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第14回【帯津良一・88歳のときめき健康法】 これも手の内か『リスボン特急』

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第14回【帯津良一・88歳のときめき健康法】 これも手の内か『リスボン特急』

人生百年時代――とはいえ、老いさらばえて100歳を迎えたくはない。
健康で生気みなぎるような日々を過ごせてこそ、ナイス・エイジングだ!
西洋医学だけでなく東洋医学、ホメオパシー、代替医療まで、
人間を丸ごととらえるホリスティック医学でガン治療を諦めない医師、
帯津良一の養生訓は、「こころの深奥に〝ときめき〟あれ」と説く。

帯津良一・88歳のときめき健康法

文=帯津良一

 私の戦友中の戦友である初代総師長の山田幸子さんは「ホリスティック医学」という前人未到の世界を患者さんとともに突き進む私を陰になり日向になって支えてくれました。私が今あるのは彼女のおかげと折にふれて感謝しています。

 たとえば開設してまもない頃、がんに対する食事療法の一つであるゲルソン療法に対する渇望(かつぼう)が患者さんに広まったことがありました。ところが私はこの方法については何も知りません。そこでメキシコのティファナにあるゲルソンクリニックの見学を思い立ちました。しかし忙しさにまぎれて、なかなか実行できないでいたところ、

「私が行って来ますよ!」

 との彼女の申し出です。そして英語も喋れないのに単身、ゲルソンクリニックへの入院を果たし、貴重な体験を抱いて帰国したのには頭が下がりました。

 そして、79歳のときに、病院を辞し、ご先祖の墓仕舞いとともに、自らの生前法要を行い、

「あとは先生の足になりますから」

 と笑っています。自分の人生をしっかりと手の内に入れている人だなあ、と感心したものです。

 ところが、その後、下半身の衰えが進み、軽い交通事故を起こしたのを機に免許証を返上し車を売ってしまったのです。これも手の内かと思ったのですが、行動範囲が狭まったことによって、うつ傾向が現れたのか、ある時、

「先生! 私もう死にたい。先生一緒に死んで!」
 と来たものです。すかさず、

「そんなこと言うなよ!」

 と往(い)なしました。しかし、何日間か置いて、三回目に言われた時は同じように往なしながらも初めて、

「いっしょに死んでもいいな! もう一度言われたら、そうしよう」

 と閃いたのでした。

 そして、自殺の方法は? と考えた時、いきなり浮上したのが、

『リスボン特急』(1972年 フランス 監督=ジャン=ピエール・メルヴィル/主演=アラン・ドロン/カトリーヌ・ドヌーブ)でした。アラン・ドロン率いる警察隊に追いつめられて若きギャングが自宅でピストル自殺をはかるシーンが実に美しいのです。

 自殺するならこれだ! とかねてから思っていたのです。しかし、いざとなると難しいですね。ピストルが手に入らないし、初めてでは的中させるのも大変です。と思いながらパンフレットを見ているとカトリーヌ・ドヌーヴが現れました。美人ですね。ところが対面(といめん)の本棚からはモーリン・オハラが見ているではありませんか。やはりこちらですね。

 ところが師長は一人で旅立って行ったのです。これも手の内だったのでしょうか。

戦友・山田幸子師長(前列右)のお誕生日を病院の職員食堂で堀口看護師、栄養科長らと祝った。

おびつ りょういち
1936年埼玉県川越市生まれ。東京大学医学部卒業、医学博士。東京大学医学部第三外科に入局し、その後、都立駒込病院外科医長などを経て、1982年、埼玉県川越市に帯津三敬病院を設立。そして2004年には、池袋に統合医学の拠点、帯津三敬塾クリニックを開設現在に至る。日本ホリスティック医学協会名誉会長、日本ホメオパシー医学会理事長著書も「代替療法はなぜ効くのか?」「健康問答」「ホリスティック養生訓」など多数あり。その数は100冊を超える。現在も全国で講演活動を行っている。講演スケジュールなどは、https://www.obitsusankei.or.jp/をご覧ください。

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