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“臨場感”を追求した新たなストリーミング・クラシック・コンサートへ! 角野隼斗、髙木竜馬、大井健、紀平凱成『スタクラピアニズム』リハーサルに潜入

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左から 角野隼斗、髙木竜馬、大井健、紀平凱成

今、ノリに乗っている4人のピアノ男子たちが一堂に集う2021年の『STAND UP! CLASSIC PIANISM』(通称『スタクラピアニズム』)。このほどの緊急事態宣言発令により、予定されていた期日変更なしで、2021年5月3日(月・祝)、東京・サントリーホールからライブ・ストリーミング配信のみでの開催が決定した。本番一週間前の事態急変にもかかわらず、出演者・関係者のこのビッグ・イベントにかける情熱と勢いは止まらない。そんな気概が感じられるリハーサルの現場に潜入した。

本番前リハで、“極秘サプライズ”情報をゲット

ピアノ音楽に焦点が充てられた今年の スタンドアップクラシック ピアニズム。4月26日(月)、東京の某スタジオで、4人の出演者 紀平凱成・髙木竜馬・大井健・角野隼斗と関係者、スタッフが一堂にそろっての本番前リハーサルが行われた。

15:00から18:00までの3時間のリハ。角野隼斗・髙木竜馬の二台ピアノによる「ハンガリー舞曲第5番」を皮切りに、ソロ演奏以外の複数アーティストが共演する曲目の ‟合わせ” とステージ上での導線確認など、綿密な段取りが中心だ。

残念ながら、このほどの緊急事態宣言の発令により、最終的に無観客・ストリーミング配信のみでの決行となってしまったが、出演する4人のアーティストたちをはじめ、スタッフ一同、「配信を通して、2倍、3倍のお客様に楽しんで頂こう!」という情熱にあふれていた。

実は、この日、スタジオに赴くまで筆者も全く知らなかったのだが、リハ開始後の打ち合わせ内容に耳を傾けていると、どうやらコンサートの大フィナーレを飾る企画として、出演者4人が何か ‟極秘ミッション” を計画している……という情報をゲット。これについては、後ほど触れるので、ぜひ最後までお読みいただきたい。

ライブ・ストリーミング配信ならではの臨場感を追求

互いに「お願いします」と言葉を交わし、角野隼斗と髙木竜馬の二人による ブラームス作曲「ハンガリー舞曲第5番」 の初顔合わせが始まる。この作品は、タイトルを知らずとも、誰しもが、一度はどこかで耳にしたことがあるに違いない名曲中の名曲だ。原曲は、オーケストラ用に書かれた21曲からなる舞曲集の一曲(第5番)だが、2台4手の連弾用に編曲されたものも(時にはソロ版でも)、しばしばコンサートのアンコールピースなどとして演奏される。

角野は靴を脱ぎ捨て、終始、左足で歯切れのよいリズムを刻みながら、チャールダッシュというハンガリー独特の民族舞曲の持つ抒情性や、リズムの緩急の妙を、柔軟な身体を踊らせるように全身で表現する。冒頭から、すでにこの作品の持つ世界観に浸りきっている様子だ。

一方、髙木は、相手の出方を探るかのように冷静に、全集中力を傾けて音に注力する。密度の高い集中力から醸しだされるエネルギーが側に座っていた筆者にも伝わってきた。

一曲弾き終えると、髙木が「ちょっと速かったですかね?」と一言。

すかさず、角野が「いや、こんな感じでいいと思います。僕も、今、音を探っちゃったんで、これで慣れてくればイイと思います」と、初回からイイ感触だ。

テイク2――合わせも二回目となると、音のバランスも、息も一つにまとまってくる。その分、互いに完璧主義者の二人だけに細部にまで注意が払われる。

「全体をもう少し速くしたほうがいいのかな……」と角野。

「確かに、そのほうが断然ライブ感が出ると思います。中間部のヴィヴァーチェも、もっと、明確に速いほうがいいですよね」と、ディテールや移行部分の流れを二人で緻密に組み立ててゆく。そして、二人の間で音のバランスに話が及ぶと、スタジオにいる一同を巻き込んで当日のピアノのレイアウトにも議題が及んだ。

「ピアニズム」という名のフェスティバルにふさわしく、本番では、なんとサントリーホールに4台のピアノ――スタインウェイ、ベーゼンドルファー、カワイ、そして、1867年製エラール――が一堂にステージ上に並ぶ予定なのだ。しかも、今回は無観客ゆえに、カメラワークがより中心となるため、楽器レイアウトの選択肢も大きく広がった。「互いの音がよりよく聴こえ、互いの視野が広がるように、広い舞台を縦横無尽に活かしてより良くレイアウトしたい……」。アーティストもスタッフも、一同、真剣にディスカッションを行う。

