本西彩希帆、岩立沙穂(AKB48)、遥りさ[インタビュー]一頭の牛を巡る“食育”をテーマにした舞台で伝えたい想い「人間の文化や歴史を受け継いでいかないといけない」
舞台<明日、君を食べるよ 2023>が、12月1日(金)〜12月3日(日)に新宿村LIVEにて上演される。同作は、ミュージカル<ヘタリア>シリーズや舞台<炎炎ノ消防隊>など人気マンガやアニメ原作の舞台化、昨今では“社会問題×エンタメ”をテーマにした映画『君たちはまだ長いトンネルの中』や『縁の下のイミグレ』などの監督を務め、マルチプロデューサーで脚本/演出家のなるせゆうせいが手掛ける“食育”をテーマにした完全オリジナル作品だ。今回キャストを代表して本西彩希帆、岩立沙穂(AKB48)、遥りさに作品の内容や本番への意気込みについて話を訊いた。
撮影:河邉有実莉
編集協力:井手朋子
小学生の頃は命の大切さについて学んではいたけど、そういえば大人になって何も考えずに食べているなと思いました(遥)
――最初に台本を読んだ時、どんな印象を受けましたか?
本西:
“明日、君を食べるよ”という作品名なのでどんな内容なんだろうと思ったんですけど、プロットを読んで、家族の温かさや生き物と共存することの大切さなど、深くは知らなかった部分を知ることができて、人間として1つ成長できる作品になるんじゃないかなと思いました。
岩立:
私は食べることがすごく好きで、食に携わるお仕事をやりたいと思っていたところにこの話をいただいたので、自分にピッタリだなと思いました。“食育”という人間の文化や歴史を受け継いでいかないといけないじゃないですか。それを自分から発信できるチャンスをいただけたことが嬉しかったですね。
遥:
小学生の頃は命の大切さについて学んではいたけど、そういえば大人になって何も考えずに食べているなと思いました。この作品の“食育”というテーマを除いてもすごく素敵な話なんですよ。歌やキャラクターがボケる部分も意外とあって、子どもたちにも楽しく観てもらえる作品になっていると思います。
――みなさんが演じるのは、それぞれ実年齢よりひと回り以上年下の役で、しかも本西さんが演じる主人公・サナギ役は12歳の少年ですよね?
本西:
そうなんですよ。少年のような役は初めてなので最初はどうしようかなって思ったんですけど、10歳になる甥っ子がいるのでちょうどいいなと思いながら甥っ子を観察しています(笑)。子どもって素直に感情を出すじゃないですか。でも私が演じるサナギはそうじゃない部分もあるので、その差を出していけるような役作りをしていきたいなと。台本を読むだけで、可愛らしい、愛らしいって思える役なので、その気持ちを大切にしつつ、ちょっとずつ寄り添っていけたらなと思っています。
岩立:
私は本西さん演じるサナギのお姉ちゃん・ミゾレ役なんですけど、どちらかというと落ち着いてしっかりしているタイプなので、そこまで幼さは意識していません。ただ、ビジュアルがツインテールなんですよ。あんな高い位置でのツインテール、私がするの!?って(笑)。私はAKB48の中では年齢が上で、若い子がやっていて可愛いな〜と思っている髪型なので、そこはけっこうドキドキしていて。本番では貴重な姿を見せられるかなと思います。
遥:
私はサナギのクラスメイトの元気な3人組のうちの1人(ヤマビコ役)なんですけど、3人組の中のカカシ役の渡辺優空ちゃんが16歳で。若い優空ちゃんのテンションに負けないようにいきたいなって思っています(笑)。本物の若い子は声の感じとかもフレッシュですから、見た目だけ何とか16歳に追い付けるようにスキンケアとメイクで頑張ります(笑)。
――稽古はもう始まっていますか?(取材は11月上旬に実施)
岩立:
3日前に顔合わせと読み合わせをやって、途中まで動きを付けたので今日はその続きからです。
――読み合わせなどをやってみていかがでしたか?
