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美弥るりか「“今の私”が男性役を演じる意味を」音楽劇『GREAT PRETENDER グレートプリテンダー』インタビュー

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美弥るりか

2021年7月4日(日)~25日(日)に東京建物 Brillia HALL、8月4日(水)~8日(日)に大阪・オリックス劇場にて上演される音楽劇『GREAT PRETENDER グレートプリテンダー』。原作は、『コンフィデンスマンJP』『リーガル・ハイ』などを手掛ける脚本家・古沢良太による人気アニメ。詐欺師たちが世界を舞台に繰り広げるコン・ゲームを描く本作は、アニメーションのアカデミー賞と呼ばれるアワード「アニー賞」でBest Direction-TV/Media部門にノミネートされるなど、大きな注目と高い評価を集めている。初の舞台化となる今回、演出を河原雅彦、主演はKis-My-Ft2の宮田俊哉が務める。

本作にて、フランス人の信用詐欺師であるローラン・ティエリー役を演じる美弥るりかに、役に臨む心境を尋ねた。

――本作の出演が決まった時の感想は?

アニメを原作とする舞台化作品は、いつかは挑戦してみたかったので、お話をいただいた時はとても嬉しかったです。同時に、男性の役でお話をいただいたことにとてもびっくりしました。

美弥るりか

――アニメ原作の作品に、どんな魅力を感じられていたのでしょうか。

宝塚歌劇団時代に、少女漫画『メイちゃんの執事』を原作にした作品(『メイちゃんの執事-私(わたくし)の命に代えてお守りします-』)に出演したことがあったんですけど、すごく楽しかったんです。原作ファンの方々に「リアルな人間が演じるとこんなに違う魅力があるんだ!」と感じていただけるような作品にしたいという思いで演じていました。今作では、コンフィデンスマンという題材もとても魅力的。いち視聴者として原作を見たときに、私自身すっかり騙されてしまいました。その日のうちに最後のエピソードとなるCASE4まで見終わってしまうくらい、作品に引き込まれたんです。主人公のエダマメ(枝村真人)と同じ気分でした(笑)。

――演じるローランの人物像はどう捉えていますか?

一見クールに見える人ではあるけど、彼自身の面白さ、例えばエダマメに対して「かわいい」って思えるような人間らしさがすごく魅力的。ローランという役を演じられるのはすごく面白そうです。ただクールな人を演じるより、ギャップがある人のほうが演じていて絶対に楽しいんですよね。

――物語全体にとっても、カッコよさや美しさを与えるキャラクターとなりそうですね。

彼のスマートさや隙のなさは、私が宝塚時代に学んだ男役で得た技術を確実に使えるだろうとは思っています。男性の皆様がそのまま男性役として演じる中で、私だけ一つ段階がある。ローランは作品の中でも異色の人物ですし、性別を超えて演じる不思議な感覚が作品とマッチした状態でお客様に見ていただきたい。うまく化学反応を起こせたらいいなと思っています。

美弥るりか

――男役として活躍された宝塚歌劇団を2019年に退団されて以来、初めての男性の役。再び演じることを決断するまでに、悩まれたことは?

多少、迷いはありました。だけど作品を見て演じてみたいと思ったこと、なにより演出が河原(雅彦)さんというのが決断できた大きな要因です。以前ご一緒した作品で感じたセンスや感性、また、演出家として狙うポイントが新鮮で、純粋に好きになりました。河原さんの演出なら、もう一度男性を演じる意味があるのかもしれないと思えたんです。OGさんたちに囲まれた舞台ではない、男性の俳優の方々に交じって男性の役を演じられる環境というのも新鮮でした。

――演出の河原さんとお話する機会はありましたか?

