水島夜景タクシー ~ 地元企業の野村タクシーだから行ける「水島コンビナート夜景ツアー」
水島といえば、やはりコンビナートが有名です。
地元のかたはもちろん、仕事や観光で訪れるかたも、そのイメージが強いのではないでしょうか。
水島コンビナートは総面積約2,500haのエリアのなかに200以上の事業所が立地しており、日本を代表するコンビナートのひとつになっています。
また、水島コンビナートの夜景は「日本夜景遺産」と「夜景100選」にも選ばれており、写真好きな人のみならず、観光客にも人気です。
そのような水島コンビナートの夜景を「もっとたくさんの人に知ってほしい、見てほしい」という想いから、おすすめのスポットを周れる水島夜景ツアーを実施している会社があります。
タクシー業務や団体向けのバス事業などで、水島地域を中心に人々の移動を支えている野村交通株式会社(以下、「野村交通」と記載)は、水島最大の特徴であるコンビナートの景色を通じて、地域活性につなげたいと考え「水島夜景タクシー」を始めました。
企画者へのインタビューを通じて、詳しく紹介します。
水島夜景タクシーとは
水島夜景タクシーは、「日本夜景遺産」と「夜景100選」にも選ばれている水島コンビナートの夜景がきれいに見える、倉敷市内数か所のスポットをタクシーで巡るプランです。
コンビナートが一望できるスポットはもちろん、工場地帯内にある公道も走行するルートもあります。これらの公道は、実際に工場の敷地のすぐそばを通っており、フェンス越しにはなりますが、複雑な構造になっている鉄製の建物やパイプ、煙突などが間近で見られます。
公共交通機関では行きにくいスポットをはじめ、野村交通が特別に通行許可を得た私道を通って案内するスポットもあります。
水島夜景タクシーツアーのラインナップ
水島夜景タクシーツアーは、所要時間とスポット数に合わせて、三つのコースが用意されています。
コンビナートエリア内の公道など、一部のエリアは写真撮影禁止です。
水島の老舗タクシー会社の挑戦
水島夜景タクシーを企画するのは、倉敷市水島に本社を構える「野村交通株式会社」です。
地元のかたがたの暮らしを支える交通手段として、長年にわたりタクシーやバスを運行する一方で、企業やイベントなどの際には貸切バス送迎事業もおこなっています。
しかし、近年では自家用車の普及やタクシー配車アプリの登場により、以前に比べて集客や売上を維持するのが難しくなっています。
このような状況を変えるため、水島の特徴を生かした企画ができないかを検討した結果、コンビナートがきれいに見えるスポットを巡る観光タクシープラン「水島夜景タクシー」が立ち上がりました。
地元の小さな会社だからこそ、お客様一人ひとりの細かなニーズにも応えられるよう努めているそうです。
水島夜景タクシーを企画した経緯について、タクシー運転手として通算15年以上のキャリアを持つ内藤雄之(ないとう ゆうじ)さんに話を聞きました。
水島夜景タクシーを企画した内藤雄之さんにインタビュー
水島夜景タクシーを企画した、内藤雄之(ないとう ゆうじ)さんに話を聞きました。
水島夜景タクシー立ち上げの経緯
──水島夜景タクシーを企画した経緯を教えてください
内藤(敬称略)──
野村交通は水島に本社を構える会社として、地域に根ざしたタクシー会社であり続けたいという想いがあります。
通常業務である日々の送迎だけでなく、地元水島のために自分たちの手で新しい取り組みを形にできないかと考えていたんです。
そこで、私を含む数名の乗務員が集まったところ「水島の象徴ともいえる水島コンビナートの美しい夜景をもっと多くの人に知ってもらえると良いよね」という話になりました。
コンビナートがきれいに見えるおすすめスポットを巡るツアー「水島夜景タクシー」を上司に提案し、実現することとなりました。
水島夜景タクシーの特徴
──どのような乗務員が案内してくれるのでしょうか
内藤──
ツアーを担当するのは、タクシー運転手として普段から水島地域を中心に倉敷市内を走っている乗務員で、そのなかでも水島夜景タクシーに関する社内研修を受けた乗務員だけです。
日々の仕事を通して水島地域を知り尽くしているので、水島夜景タクシーも時間内に効率良く周れるようにルートを研究しています。
コンビナート内にはたくさんの会社があるので、どの工場がどの会社なのか、建物の特徴なども覚えるようにしています。
