深大寺でしかできない10のこと
日本最大厄除け大師・深大寺の門前町であるこの地域は、湧水が多いことでも知られる。深大寺植物公園の分園・水生植物園や都立農業高校神代農場のわさび田など、潤沢な水源を生かした施設もある。
深大寺そばも、蕎麦の栽培、水車を利用しての製粉、釜ゆでやさらしなど、この地の水の恵みにより発展した名物なのだ。
一生の道具に出合う。
パーク
「神代植物公園」の近くにたたずむ、一軒家の生活道具ショップ兼カフェの「パーク(park)」。手がけるのは、コスメやファッションなど多様なデザイン制作を行うデザインスタジオ「NSSG」だ。
白と木目を基調とした店内には大きな窓から柔らかな陽が差し込み、居心地いい空間を演出している。棚には、オーナーの町田夫妻が作り手のものづくりへの姿勢や考え方に共感し、自身も長く使用する器や雑貨、衣類などが並ぶ。
12席ほどのカフェスペースでは「体に良くておいしい」を軸に、無農薬の米や小麦など食材を厳選したカレーやドーナツ、ドリンクを提供。スパイスを丁寧にいり、オリジナルのサワークリームを加えた「スパイシーチキンカレー」(1300円、以下全て税込み)は、国産鶏と野菜のうまみが際立つ。
手ごねで作るドーナツには、九州産無農薬の小麦粉や、埼玉県比企郡から届く平飼い卵を使用。素材本来の風味を引き立てるため、甘さは控えめだ。粉の味をシンプルに楽しむなら、まずは「プレーン」(275円、店内飲食の場合)を試してほしい。
鬼太郎ワールドに入り込む。
鬼太郎茶屋
数々の名作漫画を生み出した水木しげるが、人生の大半を過ごした調布市。「深大寺」の参道入り口にある「鬼太郎茶屋」では、代表作である「ゲゲゲの鬼太郎」の世界観が味わえる。築60年余りの古民家には外壁から内装など、そこかしこに妖怪がひそみ、同氏の「見えんけれども、おるんだよ」という言葉を見事に体現している。
喫茶スペースでは「一反もめんの茶屋サンデー」(900円、以下全て税込み)や「ゲゲゲラテ」(700円)など妖怪をモチーフとしたユニークなメニューを提供。「ぬり壁のみそおでん」(400円)は、水木しげるの出身地、鳥取県産の有機こんにゃくを使用するなど、食材へのこだわりもひとしおだ。
さらに妖怪グッズを揃えるショップや、水木しげる作品を展示するギャラリーを併設。子どもから大人まで「鬼太郎ワールド」を存分に堪能できる。
海に思いを馳せる。
サカナノミライ
地元産の野菜をはじめ多様な商品を扱う「深大にぎわいの里 調布卸売センター」の一角にある、魚を主役とした総菜店。長年飲食店を営んできた魚谷浩が、「食卓から海の大切さを考えてほしい」という思いの下、2022年にオープンした。
海をイメージした外装は鮮やかでひときわ目を引く。内装はSDGsに配慮し廃材や古木をリメークして使用。カフェのような温かみがあり、居心地も抜群。 ショーケースには、旬の魚介や海藻を用いた日替わりの総菜が揃う。トレーサビリティを徹底し、「どの漁師が獲った魚なのか」が分かるものを使用するのも特徴だ。
ランチはご飯、汁物に好みの総菜を組み合わせる「サカナノミライセット」や、白身魚にこだわった海鮮丼を用意。テイクアウトやUber Eatsにも対応しており、近隣の公園への配達もできる。ディナーは完全予約制で、1日1組のみ。日本酒をたしなみながら食事したいときはもちろん、小さな子どもと一緒に気兼ねなく過ごしたい時にもぴったりだ。
深大寺生まれのだるまに癒やされる。
だるチャンのおうち
日本三大だるま市の一つ、「深大寺だるま市」が開催される「深大寺」。そんな地域の伝統と文化を色濃く伝えるのが、深大寺のほど近くにある「だるチャンのおうち」だ。店内には「多摩だるま」ほか、地元の女性たちの豊かな感性が詰まった一点物のだるまグッズが所狭しと並ぶ。
「小さい」「地域から生まれた」の「ちぃ」から名付けた手のひらサイズの「ちぃだるま」はバリエーションも豊富で、土産としてもおすすめ。 同店がオープンしたのは、2012年。代表の貴山圭子が開くボディパーカッション教室の生徒の絵から生まれたキャラクター「だるチャン」をモチーフに、地域活性化を目指し、さまざまな活動を始めたことが背景にある。
「再生」「とことん使い切る」などをテーマに、着物のはぎれや古布をだるまに貼り合わせた「ちょう布だるま」は、ワークショップも開催。親子から外国人観光客まで、幅広い層から人気を博している。深大寺散策の途中にぜひ立ち寄りたい一軒だ。
遥か彼方の宇宙とつながる。
国立天文台 三鷹
