秋アニメ『しゃばけ』美術監督・美術設定:佐藤正浩さんインタビュー|原作の雰囲気を落とし込むために、美術面でこだわったポイントとは?
シリーズ累計発行部数1000万部を突破した畠中恵氏の妖怪時代小説『しゃばけ』シリーズのテレビアニメが、現在、全国フジテレビ系“ノイタミナ”にて絶賛放送中です。
本作の舞台は江戸時代。日本橋有数の大店である長崎屋の若だんな・一太郎が、“白沢”の仁吉と“犬神”の佐助をはじめとした妖と協力しながら猟奇的な殺人事件を解決していく、江戸の町人と妖たちが織りなす愉快で不思議な時代劇ミステリー。
このたび、アニメイトタイムズは、本作のスタッフ陣にメールインタビューを実施。第十一話終了後にお届けするのは、美術監督・美術設定の佐藤正浩さんです。江戸の町を感じてもらえるよう、美術面におけるこだわりやポイントをお話してくださいました。
【写真】秋アニメ『しゃばけ』美術監督・美術設定:佐藤正浩 インタビュー
原作の雰囲気を落とし込んだ、落ち着きのある色調と背景
——『しゃばけ』の原作を読んだときの第一印象、作品の魅力についてお聞かせください。
美術監督・美術設定:佐藤正浩さん(以下、佐藤):軽い時代物と受け取りました。
若い方の本格的な時代物への入口として良く出来ていて、ラノベ風の軽い語り口はとても親しみやすく、楽しかったです。
——設計図の制作から色・仕上がりの指針を決める過程において、基本コンセプトのようなものはあったのでしょうか。制作過程の中で、佐藤さん自身が大切にしたこと、特に意識したことを教えてください。
佐藤:基本コンセプトといった物は特にありませんが、現在主流の鮮やかな色彩の背景にはしたくないと考えていました。江戸という町は落ち着いた色調で、暗かったと思います。
——“人と妖が織りなす時代劇ミステリー”というテーマを踏まえ、美術面において、原作の雰囲気をどのように落とし込んでいったのでしょうか?
佐藤:妖は暗い江戸の闇にこそ存在するという前提で、具体的には明るくしすぎないように指示しました。
多分廊下の奥の暗がりや行灯の光の届かない部屋の隅から、妖がこちらを覗いているのだと思います。
——江戸時代が舞台ということで、現代にはない当時の街並みや小物類が印象的でした。江戸時代の様子を描く際、何か参考にされたのでしょうか?
佐藤:広重、北斎の浮世絵や明治の頃に取られた古写真、湯島聖堂周辺は何度か歩きました。
小物は博物館や資料館で見たものを参考にしていますが、背景として描きやすい様に結構アレンジしています。
——本作には個性的な妖がたくさん登場します。妖の存在を際立たせる上で、光の扱いや美術的な工夫をされた点はありますか?
佐藤:今回はボードを弊社(※1)の千葉に任せています。千葉に指示したのはビビットな色は使わないで、落ち着いた色味にする事と夜の光は小さく闇は暗くするくらいです。
(※1:佐藤さんが代表取締役を務めている株式会社ヘッドワークス。主に、アニメーション、ゲームソフト、CG等の美術デザインや背景制作などを行っている。)
設定作業時に面白く感じた日本橋の大店「長崎屋」
——大川監督をはじめとしたスタッフ陣とのやり取りで印象に残っている出来事、制作時の裏話がありましたらぜひ教えてください。
佐藤:申し訳ないのですが、制作時から時間が立っているので、あまり覚えていません。
ただ、大川さん以下、スタッフの皆さんが若いなあ~と感じたくらいです。
——佐藤さん自身が描いていて楽しかったシーン、逆に苦労したシーンがありましたらぜひ教えてください。
佐藤:前記したように色に関しては千葉が担当していますので、背景としては特にないのですが、設定作業時に日本橋の大店としての長崎屋を作るのは面白かったです。
ただ、初めに私が考えていた長崎屋の半分以下の規模になってしまいましたが……。(アニメの芝居上広すぎる舞台はNGかなと思います。)
——第十一話までで、ここはもう一度見返してほしい背景や印象的だったカットをあげるとしたらどこでしょうか?
佐藤:一話、二話で出てくる湯島聖堂から昌平橋につながるシーンは気に入っています。
——最後に、『しゃばけ』原作ファンの方、視聴者の皆さまへメッセージをお願いいたします。
佐藤:アニメ『しゃばけ』の美術担当としては、原作のもっている雰囲気をどの程度表現できたか不安です。ただ、個人的には時代物は久しぶりなので楽しめました。
原作ファンの方、視聴者の皆様もつい150年ほど前には存在した江戸という町を多少なりとも感じていただければ幸いです。