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THE ORAL CIGARETTES・山中拓也 × ヒグチアイ――異なる道を歩む2人を繋ぐものは【YGNT special collective 特別対談】

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THE ORAL CIGARETTES・山中拓也 / ヒグチアイ 撮影=高田梓

今年5月、Billboard Live Yokohamaのオープンを記念して演奏するべく集った、セッションプロジェクト・YGNT special collective。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、残念ながらライブは中止になったが、“新レーベル・LIFE OF MUSICからの配信リリース+Billboard Live Yokohamaで収録した演奏映像をYouTubeで公開”という形でプロジェクトは動き出した。


この記事では、YGNT special collectiveに参加しているTHE ORAL CIGARETTESの山中拓也(Vo)とヒグチアイ(Vo/Pf)の対談をお届け。一見接点がなさそうなこの2人、どのような経緯で一緒に音楽を鳴らすことになったのだろうか。

――ライブは中止になったものの、配信リリースと演奏映像の公開が始まりました。これ、話としてはどういう流れだったんですか?

山中:まず、LIFE OF MUSICは、うちのマネージャーが発起人となって始めたもので。フェスとかで、俺が他のバンドに入って演奏をする機会がここ何年かですごく増えてきたんですよ。だけど、その映像って残ってないことがほとんどで。「それ、めっちゃもったいないよなあ」という話をマネージャーとずっとしていたんですよ。
LIFE OF MUSICはそういうきっかけで始まったもので、俺らYGNT special collectiveがその第一弾をやらせてもらった感じです。とはいえ、俺はマネージャーがやってるから協力しましたという感覚ではなくて。今後いろいろなコラボレーションがこのプラットフォームから発信されるのだとしたら、すごく面白いなあって思ってます。良い演奏が埋もれがちな時代に、それをちゃんとピックして、リリースしてお届けするシステムがあれば、アーティストはもっといろいろな音楽に挑戦できるし、お客さんにはいろいろなコラボレーションを見てもらえるし……そういう世界があってもいいんじゃないかって。
そういう話もある中でBillboardさんから「何か一緒にやりませんか」という話をいただいたので、「じゃあちょうどタイミング合致してるし、一緒にやったら?」という流れになりました。

――山中さん的には「せっかくの機会だからバンドとは違うことをやりたい」というモチベーションなんですかね。

山中:そうですね。オーラルだと、曲を作るのもアレンジを固めるのも、自分がメインになってやらなければならない立ち位置じゃないですか。そうじゃないことをここ(YGNT)では経験したいんですよね。だから最初にメンバーに集まってもらったときにも、「俺はなるべくみなさんの懐に入っていく感覚でやりたいです」という話をしていますし、アレンジとかも基本的には他のメンバーにリードしてもらってます。

――ヒグチさんに参加してもらうことになったのはどういう経緯で?

山中:完全に俺からのアプローチです。俺、女性アーティストをあまり聴いてこなかったんですけど、3年前ぐらいにアイちゃんの曲を聴く機会があって。そのときに「何この声」「むっちゃいいな」って思ったんですよ。女性のボーカリストは、男性には出せない高音域も出せるから、「いいなあ、別種族だなあ」っていうのがまずあるんですけど、アイちゃんの場合、どっちのレンジも響いてくるなあと感じていて。だからなのか、男の人にもちょっと馴染みがあるような感覚が、アイちゃんの曲にはあるんですよね。それ以来ずっと聴いていて。ラジオとかで他の人の曲を流せる機会があったときにも、アイちゃんの曲を流したりしていました。

ヒグチ:インスタのストーリーにもあげてくれてたよね。それを見て私は、(オーラルとは)全然雰囲気が違うのに聴いてくれるんだなあ、って思ってたんですけど。

山中:「どこかで一緒にやれたらいいな」っていうのがずっと頭の片隅にあって。で、今回こういう機会をいただき、ボーカルは何人かいた方が面白いなと思ったので、じゃあアイちゃんとやってみたいなあって。それで最初アイちゃんに連絡をして、そのあと正式にオファーさせていただきました。

ヒグチ:誘われたときに思ったんですよ。私を誘っても、別にメリットないのになあ……って。

山中:いやいやいや。

ヒグチ:バンドマンの場合、バンドマン同士で一緒にやった方がきっとメリットがあるじゃないですか。バンドマン同士で一緒に写真を撮ったら、お互いのフォロワーがフォローしてくれるようになった、っていう話もよく聞きますし。でも今回こうしてちゃんと誘ってもらって、あ、そういうことじゃなかったんだなって思って。本当に音楽を一緒にやろうとしてくれているんだなっていうのが伝わってきたので、とても嬉しかったです。

――ソロアーティスト界隈では他の人とコラボすることってあまりないですか?