遥:
めっちゃ緊張しました。3人組で行動することが多い役なので、テンポを崩さずちゃんとしなきゃって、ドキドキしながらウマく掛け合えるかなとか思っていました。
本西:
私は台詞量が多くて大変ですね。それと私はウシのすけという名前の牛との会話が多くて、3、4行しゃべったら“モ〜”って言われて、また3、4行しゃべったら“モ〜”って言われたり(笑)。牛役の方もいるので、まだどんな“モ〜”が来るのかわからないですけど、牛の“モ〜”を大事に受け取っていれば、自然とこちらの感情も乗って長台詞も入っていくかなと。
遥:
牛との掛け合いはなかなか観たことがないシーンですし、とにかく台詞の量がすごいんですよ。でも、お姉ちゃん(岩立)も台詞量多いよね。
岩立:
そうそう。親同士の再婚をきっかけにサナギと出会って姉弟になるんですけど、最初はまだサナギのことをよく知らないからサナギの観察日記をつけることにするんですね。劇中では、そのお姉ちゃん目線で書いた観察日記が全体の状況説明になるんです。私が台詞として観客のみなさんにお伝えするんですけど、その状況説明をしていないシーンがないぐらいで。何も起こってないところから説明して観客のみなさんにわかっていただかないといけないので、そこは課題かなと。でも全体的にはすごく賑やかな作品になりそうだなと思います。
――小学生から高校生まで、毎公演無料の招待席も用意されているそうですね。
遥:
そうなんですよ。でも小学生で“食育”って言われてもなかなか難しいですよね。
岩立:
観劇に慣れていない子も多そうですもんね。でもお姉ちゃんが食育についてサナギに話す時は、小学生の弟に向かって説明しているので、わかりやすい、伝わりやすい台詞が多いかなと感じます。それを信じて、“サナギに伝える=お客さんに伝える”と思いながら演じようと心がけています。
照明によって舞台上が家の中になったり牛小屋になったり、その変化を楽しんでいただけたら(岩立)
――ところで、歌のシーンはみなさんそれぞれあるんですか?
遥:
いや、おふたり(本西、岩立)がメインで。
本西:
私は5曲中4曲を1人で歌うんですけど、実は演技より歌の方が苦戦していて。綺麗な声で歌う少女役や大人っぽく歌う花魁役を演じたことはあるんですけど、そもそも私の声が少年っぽいかって言われるとそうじゃないですし、“歌と台詞だとけっこう差が出ちゃうね”って言われたんです。今までの役は、メロディの中で感情を作って伝える感じで音程を大事にしていたんですけど、“今回はしゃべり口調にして”ってオーダーをいただいて。これまでと違う方向性なので、喉を痛めてしまったり。
――音域はどのぐらいなんですか?
本西:
高いところは高いんですよ。しかもリズムが難しくて、4拍子の中に3拍子が来るんです。だから今は、ひたすら3拍子をカウントしながら電車に乗ったり歩いたり、お風呂に入ったり。今はそうやって何とかリズムを入れようとしているんですけど、とにかく3拍子が苦手過ぎて(笑)。でも、これができるようになったらまた1つ上に行けると信じて、自分の課題としてやっています。お芝居の方はみなさんとするので、そこは安心しているんですけど歌は1人なので……。お姉ちゃんは綺麗な声で歌う感じだよね。
岩立:
そうそう。でも、私も普段歌っているアイドルの歌とは違うので苦戦していますね。
――では、同作の見どころについても教えていただけますか?
本西:
出てくるキャラクーがみんなそれぞれ可愛くて愛らしいので、観客のみなさんに絶対愛していただけるだろうなって。そこはまず魅力の1つかなと思います。
遥:
脚本と演出を担当しているなるせゆうせいさんが、“牛にも1つひとつ考えがあって発すモ〜があったり、動きがあるから”っておっしゃっていて、個人的にはそこがどうなるんだろうって楽しみです。お客さんが気づくかどうかわからないですけど、牛の“モ〜”や動き1つで受け取れるものがあると思うと見方が変わりますから。
遥:
そんな物語の中心的存在の牛ですけど、ウシのすけ役の山口渓さんは獅子舞みたいに被り物をして1度も顔が出ないんですよ。
本西:
そうそう。でも、照明と音とセットが入れば本物の牛みたいに見えるからって(笑)。
岩立:
今回の作品は照明などで場面を変える部分が多くて、それでけっこういろいろなものを表現するんですよ。なので、そこも見どころかなって思います。照明によって舞台上が家の中になったり牛小屋になったり、その変化を楽しんでいただけたらと。
――最終的には、可愛がっていたウシのすけを食べてしまう訳ですが、悲しいシーンにはならないんですか?
本西:
そこは役の立場によって違うかなと思います。お姉ちゃんの立場だったら……。
岩立:
多分、“悲しい”ではないんですよね。それが日常の中の1つっていうのを昔から受け入れて過ごしているので、サナギがつらい気持ちもわかるんですけど、悲しんではいない。でもサナギはまた全然違うよね。
本西:
“ウシのすけなら食べられなくて、ほかの動物なら食べられるの?”って言われるシーンがあって、その時に“そうじゃないな”って我に返るんですけど、そこまではきっとつらいし、しんどいと思うんです。でもそこで1つ壁を乗り越えて、そこからまた気持ちが変わるのかなって。悲しいだけじゃないというか。観ている人が、サナギに対してどう思うかというのはいろいろあると思うんですけど、ウシのすけを食べるということに対して悲しい場面になるかと言われたら、きっとそうじゃないのかなと。
遥:
私はサナギの心情に寄り添うことが多いので、第三者からしたら悲しいのかなと思いますし、これは役を離れて大人としての気持ちですけど、やっぱり情はありますから。ウシのすけはよくなくて、ほかの牛はいいっていうのはやっぱりあるって、葛藤しながらサナギを見ています。
稽古を重ねていく中で落としどころを見つけていかなきゃと思います(本西)
――みなさんにとって作品の結末は腑に落ちるものでしたか?
