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「障がい者アーティストは機会が少ない」|きっかけを創り出す“レンタル”の取り組みとは?

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サラヤ株式会社がリードパートナーとして企画・立上げに携わった『art bridge』は、11名の障がい者アーティストの絵画をレンタルすることができるサービスです。アートを飾るということは、一見、目利きや購入などハードルが高く見えますが、『art bridge』は、プロが選んだ作品の複製画を制作し、レンタルで貸し出すという仕組みのため安価であり、始めやすいことが特徴のサービス。企業向けに展開しており、さまざまな企業がこのサービスに共感してレンタルをスタートさせています。

『ボルネオの環境保全活動』や『100万人の手洗いプロジェクト』などの社会貢献活動を行ってきたサラヤが、なぜこのサービスを立ち上げたのか?サラヤ株式会社 広報宣伝統括部 廣岡竜也さん(以下、廣岡)にお話を伺いました。

サラヤらしい芸術支援を

ーーなぜサラヤは、『art bridge』のような新しいサービスを企画されたのでしょうか?

廣岡)大阪の文化を広める『関西・大阪21世紀協会』から、文化振興に協力してほしいという打診があったことがきっかけです。サラヤは、その社会貢献活動のすべてを「衛生」「環境」「健康」という自社の事業と結びつけ持続可能なものにするようにしています。ただ今回は、アートとサラヤの事業に連動性が無いため、企画の内容には悩みました。しかし最終的には、サラヤが培ってきた社会貢献の思想を反映して、持続可能な活動にできればと思い、知恵を絞りました。

ーー芸術文化を広げる活動として、どうして『障がい者アート』に注目されたのですか?

廣岡)軽井沢で活動する、医師の稲葉俊郎先生と対談する機会がありました。そのときに、先生が障がい者の書いた絵をおくすり手帳の表紙にしていたことが、ヒントになりました。

芸術の世界は、その作品の良し悪しだけでなく、売れるかどうかはそのプロデュース能力にも関わってきます。そうすると、いわゆる一般的なアーティストに比べると、障がい者の方はハードルが高いといえます。なので、多様な価値観がある中で自分の絵を気に入ってくれる人をどのように見つけていくかを支援することが、サラヤが関わる意義があるのではないかと考えました。

ーーそうですね。描くだけでなく、売ることも必要になります。

廣岡)障がいのあるアーティストは、自分や家族が作品をアピールしたり、売り込みをすることは難しいです。よい作品かもしれないけれど、見つけられないから売れないという“機会の少なさ”を支援したいと想い、障がい者アートの領域で進めていくことを決めました。

いかに継続性を生むか

ーー単なる“障がい者支援”ではなく、“機会を与える”という点も、サラヤさんらしさを感じます。そのほかに工夫している点はどのようなところなのでしょうか?

廣岡)最初は、障がい者アートのコンテストなども考えました。しかし、それでは単発で終わってしまい、発信力や継続性の部分で疑問が残ります。とくに、「継続的に課題にアプローチし続ける方法で行う」ことは、私たちも大事にしている考え方です。

ーー今回は、障がい者アートのレンタルという形で最終的に実現しました。

廣岡)レンタルにすることで、多くのメリットが生まれると考えています。
アートは、売れるかどうかには買う側の意思が大きく反映されるものです。また、作品は高価にもなりやすい。そうしたことから、一般の方はアートに手を出しにくい環境になってしまっています。

ーーたしかに、アートというと遠いものに感じることもあります。

廣岡)とくに障がい者アートにはその距離感を感じることも多いと考え、レンタルにすることで価格的にも簡単に手が出るようにしようと考えました。多くの方に、まずは『障がい者アート』というものに触れられる機会を創っていければと考えています。一番安いプランで月額約5000円で、法人を対象にしています。まずは玄関や応接室などに気軽に飾っていただくことで、障がい者アートを知る人が増えればと思っています。

ーーレンタルという形をとることで、アーティストさんには少額でも継続的な収入となりますね。

廣岡)そうですね。レンタル費用から事務処理費を除き、25%をアーティストに還元しています。現在は11名のアーティストですが、レンタルが増えることで対象となるアーティストを増やし、多くの方が出品できるようにもなるので期待しています。

「障がい者だから買ってください」ではないアートの普及を

ーーアーティストは誰でも出品できるような形はとっていないのですね。

廣岡)「障がい者の作品だから」レンタルしてもらうのではなく、一番は“アートとして”気に入っていただくことが大切です。芸術作品として価値があるものを提供していきたいと考えており、そこで、画商を営んでいるオフィスNさんに作品やアーティスト選定、絵画の手配など、事務局としてご協力をいただいています。

ーー画商さんが選んだ絵だったら、飾ってみたい気持ちも増しそうですね!

廣岡)プランの中には、定期的に絵を交換できるものもあります。プロが選んだプロの作品として、『art bridge』のアイテムは楽しんでいただけるようになっています。

曽祇一晃「木の花蠍鉄砲ロボザウルス」

ーー障がい者アートの活用方法として、サラヤさんの商品のパッケージにするという方法はなかったのでしょうか?

廣岡)アイデアとしてはありましたが、他社さんでもあるものですし、プロダクトのパッケージとしてマッチしているのか?と疑問が残りました。なぜハンドソープや消毒液に障がい者アートがついているのか?ということをなかなか説明できなかったのです。「障がい者アートがついているので買ってください」というメッセージにとられかねないなと思い、商品への使用は見送りました。

『art bridge』で展開するものも、「作品としてのアート性が高く、人々の目に触れる機会が少ないもの」を基準として持ち、その“機会の少ないもの”が障がい者アートという考え方です。そうしたものの中から、「これがいい」と思うものを純粋にアートとして選んでいただければと思いますし、加えて障がい者アートの魅力も感じたり、企業にとってのダイバーシティを示す一つになってもいいのではないかなと思います。何度も言いますが、会の少ない人にその場を与えるために行っており、そのストーリーに多くの企業が共感していただければ嬉しいです。

ーースポーツチームでも障がい者アートの試合時の展示なども行っているところがありますが、単発ではない継続的な関わり方の選択肢になりそうですよね。

廣岡)そうですね!スポーツチームもさまざまな社会貢献活動をしていますが、手軽な社会貢献として、多くの人が訪れる場所で飾っていただきたいと思っています。飾ることだけでも十分な社会貢献になりますし、イベントだけではない持続的な社会貢献の方法の一つとしてチームに共感していただき、その想いがファン・サポーターに“自然に”広がっていけば理想的ですよね。
『障がい者アート』というと、無意識のうちにハードルを上げてしまうことがあります。

「心地よい機会」を与え続ける

ーー『art bridge』の今後の展望について教えてください。

廣岡)この活動で、私たちサラヤは何も利益を取らず、選定・複製・発送をするオフィスエヌさんも利益率低く取り組んでいます。借りることのハードルを下げた分、多くの企業に賛同していただき、作品数やアーティスト数も増やしていければと思っています。

ーー借りたい人が増えることで、障がい者アーティストの“機会”が増えるという構図ですね。

廣岡)継続性を考えると、少なくとも10年はこの活動が続いてほしいと思っています。障がい者アートに継続的に触れられる、ハードルの低いサービスとして広まっていき、障がい者アートに取り組む方に「心地よい機会」を与え続ける場になり続けてほしいです。

ーーありがとうございました!

矢形聡「カボチャとぶどうといちぢく」

有田京子「てんてんおばけ」

柴田龍平「19942002」

平野喜靖「無題」

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