日本の天文学の中核を担う研究機関。国立天文台は国内外に観測施設を持ち、三鷹キャンパスは研究の拠点だ。前身は東京府麻布区にあった東京天文台で、1924年に三鷹村大沢(現在の三鷹市)に移転。1988年に岩手県の緯度観測所、名古屋大学空電研究所の一部と統合され、国立天文台として発足した。
一般向けの施設公開は、2000年からスタート。緑豊かな広大な敷地にはさまざまな観測施設が点在し、その一部を見学できる。見学コース内には大正期の建物が多く、国の登録有形文化財になっているものも少なくない。最も古い建物は「第一赤道儀室」で、ドーム内にある望遠鏡は1938年から61年間、太陽黒点のスケッチ観測に活躍した。
国立天文台では、「4D2U定例公開」「定例観望会」など、申込制のイベントも定期的に開催。天文学の歴史に思いを馳せながら宇宙を身近に感じることができる、唯一無二の場所だ。
深大寺名物の蕎麦をたぐる。
手打そば 松葉茶屋
諸説あるが、江戸時代、土地が米作りに適していなかった小作人が代わりにそば粉を「深大寺」に納め、それを僧侶が打ってふるまった蕎麦が評判を呼び、全国にそのおいしさが広まったのが、深大寺そばのはじまりという。
緑生い茂る寺の周辺には、今も20軒ものそば屋がひしめいて、当時の面影を残している。 「松葉茶屋」はそんな伝統を今に受け継ぐそば屋の一つである。国内別注品のそば粉のみで手打ちされた十割そばは、そば通もうなること請け合いだ。
漆黒のお湯に浸かりリフレッシュする。
深大寺天然温泉 湯守の里
自然と人の調和と共生をテーマにした温浴施設。黒蜜のようにとろりとした黒湯は、1500メートルの地層に含まれるコンブやシダなどの植物が熟成されたフミン酸を含んでいて、ミネラル豊富。筋肉がほぐれていくような感覚で、疲れた体が芯まで温まるだろう。
露天の水風呂もあり、1日中漕いだ脚をアイシングできるのもうれしい。天井に空や金魚を映したプロジェクションマッピングを楽しむ風呂や、滝が流れる滝見風呂など、エンターテインメント性も抜群だ。
武蔵野の四季に圧倒される。
神代植物公園
四季を通じて武蔵野の野生の植物を鑑賞し、学べる公園。もともと都内の街路樹を育てるための苗園であったが、戦後、神代緑地として一般に公開され、1961年に植物公園として開園された。
現在、約2800種類、10万本・株の植物が植えられ、中でも梅園、バラ園、ツツジ園は見事だ。中でも、5月から6月にかけては、バラ園で「春のバラフェスタ」が開催されている。約400種類、5200株の多彩な春バラが一面に咲き揃う姿は圧巻だ。
園内では園芸と親しむさまざまなイベントも開催され、歌会、謎解きゲームなどユニークな企画も。園内のカフェでは色も香りもバラの花束のような「バラソフト」を販売している。
都内最大の広大な敷地には大温室や水生植物園もあり、約4800種類、10万本・株の植物が大切に育てられていて、いつ訪れても四季を感じる花々が迎えてくれる公園だ。
ハーブガーデンで焚火料理を堪能する。
マルタ
調布の深大寺ガーデン内にある、まき火料理を提供する一軒家レストラン。「自然との共生」をテーマとし、農業のあり方や食を通して未来への考えを巡らせるレストランだ。
食材は庭で採れるハーブのほか、地域の生産者から提供されるオーガニックな野菜や伊豆七島から毎朝届く鮮魚を使用。野草とハーブを漬け込んだ自家製ドリンクや、酢酸発酵させた野草を使ったカクテルなどをラインアップしている。
エディブルガーデンとして機能する庭は、ランドスケープデザインを行うグリーン・ワイズが手がけ、環境との共生という観点でアメリカの環境認証SITESのプラチナ認定を取得した。
テラスではゲストと一緒に収穫した野菜をグリルして食べる企画をはじめ、「つながる暮らし」をテーマに共感の輪が広がるワークショップも開催。生産緑地だった土地とコミュニティーを生かした場づくりが魅力となっている。
小さな飛行場で東京の島と繋がる。
調布飛行場
調布には小さな空港が存在する。味の素スタジアムに隣接する調布飛行場は「東京都」である大島、神津島、八丈島などの伊豆諸島とつなぐフライトを毎日運航する。小さな飛行場の2階からは調布のランドマークである味の素スタジアムと飛行機を展望でき、夕暮れ時は美しい。
フライトは旅客だけでなく、大島諸島の特産品の運輸も担い、大島の三原椿油や新島焼くさや、三宅島のあしたば炊き込みご飯の素などが並ぶ自動販売機も設置されている。
また、毎年10月頃には「調布飛行場まつり」が開催されるので、チェックしてみては。