【2024年大手企業の夏ボーナス】平均94万1595円(前年比4.23%増)、2番目の高水準/経団連「2024年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況[最終集計]」
8月7日、日本経済団体連合会(経団連)は、「2024年夏季賞与・一時金 大手企業業種別妥結状況(加重平均)」の[最終集計]を発表した。調査対象は、原則として従業員500人以上、主要22業種大手244社で、今の方法で調査を始めた1981年以降で2番目に高かった。今年の春闘では各社高水準の回答が相次ぎ、令和6年の賃上げ平均妥結額は「17415円」で、前年の11245円に比べ6170円の大幅増加していたことから、夏季賞与・一時金についても増額が期待されていた。本記事では、今年の夏ボーナスの動向を紹介する。
【大手企業の夏ボーナス】平均94万1595円(前年比:4.23%増)、17業種でプラス
最終集計(20業種156社)の平均妥結額は従業員1人あたり94万1595円と、前年比4.23%増だった。20業種のうち化学、電機、貨物運送の3業種がマイナスで、残る17業種はプラスだった。
製造業120社の平均妥結額は98万6369円で、非製造業36社の平均妥結額は83万6150円であった(加重平均による)。また単純平均で算出した場合の平均妥結額は、製造業で84万6755円、非製造業で平均は86万1869円となり、業界1人当たりでは製造業が高いが、1企業あたりで計算すると非製造業が高い結果となっている。
妥結額1位は「建設」の134万6085円。2位は「機械金属」の114万2472円、3位は「食品」の113万5683円。
増加率1位は「商業」の38.39%、2位は「電力」の21.51%、3位は「セメント」の12.85%。
2024年 夏季
2023年 夏季
業種
妥結額
増減率
妥結額
増減率
非鉄・金属
821217円
1.17%
811744円
-7.37%
食品
1135683円
4.13%
1090665円
14.58%
繊維
799649円
2.88%
777280円
-6.19%
紙・パルプ
735781円
9.79%
670148円
-3.19%
印刷
819721円
5.21%
779152円
-0.37%
化学
837391円
-7.17%
902107円
-5.93%
ゴム
888300円
4.00%
854095円
2.08%
セメント
760187円
12.85%
673612円
-10.20%
鉄鋼
999112円
3.22%
967969円
-4.53%
機械金属
1142472円
6.94%
1068372円
13.11%
電機
989226円
-0.20%
991208円
2.17%
自動車
1097270円
8.38%
1012409円
10.54%
造船
1067172円
5.37%
1012763円
13.81%
建設
1346085円
7.44%
1252850円
-2.73%
商業
1131593円
38.39%
817699円
10.30%
鉄道
854522円
10.85%
770887円
10.77%
貨物運送
-
-6.42%
-
-
電力
814183円
21.51%
670030円
-11.75%
情報通信
910821円
3.14%
883134円
7.03%
航空
679645円
-
-
-
総平均
941595円
(850242円)
4.23%
(2.90%)
903397円
(826240円)
0.47%
(0.31%)
製造業平均
986369円
(846755円)
3.55%
(2.13%)
952574円
(829126円)
3.50%
(0.42%)
非製造業平均
836150円
(861869円)
7.57%
(5.69%)
777293円
(815462円)
-6.24%
(-0.02%)
※電機、造船、建設、商業、鉄道は従業員平均の数値を含む
※平均欄の( )内は一社あたりの単純平均
※2023年夏季の数値は、2023年8月9日付最終集計結果
3年連続で増額、過去2番目の妥結額
妥結額の推移を見ると、2021年はコロナ禍で前年比8.77%減と大幅なマイナスであった。2021年以降は増加に転じ、今年の妥結額は3年連続でプラスとなった。加重平均は現行の集計方法となった1981年以降で2018年に次いで2番目となった。
夏ボーナス高水準業界の2024年賃上げ内容
高水準業界の賃上げ内容について、2024年春季労使交渉によって賃上げを行うと発表した企業を「2024年春闘賃上げ動向まとめ」から一部ピックアップ紹介する。
妥結額1位:建設業界鹿島建設 定年再雇用者を除く従業員約8500人に対し、ベースアップ定期昇給を合わせて、5.7%賃上げ、ベースアップは総合職の場合で3万5000円。賞与を合わせると、平均7.4%の賃上げとなる。定年再雇用者の待遇も改善する。また、2024年度入社からの初任給を引き上げる。大卒28万円・院卒30万円にする。 竹中工務店 ベースアップ定期昇給を合わせて、平均約7%超の賃上げ。うちベースアップは約2万5000円。さらに、建設現場勤務者の手当を増額し、月額最大11万円にする。また、2024年度入社からの初任給を引き上げる。3万円増額し、大卒28万円・院卒30万円にする。 千代田化工建設 ベースアップと定期昇給をあわせて平均約11%の賃上げ。うち、ベースアップで約3万6000円、平均7%の賃上げ。 東洋建設 ベースアップと定期昇給を合わせて、平均9.6%の賃上げ。 妥結額2位:機械金属三菱重工業 ベースアップで月1万8000円の賃上げ、満額回答。定期昇給分を合わせて8.3%の賃上げ。一時金の回答は6.1カ月分。 