の標本は、一般人から寄贈されたものが最も多く占めており、そこから得られる情報もとても重宝されています。地元に博物館があれば打診するのも手ですが、受け入れ先が見つからなかった場合は自然史系標本セーフティーネットという組織に頼ることもできます。

自然史系標本セーフティネットは、そのような標本の消失を防ぐために設立された組織。博物館同士で寄贈標本に関する情報を共有し、標本受け入れ先を効率よく探し出すことで、自然史をひも解く上で重要な資料となる標本を、少しでも多く救うことを目的としています。

標本には、研究結果や対象生物の分布・調査結果の証拠として重要な役割があります。そして時代による分布や環境の変化を知ることもできます。

なお、アルコールはタンパク質を固定するだけでなくDNAも保存できます。見たことがない種類の生き物や得体の知れないものでも、それによって生物種を同定出来るかもしれません。

標本はただ保存できるだけでなく、自然史的にも貴重な資料にもなり得ます。そこから新種が見つかったりと大きな発見に繋がることもあるので、標本を作ってみることをおすすめします。

(サカナトライター:俊甫犬)

参考資料

全国的な自然史系標本セーフティーネット

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