【葉山 ショップレポ】笠原商店 - 長柄の入り口で道ゆく人を温かく見守り続ける老舗酒屋
葉山町長柄、長柄交差点からすぐの場所にある昔ながらの酒屋「笠原商店」。
地元の人なら、店の前を通りがかりに店主に挨拶したり、暑い夏にベンチで自販機の飲み物を飲みながらひと休みした経験があるのではないでしょうか。
古くからこの長柄に住む人なら、酒はもちろん、味噌や醤油を自宅に配達してもらっていたことと思います。
私も夏はこの店の前を通るとかき氷に誘われてベンチに座り、店主とたわいもない話をしながらのんびりと過ごしています。
今回は、そんな笠原商店の歴史と店主の笠原俊一さんについてお話を伺いました。
72年前、阿部倉山麓から現在の地へ
笠原商店のルーツは大昔に、葉山町長柄の阿部倉山のふもとで「やまびこや」という酒店を営んでいたのがはじまりです。
先代である店主のお母様が一念発起し、72年前に現在の場所に新しい店をオープンさせました。
当時、近隣住民は阿部倉山麓の店を「上のやまびこや」、笠原商店を「下のやまびこや」と呼ぶ人が多かったそうです。
その頃の笠原商店は先代のご主人勉さんの故郷である宮城県から甥、姪など多くを住み込み従業員として迎え入れ、この笠原商店からお嫁に出したり、出店をさせたりと多くの人の面倒を見てきました。
店内には酒類だけでなく量り売りの菓子や煎餅、燃料、薪、石炭、米など、日用品の全てがここにありました。
販売方法は長柄の家一軒一軒に必要な物を届けるスタイル。
まるでサザエさんに登場する三河屋のサブちゃんのように、御用聞きをしながら配達していました。
また近隣の逗子や横須賀の飲食店やスナックなどにも酒類を配達し、忙しく活気ある日々だったそうです。
剣道と居合、そして町政に尽力
現在の店主・笠原さんは、この店の経営の傍ら、中学から始めた剣道を今も続けています。
高校時代から葉山小学校の剣道教室で子どもたちに教え始め、現在は七段の資格を持ち、30歳で始めた居合も指導しています。
画像出典:笠原商店
また、葉山町議会議員を現在9期、34年目。
かつては葉山町商工会青年部県連で副会長を務めるなど、葉山のまちづくりに携わってきました。
時代の変化と、変わらない店の役割
笠原さんが母からこの店を受け継いだのは40代の時。
酒店では珍しく肉や魚を市場に仕入れに行ったり、店の前で八百屋に野菜を販売してもらったり、灯油の販売や配達もしていました。
私にとって当時の長柄という場所の記憶は、周りがほとんど田んぼでしたので、父とおたまじゃくしを捕りに行く場所でした。
子どもの足で歩けど歩けど、どこまでも田んぼ。そして山。
それが私の記憶にある当時の長柄です。
ですから当時、笠原商店の存在は地域住民にとってありがたいものだったに違いありません。
ところが今や田んぼは姿を消し、住宅が立ち並び、コンビニエンスストア、食品や酒類を取り扱うドラッグストアがオープンしました。
移住者も増え、長柄の景色は大きく変わりました。
住民の数は増えたものの、現在この場所で酒店を営むのは大変ではないでしょうか。
率直に尋ねると、店主は笑って答えました。
「そうだよねー、普通に考えたらもう貸店舗とかにしちゃった方がいいかもねー。」
しかし、その後に温かな優しい微笑みとともにこう続けました。
「でもさ、この前を子供が歩いて学校に通ったりしてるしさ、見て、あそこにベンチがあるでしょ?
若い子供たちがあそこに集まってお喋りしてジュース飲んでたりするの。
誰かがさ、そういう子達や道ゆく人たちを見守ったり声かけてあげないとな。
葉山の子がくつろげる拠り所みたいな?
これも世話焼きのお袋の血かなー。」
コンビニにはない温かさ
バスを降りて自宅まで歩く時、学校の行き帰りにこの前を通る時、笠原商店でほっと一息休んでいける。
温かく声をかけてもらえる。
それは、コンビニやドラッグストアにはない、地域を愛する店主がいる店だからこそできることです。
最近は「角打ち」と言って酒屋の店頭で酒を飲むことが流行しているそうですが、それもきっと地域を愛する酒店の店主と地元住民のコミュニケーションがそうさせるのではないでしょうか?
元々地域の家庭に酒や味噌、醤油などを配達し、地域の人々と密接に結びついてきた酒屋だからこその地元への愛情が感じられました。
葉山の人々のために
笠原さんは葉山の人々にほっとくつろげる場所をと常に考えています。
ライオンズクラブとして葉山町内のバス停にベンチを6カ所も設置したのも笠原さんです。
私たちがバスを待つ時に座っているベンチも、もしかしたら笠原さんが作ったベンチかもしれません。
笠原さんの母がこの地に店を出した頃、葉山酒商組合には23店の登録があったそうですが、現在はわずか6店舗。
さらにそのうち2店がコンビニになっているため、酒屋として今も残っているのは4店のみ。
スーパーやコンビニで酒を買えるのは便利ですが、酒屋がなくなってしまうのは寂しいですね。
笠原商店は、ただの酒屋ではなく、地域を見守り、人々の拠り所となる、葉山に欠かせない存在です。
笠原商店
営業時間
9:00〜18:30
定休日
水曜日
電話番号
046-875-0474
支払い方法
現金
アクセス
JR横須賀線・京浜急行逗子・葉山駅より京急バス5分、長柄交差点バス停より徒歩2分
住所:神奈川県三浦郡葉山町長柄483
駐車場:なし