住友重機機械 ベースアップと定期昇給を合わせて、平均月2万4000円の賃上げ。ベースアップで月1万8000円、満額回答。 三井金属鉱業 一般社員(正社員のうち非管理職)に対し、ベースアップと制度昇給などを合わせた総額で平均7.7%の賃上げ。うち、ベースアップは月2万円の賃上げ、組合が要求した1万5000円を上回った。また、新卒社員の初任給を引き上げる。博士卒4万5000円、修士卒3万5000円、その他の区分2万円増額する。学部卒で25万4000円 、修士卒で28万6000円にする。 妥結額3位:食品日本たばこ産業(JT) 正社員に対し、ベースアップと定期昇給などを合わせた総額で平均5%の賃上げ。うちベースアップは一律月1万2500円。契約社員には9万8000円、パートタイマーには6万6000円の一時金を支給。 アサヒグループホールディングス アサヒビールは組合員約1600人に対し、ベースアップと定期昇給を合わせて約6%の賃上げ、満額回答。うち、ベースアップは月1万3500円、32歳以下の社員を対象に増額し最大で月1万7000円。 キリンホールディングス キリンHDの約1800人に対し、ベースアップと賃金改定分を合わせて、約7.5%の賃上げ。ベースアップで平均月1万3000円の賃上げ、満額回答。若手社員には最大2万円のベースアップを実施。また、2024年度入社から新卒社員の初任給を引き上げる。2万8000円増額し、大卒で27万円にする。 味の素 ベースアップと定期昇給を合わせて、平均月2万1000円の賃上げ、満額回答。賃上げ率は約6%。ベースアップは月額1万4000円。また、2024年度入社から新卒社員の初任給を引き上げる。大卒で1万4000円増額し、25万9000円にする。そのほか、非正規従業員にも物価上昇分に準じた賃上げをする。 明治ホールディングス 明治はベースアップと定期昇給を合わせて、平均月2万1125円の賃上げ。賃上げ率は5.93%。うち、ベースアップは月1万5000円、定期昇給は約2%。 増加率1位:商業(卸売業、小売業)三菱商事 役員を除く国内外の社員約5500人に対し、ベースアップと個人賞与ボーナスを合わせた総額で、年間平均4.5%の賃上げ。また、初任給を引き上げ、2万円増額する。 丸紅 ベースアップで月額平均6.5%の賃上げ、組合の要求を上回る回答。また、2024年度入社からの初任給を引き上げる。学部卒で5万円増額し、30万5000円にする。 住友商事 従業員4659人に対し、平均2万6156円の賃上げ、賃上げ率は3.82%。 イオングループ イオンモールは、正社員の総額で平均月2万7196円(7.73%)、パートタイマーで時給83.5円(7.01%)の賃上げ。イオンリテールは、正社員で総額平均賃上げ1万9751円(6.39%)、パートタイマーで時給76.66円(7.02%)の賃上げ。イオングローバルSCMは、正社員の総額で平均2万3184円(6.94%)、パートタイマーで時給76.9円(7.0%)の賃上げ。ピーコックストアは、正社員の総額で平均1万7694円(5.75%)、パートタイマーで時給84.0円(7.04%)の賃上げ。まいばすけっとは、正社員の総額で平均1万9672円(7.37%)、パートタイマーで時給84.43円(7.03%)の賃上げ。 ウエルシア 正社員に対し総額で平均2万555円(6.07%)、パートタイマーに対しては時給88.1円(7.95%)の賃上げ、正社員は満額回答。 J.フロント リテイリング J.フロント リテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店は、管理職を含む社員約5000人に対し、ベースアップで2万円の賃上げ。賃上げ率は6.1%。また、2024年入社から新卒社員の初任給を引き上げる。一律で2万円増額し、大卒で24万7000円にする(8.8%)。 増加率2位:電力東京電力 全社員に対し、ベースアップなどで年収の4%賃上げ。また、2024年度入社から新卒社員の初任給を引き上げる。大学・高専(専攻科)卒で1万1400円増額し、23万7100円になる(約5%)。 関西電力 ベースアップ相当分で、平均月1万7000円の賃上げ、満額回答。個人の能力の伸びに応じた昇給分も含めた賃上げ率は平均5.1%。また、2024年度入社から新卒社員の初任給を引き上げる。全学歴で一律2万円増額し、大卒については23万6000円になる。さらに労働協約を改める。「不妊治療休職制度」を導入し最長で2年間取得可能とする。小学校に上がる前の孫を看護する社員を対象に年度あたり5日間を限度とする休暇制度も導入する。 中部電力 ベースアップで月1万2000円の賃上げ。年間賞与は183万円で前年実績を20万円上回る。また、2024年度入社から新卒社員の初任給を引き上げる。大卒で1万3000円増額し、23万7000円にする。 九州電力 九州電力と九州電力送配電の組合員に対し、ベースアップで平均月1万1500円の賃上げ、満額回答。ベースアップと定期昇給を合わせて4.3%、賞与も合わせると平均7%以上の賃上げ。また、新卒社員の初任給を引き上げる。一律1万円増額し、大学卒で23万円、大学院卒で25万1500円にする。 増加率3位:セメント日本製鉄 ベースアップと定期昇給などを合わせた総額で14.2%の賃上げ。うち、ベースアップは月3万5000円で、組合側の要求額3万円を上回った。また、新卒社員の初任給を引き上げる。大学学部卒で4万1000円増額し、26万5000円にする。その他、年間休日日数の増加(常昼勤務者)、臨時出勤手当の支給要件見直し、単身赴任手当および単身赴任者の一時帰宅交通費の支給要件および支給回数の見直しを決定。 三菱マテリアル べースアップで月1万5000円の賃上げ、満額回答。