ヒグチ:そうですね。どちらかというと、みんなでどうこうしようというよりかは、自分をどう確立していくかということをそれぞれ考えているので。その感じがバンドの人たちとはまた違うところで、だからこそ、SNSを見ていると(バンドマンが)羨ましくなることがあるんですけど……楽屋とかで(他のバンドと)バチバチしないの?

山中:いやぁ……場合によるっす(笑)。

ヒグチ:あるにはあるんだ(笑)。

THE ORAL CIGARETTES・山中拓也 撮影=高田梓

山中:バンドでも「俺は一匹狼だぜ」みたいなタイプの人たちもいるし、何なら、みんなでワチャワチャするより、一匹狼でいた方が頭一つ抜けられるんじゃね? っていう説もあって。

ヒグチ:うんうん。

山中:だから人によるんだけど、俺らはインディーズの頃、ハードコア/メロコアシーンに近いところにいたから、育った環境からの影響が大きい気がしますね。礼儀もすごく厳しかったし、先輩を重んじるみたいな、縦の関係もすごいキツかったんですよ。そのなかで先輩から「仲間は絶対大切にしろ」って教えられてきたんですね。考え方としては、「みんなでわいわい仲良くしようぜ」というよりも、「バンドマンを救えるのはバンドマンしかいなくない?」っていう感じだと思います。自分らが落ちたときに、バンドマンが主催しているフェスに呼んでもらって、それによって前に進むことができて……みたいなこともあるので。そういう助け合いができるのがバンドマンの強みなんじゃないですかね?

ヒグチ:いや~、いい話。

――ヒグチさんは元々オーラルに対してどういう印象を抱いていましたか?

ヒグチ:バカみたいな言い方になっちゃうんですけど、キラキラしてるなって思ってました。私、ステージに自分というものをそのまま持っていくことしかできないんですね。だから聴く人のその日の気分によって、曲の聴こえ方が変わってしまう音楽をやっていると思っていて。私のライブを観たあと、落ち込んで帰る人もいれば、ちょっとほわっとした気持ちになって帰る人もいると思います。
だけど、オーラルはステージに立つとき、ちゃんと何かになっていますよね。「オーラルを観ればこういう気持ちになれる」「だからライブに行こう」と思える存在というか。それって言ったらディズニーランドに近い感覚で、それが「キラキラしてる」というところに繋がるんですけど。そういうアーティストだなと思います。

山中:俺らは……というか俺自身が、自分のコンプレックスをバネにして曲を書くことが多いんですよ。それをファンも知ってるし、俺ら自身も、自分に引け目を感じている子たちに対して「一緒に行こう」と伝えられるようなライブをしようと、昔から心がけていて。だから今アイちゃんが言ってくれたことはすごく合っているし、自分らが心がけていることがちゃんと伝わっていてよかったなって感じます。

ヒグチ:今、コンプレックスって言ったけど、どういうことがコンプレックスなんだろう?

山中:俺、元々ボーカルじゃなくて。低くてぬるっとした歌い方しかできない、そんな自分の声がずっと嫌で、小っちゃい頃から唄うことを避けてきたんですよ。だけどオーラルの前身バンドが解散したタイミングで、うちのベースから「曲作ってんのお前だし、お前が歌ったほうが絶対に説得力がある」って言われて。それがきっかけで「え~、嫌や~」って言いながら歌い始めたんですね。
それは一つの例だけど、そういうふうに、コンプレックスに感じていることが結構あって。だけど、それをちゃんと乗り越えながらやってこれたっていう、自分の成長を自分自身が一番感じられているんですよね。だからこそ、昔の俺のように「自分には何もない」と思ってる子たちに対して、「俺と一緒に、そういう部分(=コンプレックス)も認めながら乗り越えていこうよ」と等身大で伝えられるのが俺のアーティストとしての一番の強みだと思っていて。で、それがバンドマンなんだろうなとも思いますね。

――というと?

山中:今回このメンバーで一緒にやってみて、ミュージシャンとバンドマンの違いってめっちゃあるなあって思ったんですよ。やっぱりバンドマンって「自分がどういう人生を歩んできたか」をちゃんと胸張ってどこにでも出せるかがすごく問われるんですよね。

ヒグチ:うん。活動そのものが全部ドラマになっていくのが、バンドマンの強みだなって思いますね。そういう部分はもちろんシンガーソングライターにもあるけど、シンガーソングライターの場合、活動のなかで生き様を見せるというよりかは、曲のなかに生き様を書くという感じで。そこが違うところですよね。

THE ORAL CIGARETTES・山中拓也 / ヒグチアイ 撮影=高田梓

――山中さんのようなバンドマンも、ヒグチさんのようなシンガーソングライターも、様々な現場で活躍しているミュージシャンも一同に会すのがYGNTなわけで。実際に音を合わせてみての感想を伺えますか?

山中:俺、アイちゃんがやさしくてよかったってめっちゃ思った。

ヒグチ:あはは! 怒りそうだと思ってた?

