横須賀市ふるさと納税 需要獲得へ「全方位攻勢」 1200品目用意、PRも強化
今年のふるさと納税の納付期限が近づく中、横須賀市が年末の「駆け込み需要」の獲得へ攻勢を強めている。今年度、利用できるポータルサイト数を増やし、取扱品も価格帯やジャンル、容量などを見直し前年度比1・5倍の1200品目超まで増やすなど「全方位」の力の入れようだ。昨年度の寄付額は過去最高の4億円を突破。今年もこれまでのところ堅調に推移しており、関係者らが成果の結実に期待を寄せている。
サーロインステーキ、プリン、天然まぐろ―。ふるさと納税のポータルサイト「ふるさとチョイス」に横須賀市の人気返礼品が並ぶ。食べ物以外にもオーシャンビューのホテル宿泊券やウインドサーフィンを保管するための艇庫使用権など、高所得者やニッチな領域も意識した「海のまち」らしい品揃えだ。市の担当者は「寄付金の獲得だけでなく、横須賀にちなんだ良いものを発信して地域の魅力を発信したい」と制度を通じた地域振興に意欲を見せる。
ふるさと納税は都市部ほど税控除額(流出額)が寄付額(流入額)を上回る傾向があり、16年度に制度を導入した同市も開始以来、大幅な”赤字”が続いている。20年には約5100万円の寄付額に対し、控除額は10倍を超える約5億2千万円にのぼった。地方交付税の交付団体である市は減収額の75%が国から補填されるが、差し引いた流出分は1億円以上にのぼり、「市の財政状況から見て看過できない額」(市財務管理課)だった。
そこで、市は事業者と連携しながら返礼品の充実に注力。新たな返礼品の設定とともに従来の品目の価格帯や容量・数量の選択肢を充実させ、今年度は昨年の779品目から1200品目超へ大幅に増やした。さらに利用するポータルサイトも既存の4から7サイトに増やし、間口を広げた。
成果は結実しつつある。過去最高の寄付額を更新した23年度に続き、今年度も寄付は堅調で、当初6億円に設定した目標を7億円に上方修正した。中長期的には2桁の寄付額を見据えており、市ふるさと納税企画担当課は「寄付者のニーズを捉えながら、魅力ある返礼品づくりに努めたい」としている。
三浦市は黒字も課題
三浦市は23年度約6千万円の流出に対し、約7億7千万円の寄付があった。制度導入以来、”黒字”を維持しており、制度による恩恵を受けている立場だ。
ただ、寄付件数が約4万5千件、寄付金額が10億円を超えた22年度をピークに減少に転じ、23年度は約7億7千万円で20、21年度実績を下回った。現在ふるさと納税事業は市観光協会に委託しているが、返礼品の主力が「ほぼまぐろ頼み」で広がりに欠いている現状があり、市の担当者は「(寄付の)先細りを懸念している。商工会議所や水産業者、農協などと連携し新たな取り組みを模索したい」と話した。