──工場夜景の景色の良さは何でしょうか
内藤──
コースにもよるのですが、工場地帯のなかにある公道を通るルートの場合、フェンス越しではありますが、ライトに照らされた工場の無機質な鉄の階段や複雑なパイプラインなどを間近で見られます。
ライトの光が鉄製の建物に当たって光っている光景は、幻想的な雰囲気にもなり、とてもきれいですよ。
工場夜景はやはり、昼間見るのとはまったく違う印象を受けますね。
あと同じ場所を見る場合でも、どの方向から見るかによって印象が大きく変わりますし、季節によっても見えかたが異なります。
たとえば、展望台などの高い所からコンビナートを眺める場合、冬は木の葉が落ちて視界が広がり、空気も澄んでいるので、よりクリアに夜景を楽しめます。
また、通常では立ち入ることのできない私道を通り、おすすめの写真スポットへご案内できるのも、このツアーの特徴です。
この私道は野村交通が特別に通行許可を得ている道で、ここから見るコンビナートの景色は、このツアーでしか見られません。
──どのようなお客さんの利用が多いですか
内藤──
年齢層は幅広いです。
カップルのかたもいれば、ご家族、友達同士などさまざまです。夜景好きな人、コンビナートの景色に興味がある人、写真が好きな人など目的もさまざまですね。
ご利用人数が増えるほど、一人当たりの料金もお手頃になりますので、旅行の思い出づくりの一つとしてご利用いただいているのだと思います。
時間内に効率良く複数のスポットを周れますし、体力に自信のないかたも安心安全に楽しめると思いますね。
──このツアーを利用したお客さんから、どのような反響がありましたか
内藤──
初めて工場夜景を見る人ですと「うわー、すごい壮大だな」「煙突から出ている煙と夜空が合わさってきれい」「昼間は無機質に見えるが夜だとライトの光も合わさり幻想的にも見えますね」などの声を多くいただきます。
そのような感想をいただけるのが、何よりもうれしいです。
地元の人からすると、コンビナートは毎日の見慣れた景色ですので、感動も徐々に薄まってしまいがちですよね。
ですが、お客さんの反応を見るたび、やはり壮大できれいなんだと再認識できます。
──印象に残っているお客さんがいるそうですね
内藤──
以前、お客さんから瀬戸大橋の夕日と水島コンビナートの夜景をセットにして周りたいというご要望がありました。
関東の海のない県から来たお客さんだったのですが、景色にものすごく感動されていたのを覚えています。
あのときは、私もものすごくうれしかったですし、タクシー運転手として、本当にやりがいを感じますね。
これからの展望
──これからの展望をお聞かせください
内藤──
現在、この水島夜景タクシーを担当できるのは、社内研修を受けた一部の乗務員のみです。今後は担当できる乗務員の人数を徐々に増やしていきたいですね。
あと、水島には楽しめる観光資源がまだまだたくさんあると思います。大手ではできない、お客様の細かいニーズに対応できるようなツアーや企画などを社内でいろいろ考えていきたいです。
野村交通は水島の地元企業として、水島の活性化にも貢献できればと考えています。
──最後にひとことお願いします
内藤──
「水島夜景タクシー」というツアーの存在をもっとアピールしていきたいです。
ある程度周るスポットは決めてあるので、もちろんおまかせでも良いですし、あらかじめご希望の場所があれば柔軟にルート変更できるのも、このツアーの良さだと思っています。
公共交通機関では行きにくいところや、地元の人でもあまり行く機会がないようなところなど、「タクシー」だからこそ行ける場所を周るツアーです。
大切な思い出づくりのお手伝いとして、ぜひ水島夜景タクシーをご利用いただければと思います。
おわりに
水島コンビナートは、地元の人にとっては毎日のように目にする単なる産業景観かもしれません。
ですが改めて見ると、複雑な構造をしている工場が鉄のお城のように見え、煙突から噴き出ている煙やライトが夜空に反射して光っている景色が、まるで未来都市のようだと感じられます。
写真では伝わらない迫力と美しさがあります。
効率的に巡るなら、地元を知り尽くしたタクシーが一番の近道かもしれません。
野村交通は地域のかたの「足」を担いながらも、今後は地域貢献にもより一層取り組んでいくそうです。
ご自身はもちろん、県外からのお客さんに水島夜景タクシーをおすすめしてみてはいかがでしょうか。