山中:ちょっとでも音楽的なミスをすると、「なんでこの人分からないんだろう」って思われるんだろうなって(笑)。

ヒグチ:思わないよ~(笑)。コーラスのとき、めっちゃビクビクしてたよね。

山中:むっちゃビクビクしてた。「ほしのなまえ」さ、あれ、サビ前で転調するよね?

ヒグチ:えっとね、転調してるけど戻るの。だから結局変わらないんだけど――

山中:それがめちゃめちゃ難しくて。唄い始める前に「最初の音はこれ」って音程を取っても、サビ前で「おお、どこ行ってもうたんやろ!?」みたいなことが起こるんですよ(笑)。

ヒグチ:普段、ああいう歌は唄わない?

山中:あんまり唄わないし、まず、コーラスに回るっていうのが初経験で。他の人が唄っているところに(自分の声を)乗せるってなると、まずどこから入ったらいいのかが分からんかった。

ヒグチ:でもコーラスすごくよかったですよね。声のタイプ的には近い方だと思うんですけど、でも完全には混ざり合わないというか、コーラスでも(山中の)個性がしっかり出ていたのがいいなあと思いました。楽器隊のみなさんもすごく素敵な方々だったので、自分にとっては、ご褒美みたいな1曲になりましたね。今回呼んでもらえたということは認めてもらっているということだと思うので、こういう日を大切にして、こういう日を当たり前だと思わずに、これからも歌を唄っていけたらいいなと思います。

山中:よかった~。嬉しい。

ヒグチ:でもね、映像を見たとき、山中くんにもっと唄ってもらえばよかったなと思った。1番ずっと私が唄っちゃってるから。

山中:いや、それがよかったです。

ヒグチ:いや、本当に。次の機会があれば唄ってもらうことにしよう。

山中:いや、あれで十分だから……。

ヒグチアイ 撮影=高田梓

――譲り合いが止まりませんが(笑)。そもそも、「ほしのなまえ」を選んだ理由は?

ヒグチ:これは私から提案しました。最初、他の曲を(案として)出してもらっていたんですけど、結果が想像できるものじゃなくて、想像できないものを唄ってもらいたいなと思って、この曲をお願いしちゃいました。山中くんは声にすごく厚みがあるというか、ドラマのある声をしているので、こういうバラードがすごく似合うなと思いました。こういう唄い上げるバラードを唄ってほしいですよね、自分でも。

山中:じゃあそのときはアイちゃんに曲作りを手伝ってもらおう(笑)。

――このご時世なので、ステージで音を出すのも久しぶりだったのでは?

山中:そうですね。アイちゃんも久しぶりやった?

ヒグチ:うん。一人で配信ライブをやることはあったけど、この日以来、バンドとは合わせてないかな。

山中:この日、すごくいい空気感だったんですよ。PAさんとかもライブハウスで大きな音を出す仕事は久しぶりだったりして、スタッフみんな、音を出すのにウキウキしてる感じがして。その空気感が俺にとってはすごく嬉しかったんですよね。この空間にいる人はみんな音楽を愛している人だ、みたいな。アイちゃんも、リハーサルとかで「ここでこうしよう」っていう提案を積極的にしてくれて。

ヒグチ:みんな超いい人だったんですよ。絶対に(現場を)楽しくしてくれるっていう人たちばかりだからこそ、そこに甘えて、私もいろいろ言えたんだと思います。

山中:そうやって「なるほど、それならこうしよっか」みたいなやりとりをその場でしながら、最初は点々としていたグループだったのが、どんどん近づいていく感覚がありました。その感覚はバンド始めた頃以来やなって思いましたね。

ヒグチ:でも一生懸命すぎたね。2日間しかなかったから。

山中:確かに。本来だったらもっとスタジオに入ったりしたかったんだけど、このタイミングだったから、オンライン上のやりとりで進めることがほとんどで。他愛もない話をする時間もなかったし、次はそこも踏まえた上で臨めたら、ステージ上でもっと楽にコミュニケーションをとりながらできるんじゃないかと思いました。

――ということは、これ以降の展開を期待してもいいのでしょうか?

山中:具体的なことはまだ何も決まってないです。ただ、収録が終わったあと、ギターの(山岸)竜之介は「ライブやりたい」って言っていたし、もちろんメンバーのなかにもそういう空気感があって。それと同じぐらいの熱量をスタッフからも感じたから、俺らも「これは多分次もあるな?」と薄々感じながら、会場を後にしました(笑)。

――じゃあそのときまでに、ヒグチさんにはYGNT用のバラードを書いていただいて。

ヒグチ:はい、サビの前で転調するやつですね。

山中:いや、お願いだからそれはやめて!(笑)

取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=高田梓

ヒグチアイ / THE ORAL CIGARETTES・山中拓也 撮影=高田梓

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