ソマリアの「アルシャバブ」とは 〜最も強靱なアルカイダ系組織の起源と脅威
アサド政権の崩壊
イスラエルとレバノンの親イラン勢力ヒズボラとの間で停戦が発効した11月27日、シリア北西部を拠点とする反政府勢力がシリア第2の都市アレッポへ大規模な攻撃を開始した。
そして、反政府勢力は12月1日にアレッポを掌握し、5日のハマ、8日のホムスと制圧を続け、ついには首都ダマスカスの陥落が発表され、同国で長年に渡って実権を握ってきたアサド政権が崩壊した。
アサド家は父息子で50年以上のわたって独裁的にシリアを支配してきたが、アサド氏はロシアに亡命し、その長期独裁政権があっという間に崩壊したことに大きな衝撃が走った。
そして、反政府勢力の中核をなったシリア解放機構はもともとアルカイダを前進組織とし、アルカイダを支持する武装勢力がそれを称賛する内容の動画を配信している。
※シリア解放機構については以下参照
『シリア・アサド政権が崩壊』 主導した「シリア解放機構」って何? 〜ヌスラ戦線とは
https://kusanomido.com/study/overseas/global/99329/
アルカイダのネットワーク
アルカイダは、 アフガニスタンを拠点とするアルカイダ本体を中心に、
・アフガニスタンの「インド亜大陸のアルカイダ(AQIS)」
・イエメンの「アラビア半島のアルカイダ(AQAP)」
・北アフリカ・アルジェリアなどの「マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」
・ソマリアの「アル・シャバーブ (Al-Shabaab)」
・マリを中心にサハラ地域の「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」
・シリアの「フッラース・アル・ディーン(HAD)」
などの組織を取り囲んで考えられる。
アルシャバブとは
そして、その中でも最も支配地域が大きいのが、ソマリアのアルシャバブだ。
今日、アルカイダ系の中では最も強靱性があるソマリアのアルシャバブも、その活動の大半は地域的なものではあるが、対外的攻撃性も重視する。
アルシャバブは過去に、近隣諸国で外国人を狙ったとみられるテロを繰り返している。
アルシャバブは2007年1月に台頭して以降、ソマリア国内で政府権益やアフリカ連合(AU)の外国部隊などを狙ったテロを繰り返しているが、2010年1月にアルカイダへ忠誠を誓い、同年7月にはウガンダの首都カンパラにあるパブリックビューイング会場で大規模なテロを実行した。
当時、南アフリカのサッカーワールドカップ決勝戦が行われ多くの観覧客が集まっており、70人以上が犠牲となった。
そして、隣国ケニアではアルシャバブによるテロが断続的に発生している。
2013年9月には首都ナイロビにあるショッピングモールで計画的な襲撃テロを実行し、60人以上が死亡した。このテロでは多くの欧米人も犠牲となった。
2015年4月にもケニア東部ガリッサにある大学で襲撃テロを起こし、150人あまりが犠牲となった。
そして、2019年1月にはナイロビにある高級ホテルや外資系企業が入る複合施設でアルシャバブによる襲撃テロがあり、欧米人を含み20人以上が死亡した。
この事件後、アルシャバブは「トランプ政権がエルサレムをイスラエルの首都にすることを承認したことへの報復であり、ザワヒリ指導者からの指示に従った」との犯行声明を出した。
アルシャバブの国際テロ活動
しかし、アルシャバブの対外的攻撃性は近隣緒国に留まらない。
ニューヨークの連邦地検は2020年12月、9.11テロのように旅客機を高層ビルに激突させるテロを計画していたとして、アルシャバブのメンバーを起訴した。
この男はアルシャバブ幹部の支持によりフィリピンに入国し、フィリピン国内にある航空学校で2017年から2019年にかけて飛行訓練などを学んでいたが、同時に米国で航空テロを成功させるため、米国内の大都市にある高層ビルの情報、飛行機のコクピットに侵入する方法なども入念に調べていたという。
この男は別の容疑でフィリピンから国外追放され、その後米国に移送された。
アルシャバブは発信する声明の中で米国への敵意も表し、2020年12月の件は同組織の対外的攻撃性を強く示すものと言えよう。現在でもこうした姿勢は変わってない。
参考 : 『国際テロリズム要覧』他
文 / エックスレバン 校正 / 草の実堂編集部