レイアウトの件が一段落すると、テイク3。しばしのディスカッションを経て、互いの思いもさらに深まったのか、二人ともに、この曲を楽しんでいるかのような余裕が生まれてくる。弾き終えると、二人から満足気な笑みがこぼれる。音のバランスも含め、スタジオのスタッフ、ギャラリーも大絶賛だ。

「じゃあ、慣れも兼ねて、もう一回やりましょうか」

どちらともなく発せられる言葉。自然の流れで、すべてがリズムよく進行する。最後は、「どのようなアクション(ポーズ)で決めるか」の議論で盛り上がるほどの余裕を見せた。

ここで、しばしの休憩。休憩中も角野はピアノから離れず、どうやら、リハーサル後半戦で弾く?と思われる華麗なパッセージを黙々とさらい続ける。

間違いなく、かなりよく耳にするテーマ旋律だ。しかし、「角野独自のジャジーなアレンジが大々的に繰り広げられる?」、「もしかして、フィナーレのアーティスト全員で奏でると思われる作品には、ソロ即興の長尺もある?」などと、休憩中にいろいろと考えを巡らせてしまった。

4人が一体となる瞬間が醸しだす極上のスリル感、フェスにふさわしい“祝祭性”に酔う

さて、リハーサルも後半へ。角野、髙木の二人に加え、20歳の ‟若き俊英” 紀平凱成と、4人の中で一番の “お兄さん”、舞台経験も豊富な大井健も到着。

よくよく見ると、大きなスタジオに置かれた二台のフルコンサートグランド(ピアノ)の裏には、二台の電子ピアノが。当日はもちろん4台のフルコンが使用されるが、本日はスタジオの都合で二台は電子ピアノで、とのこと。

4人それぞれが、持ち場の楽器でウォーミングアップを始める。先ほど角野が奏でていた “聴いたことのあるテーマ旋律” が、四方八方から聞こえてくる。しかし、同じように思えるテーマ旋律も、各ピアニストによってスタイルやリズムが全く異なっていた。それらが、よりいっそう多重、かつ、立体的に聴こえ、その時点で見事に一つの作品になっているようにも思えた。何とも興味深く、贅沢な瞬間に立ち会っていることに高揚感を覚える。

ウォーミングアップが終わると、関係者全員がそろったところで、ついに、4人全員出演による、ある “大作品” のオリジナル・パフォーマンスがフィナーレに繰り広げられること、そして、その全貌がディレクターから伝えられた。

ということで、筆者としては、ぜひとも、作品名のヒントを差し上げたいところだが、残念ながら、フェスティバルだけに、ここは当日まで極秘のサプライズ。4人の繰り広げる壮大なミッション実現まで(要するに本番まで)、あと数日数えるほどなので、「本番でのお楽しみ」ということで、ここはお許しいただきたい。

しかし……、ちょっとだけ、お伝えすると、とにかく4人の個性とパワー、そして、スゴさが相乗効果的に響き合い、モニター前の視聴者も熱狂の渦に巻き込まれること間違えなしだ。各アーティストが紡ぎだす華麗なる技巧と4人が一体となる瞬間の極上のスリル感。曲の流れの中に隠された知的な遊び心(!)や、それを余裕綽綽と楽しむ4人の生き生きとした姿。そして、何よりもフェスティバルのフィナーレにふさわしい“祝祭性”…… 、およそ11分にわたるオリジナル・パフォーマンスは、コロナ禍の不安や憂鬱感を吹き飛ばしてくれるすべてのエネルギーに満ちあふれていた。

昨年来のコロナ禍において、ストリーミング配信に並々ならぬ情熱とノウハウを注いできたチームならではの集大成、いや、新たな境地を切り拓くべく、プロフェッショナルたちが一丸となって取り組む『STAND UP! CLASSIC PIANISM 2021』。音楽的な内容もさることながら、コロナ禍においての音楽フェスティバルの新たな世界観を生みだすべく、スタッフ・出演者が、微に入り細に入り、あらゆる状況を想定し、心血を注ぐ姿が何よりも印象的だった。

災い転じて福を成す――この言葉通り、ストリーミング配信の、より新たな時代を切り拓く “クラシック・フェス by ライブ・ストリーミング” の幕開けは、いよいよ数日後だ。

5月3日(月・祝)14:00――。ゴールデンウイークまっただ中のこの日、午後のひとときを極上のピアノ音楽とともに、あなたのお気に入りの場所で、好きなモノを手にしながら野外のミュージック・フェス感覚で気楽に、気軽に味わってみてはいかがだろうか。

取材・文=朝岡久美子 撮影=ジョニー寺坂

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