遥:
現実を受け入れなきゃいけないんだろうなっていう感じですね。
本西:
ウシのすけを食べることを受け入れて“いただきます”って言うことで、サナギもウシのすけも報われるというか。そう思うと納得できるのかなって。ただ、演じていると、1回じゃ腑に落ちないんだろうなと思うので、稽古を重ねていく中で落としどころを見つけていかなきゃと思います。
岩立:
あとは、サナギは最初“いただきます”も言えないような子だったのに、そこから成長していく姿がしっかり描かれているんですよね。
本西:
そうそう。子どもが成長する姿を見られるっていうのは、もう1つの見どころかもしれません。
――これまで3回上演されている作品ですが、過去の公演とはまた違う感じになりそうですか?(2014年、2016年、2019年に上演)
本西:
そこまで違いはないと思うんですけど、演じる人が違うのでそこがまた新しく見えるところかなと。
――では最後に、上演を楽しみにしているファンへメッセージをお願いします。
本西:
新鮮さでいうと、少年役は初めてなのでそこは楽しんでいただけるかなと。それから、食育について考えたことがない方もいると思うんですけど、私たちが伝えたいメッセージをウマく伝えられたら、きっとこの先もお客さんたちの記憶に残るんじゃないでしょうか。なので、自分の役割をまっとうして、気負わず頑張っていけたらと思っています。
岩立:
私は昨年7月に出演した以来の舞台で、最近お芝居をしていなかったので、ファンの方からしたら今年は1本も舞台に出ないのかなって思っていたと思うんです。そんなタイミングでの今年最初で最後の作品なので、そこはすごく楽しみにしてくださっていると思います。劇中では歌も歌いますけど、普段の歌って踊ってというアイドルのステージとはまた歌い方が違うので、いつもの自分とは違う姿を確実にお見せできるかなと。普段は“沙穂〜!”って応援していただいていますけど、今回はミゾレちゃんを愛していただけるように、“ミゾレちゃん可愛かった、よかった”って言ってもらえるようにできたらと思っています。
――ツインテールも見どころですからね! 遥さんはいかがですか?
遥:
私は毎回演じる役が真逆っていうぐらい違っていて、1つ前にやっていた役が、親がいない施設育ちで、親戚に借金を肩代わりさせられてさらに男の人に暴力受けているっていう設定だったんですね。その時は役的に笑顔なんて全然見せられなくて、でも今回は元気で楽しい役なので、“りさちゃん楽しそうにやってるな”って思ってもらえると思います(笑)。ハッピーな私しかいないので、“お芝居楽しい!”って思っている私をぜひ観に来てください!
舞台<明日、君を食べるよ 2023>
脚本・演出:なるせゆうせい
企画:オフィス・インベーダー
主催:明日、君を食べるよ 2023 製作委員会
公演期間:2023年12月1日(金)〜12月3日(日)
劇場:新宿村 LIVE(〒169-0074 東京都新宿区北新宿 2-1-2 新宿村CENTRAL地下2階)
■公演スケジュール
2023年12月1日(金)18:00
2023年12月2日(土)13:00/17:00
2023年12月3日(日)13:00/17:00
全5公演 ※開場時間は開演の30分前予定
■あらすじ
都会っ子でへそまがりな少年サナギは、母親の再婚を機に田舎へ引っ越してくるが慣れない田舎暮らしに閉塞感を感じていた。しばらくして再婚相手の連れ子のミゾレに連れられて1頭の牛の世話を始める。うしのすけと名付けられた牛の世話に、最初は嫌がっていたサナギだが徐々に心を開いていく。そのうしのすけはやがて食べられてしまう食育用の牛だとは知らずに……。やがて、少年は“いただきます”の本当の意味を知る。
1人の少年と1頭の牛が織りなす命の物語。
■出演キャスト
本西彩希帆、岩立沙穂(AKB48) 遥りさ、上之薗理奈、渡辺優空、岡内美喜子(キャラメルボックス)、森山栄治、三浦克也、山口渓
【チケット情報】
■料金
プレミアム席(非売品特典付き):¥9000 非売品特典:電子サイン入りキャストブロマイド(キャスト選択可)
一般席:¥7000
■チケット発売情報
・子供招待席
受付期間:10月14日(土)12:00〜
※先着順につき招待枠がなくなり次第終了
・一般販売(先着)
販売期間:2023年11月3日(金・祝)10:00〜
そのほかチケット詳細は、舞台<明日、君を食べるよ 2023>公式サイトにて