発達障害の特性?2歳からのこだわりは成長につれ強くなり…診断が出た小3の今
監修:初川久美子
臨床心理士・公認心理師/東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
お気に入りのもの
長男は、同じ場所を行ったり来たりする常同行動を2歳の頃からしています。そして、その時いつも手にお気に入りのものを持っています。
3、4歳の頃は「曲がるストロー」がお気に入りで、このストローの曲がる部分の”角度“が長男にとって重要でした。思うような角度にならないと「これは違う」とよく泣いて、自分で直せない時は私に「直してほしい」と訴えてきました。
私からすると、「え?どこが違うの?」と思うようなほんのわずかなズレも長男は気になる様子でした。 ストローはすぐに傷ついたり、凹んだり、角度が変わる素材なので、長男は何度もイライラしていました。ストローの曲がっている角度と色とメーカーさえ同じであれば替えがきいたので、「思う存分折り曲げて、気にいる角度を作っていいよ」と同じストローの100本入りを渡してみました。
すると長男は曲げたストローを手に持つだけではなく、ストローで工作もするようになりました。当時はたくさんのストローの芸術たちが床に転がっていました(曲げる角度を失敗したストローは飲む時に使いました)。こだわりに拍車をかけてしまっていたのではないかと少し心配もあったのですが、最近長男が通う児童精神科の心理士の先生に幼い頃のストローの話をしたら、「ストロー100本入り良いですね!」とおっしゃってくださり、何年も経ってから安堵しました。
ストローブームのあとは、「食べかけのお菓子の袋などを止める袋止めクリップ」が長男のお気に入りとなり、やはり角度にこだわりをみせていました。 今現在のお気に入りは長方形のブロックで、もう角度のブームは去ったようです。今は角度ではなく感触を気にしています。感触が気になりすぎて、ブロックを洗うことに夢中になっています。やりすぎてしまうことがあるため、通院しながら様子を見ています。
食に関するこだわり
長男は好きになると、とことんはまるという性格で、1番初めにそれを感じたのは2歳の頃でした。とにかくリンゴジュースが好きすぎる。リンゴジュースをすごく飲みたがる。食事の時はお茶という約束をしていて、それは本人も受け入れていたので特に深く考えてはいなかったのですが、このようなこだわりは長女にはなく、現在3歳の次男にも見られないため今振り返ると長男のリンゴジュースへのこだわりはすごかったなぁと感じます。
好きなものを何度も食べたいというのは誰にでもあることかもしれませんが、その度合いを少し超えるこだわりの強さでした。スイカも同様に、ある時期とことんはまっていました。
といっても幼い頃は、そういったこだわりくらいで、激しい偏食は感じませんでした。しかし、成長につれて長男の偏食は強くなっていき、食べられないものがみるみる増えていきました。同じ頃から感覚の過敏さも強くなっていったことも関係しているかもしれません。現在は、毎日長男の食事に頭を悩ませています。
衣類のこだわり
幼い頃の長男は、衣服のタグを嫌がりましたが、私が選んで着るのを手伝うと特に拒まず着ていました。タグを嫌がるのはよくあることかな、とあまり気にしていませんでした。
この素材、大きさ、形が嫌、長袖は着たくない、肌着、上着は着たくない……といったこだわりが出てきたのは、幼稚園の年中の頃でした。成長するにつれてどんどんこだわりが強くなり、着られる服が限られていきました。一度も袖を通さずサイズアウトした服がたくさんあります。長男と一緒に服を選んだり、気持ちを聞いたりしながら、これなら着られるという服を私もだんだん理解していきました。それでも幼稚園の頃は、家の外でも寒くても半袖だったり上着を着なかったりしました。
小学生になってからは長男自身、人の目が気になるようで家の外では長袖を着たりするようになりました。しかし、本当は窮屈だと話してくれます。家に帰るとすぐに半袖半ズボンに着替えて開放感を感じているようです。
成長するにつれて特性は強くなる
幼い頃の長男は、こだわりが強いほうかな?と感じつつも臨機応変もでき、本人の困りごともうまく解消できる範囲のもので、大きな癇癪につながったりということもほとんどなかったため、「なんとなく気になるけど、どうなんだろう……」という気持ちがずっと続きました。
ほかにも麺がすすれない、手先が不器用、エスカレーターが怖いなど細かいことで気になっていたことはありました。いろいろな特性が成長するにつれて強く表れるようになり、私も強く感じるようになりました。実際に9歳の発達検査で診断を受けた時、心理士の先生から「年齢とともに、特に家での特性はどんどん強くなっていくと思う」と言われ、今それをすごく感じています。
執筆/ねこじまいもみ
(監修:初川先生より)
長男くんのこだわりの遍歴エピソードをありがとうございます。幼い頃から、日常生活に大きな支障が生じにくいタイプのこだわりがあったのだなと感じます。お子さんによってこだわるポイントが違うので、ものによっては体調や日常生活のリズムに影響を及ぼしうるものだとなかなかに本人も周りも疲弊します。長男くんのストローは、ねこじまさんがされたように、好きなだけ(100本入り!)あげることができ、好きなだけ没頭できたのは、長男君本人にとってストレスにならなかっただろうというところでよかったなぁと思います。
成長につれ、色濃くなってゆくもの、逆に成長に伴って頭で理解することで多少(本人が)寛容に受けとめられることとどちらもあると思います。昔から変わらないこと、気づけば少しずつ変化していくこと。それぞれあると思いますが、どんな経過をたどるかは人それぞれ(本人のこだわりポイント、不安の高さや、環境側の受け入れなどによっても変わります)であるため、保護者の方はどうなっていくんだろうと不安になられることもあると思います。よき相談者や支援者とつながり、ともにその不安や成長の喜びなどを共有しながら対応されると良いと思います。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。