まだほんの少ししか作品についてお話できていないんですけど、河原さんの私に対する第一声は「どうやって演じるの?」でした。私は稽古をしていく中で、皆さんとバランスが取れる男性像を河原さんと一緒に作っていくスタイルかな?と思っていたのですが、その言葉きいて、私に任されている部分が大きいなと思いました。その時に改めて私が男性を演じる意味はなんだろうと考えました。

美弥るりか

――具体的には、どのような点を模索されていたのでしょうか。

どういう表現をするのが自分にとってやりたいことかなって。技術的なことはもちろん、今までの経験から引き出すことはあるけれど、絶対に同じ気持ちでやりたくはない。私は一度、(男役を)卒業したわけで。新しい人生を生きてきて少なからず変化があったから、2年前の段階に戻るということは絶対にしたくない。「今の私が初めて挑戦しますという気持ちでやりたい」「いい意味で宝塚ではない男性像を狙っていきたい」と河原さんには言いました。そしたら「僕もそこはそう思う」と、同じ思いを持ってくださっていたんです。周りから見たらちょっとした違いかもしれないけど、私にとっては大きな差。これまで演じてきた男性と同じかもしれないけど、同じじゃない。狭いストライクゾーンかもしれないですけど、そういった男性像を狙っていきたいと思います。

――ビジュアル撮影は、最初にローランを演じる機会でもあったのでは。ぜひご感想を教えてください。

久しぶりにスーツを着て、カチッとした気分になりました。懐かしい気持ちもありながら、メイクなどで今までとの違いも感じながら。先に主演の宮田(俊哉)さんが撮影されていたんですが、ものすごく完成度が高かった。思っていた以上のエダマメがそこにいたんです。これは絶対に素敵な、皆さんの期待が高まるものが出来上がっていると確信しましたし、その後に撮影が控えていた私にとってはスイッチが入った瞬間でもありました。

美弥るりか

――宮田さんの“エダマメ像”に刺激を受けたんですね。

エダマメとして完成度の高い表現をされつつ、ナチュラルな魅力も入っているバランスが素敵でした。同時に、横に並ぶ私が作りすぎてしまったら、きっと素敵な部分をそぎ落としてしまうのではないかとも考えました。これまでは足し算をしながら男性役を演じることが多かったんですけど、今回はいい意味で引き算をしていこうと思います。ナチュラルですっきりとしていて、でもちゃんと男性に見えるビジュアル作りをしていなかければと。演じる上でも意識していきたいところです。

――本作は騙し合いの応酬となるコン・ゲームもの。「人を騙す」という感覚は理解できそうですか?

私自身は正直なタイプなんです。宝塚時代は同期からもよく「感情が顔に全部出てる!」って注意されてました(笑)。お世辞もうまく言えないし、嘘も下手。この作品に触れて「人を騙すってどういう気持ちなんだろう?」と考えるくらい、今はまだ自分自身が勝ってしまっていますね。作品を通して、騙すことが心地よく感じられるくらいになりたいですし、今までの自分にはなかった感覚を味わってみるのは楽しみです。

美弥るりか

――演劇作品としては約1年ぶりの舞台出演。現在の心境は?

久しぶりなので、難しさはあるのかもしれませんが……実はここ数か月、自分と向き合う時間を作るようにしていたんです。お芝居で表現する感情は、一生懸命に役と向き合っている時よりも、普段の生活の中でこそ生まれると思って。景色を見たり人と話したりすることで感情の引き出しが増えるのではと、隙間を作ってみました。

――自分と向き合う時間は、どのように過ごされたのでしょうか。

喋りかけるのは自分だけという環境を作りました。せっかく時間があるなら、今こそ逃げずに向き合うべきだと。今年の3~4月は人と会うのを最小限にして過ごしました。寂しくなったら友達や家族に電話するのは簡単だけど、あえてしない。そうしたら、今までに出会ったことのなかった自分に出会えたんです。これまでの私のエネルギー源は、自分自身じゃなかった。誰かのため、人のために動いて、他からエネルギーをもらって乗り越えてきていた。自分自身の良き相談相手になることが、今までは難しかったんです。「どんなことをしている時が幸せなのか?」「自分は何をやりたいのか?」ということを、やっと感じられるようになったんです。自分の心と、自分自身が直結した感覚でした。

――また新たな一歩を踏み出されたんですね。

久しぶりに私のお芝居を見てくださった方に、表現の幅が広がったと感じていただけたら嬉しいですね。

美弥るりか

取材・文=潮田茗 撮影=池上夢貢

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