感覚欲求とその他のつまづきへのアプローチ方法!マズローの欲求5段階説とは?【発達が気になる子の感覚統合遊び】
理論4:6つのつまずきに対するアプローチ④
○理論解説のポイント!
過敏は慣れさせるより安心させる感覚探求型は感覚を堪能させる運動企画・両側統合・抗重力運動・スモールステップの支援
【知識・学習】感覚欲求のつまずきにアプローチ
感覚欲求は、生理的欲求と同次元のものであると解説しました。
人間の欲求は5段階層に分かれて下から積みあげられていくようなイメージの「マズローの欲求 5 段階説」が有名です。すべての欲求の土台といわれるのが「生理的欲求」であるため、それと同じくらい大切なのが「感覚欲求」であるといえます。生理的欲求とは、人間が生きていくための基本的かつ本能的な欲求のことです。
たとえば、食欲や睡眠欲、排泄欲などが生理的欲求です。この欲求が満たされると次の段階の欲求を満たしたいと考えます。つまり、子どもの発達の源となるのが生理的欲求と感覚欲求といえることになります。
次の段階は、「安全欲求」です。安全欲求とは、心身の安全が確保された生活を送りたいという欲求のことです。つまり、自分の周りの世界に安心してアクセスして、周りの世界を知ろうとする欲求です。識別を育む段階となります。
3段階目は「社会的欲求」です。集団に所属したい、仲間を得たいという欲求で、友だちと遊びたい、うまく交流したいというものです。まさに、乳幼児期の大切な発達課題です。しかし、こうした段階の源が「感覚欲求」を満たしてはじめて成立するということを、私たちは忘れてはいけないといえます。
【マズローの欲求5段階説】
自己実現欲求承認欲求社会的欲求(友だちと遊びたい、うまく交流したいという欲求)安全欲求(周りの世界を知ろうとする欲求)生理的欲求(人間が生きていくための基本的かつ本能的な欲求)
子どもの機嫌がよくなり、情緒を安定させ困った行動を軽減するのも、周りの世界に能動的にアプローチするのも、友だちとうまくかかわる方法を学ぶのも、この感覚欲求に配慮することが欠かせません。
ですから、感覚の足りない子はしっかりと感覚を満たして堪能させることが、感覚が過敏な子は苦手な感覚を避けながら安心できる感覚環境を用意することが必要なのです。
【知識・学習】その他の感覚のつまずき
私たちの体には、多くの種類の筋肉があります。なかでも、姿勢の維持・立つ・歩くといった動きの基礎となる筋肉を「抗重力筋」といいます。乳児期は、首がすわってから、立って歩くまで、この抗重力筋を使う姿勢や運動の連続といえます。
たとえば、興味のあるものを見ようと首をもちあげる、手を伸ばす、寝返る、座位をとる、四つ這いで移動する、つかまり立ちをする、歩くといった、抗重力筋を使った抗重力姿勢と運動を駆使して発達していきます。この運動をいかに日常生活の中で能動的に行なうか、そうした動きを引き出す環境や遊びを用意するかが重要です。
また、毎日のちょっとしたつながり遊びも重要です。生後3~4か月頃になると首がすわります。起きている間はうつぶせで遊ぶ時間も多くなるでしょう。抗重力筋の発達を促し、両手で体を支えることで肩甲帯の安定を図ります。
さらに寝返りがうてるようになったら、寝返りで自由に移動できるようにしましょう。その後、ずりばい(腹ばい)ができるようになります。
腹ばいを通して、体幹の筋肉が発達し、四つばい姿勢がとれるようになり、ハイハイ移動もできるようになります。これらのすべての運動を通して、立位、そして歩行に必要な筋力や感覚を身につけていきます。早い遅いというよりも、これらの発達段階をひとつひとつ、じっくりと経験し、獲得していくことが大切です。
幼児期はゲーム性をもたせた遊びで社会性も育む
子どもにとってゲーム遊びや集団遊びは、遊びを通して人とかかわる楽しさやルールを学ぶことができる機会です。感覚統合遊びでは、感覚統合のつまずきにアプローチするとともに、コミュニケーションや遊びのルールの必要性を実感させていきます。また、友達の動きを見てよい影響を受けたり、楽しい気分をさらに強くしたりする効果も期待できます。
本書では少人数での遊び、ルールが比較的単純な遊びを中心に紹介しています。無理のない人数構成で、大人に見守られながら安心して体を動かすことを配慮した内容となっています。
しかし、リスクとしては、勝ち負けがあるゲームは情動を不安定にしたり、ルール理解がむずかしくて、楽しめずみんなとやるのが嫌になったりする可能性もあります。子どもの発達の状態により、ゲーム性が強い遊びは選択を慎重にする必要があります。
砂場遊び
本書の第2章以降で紹介している遊びには入っていませんが、砂場遊びは感覚統合・社会性の育みの遊びとしておすすめです。
感触を楽しめる子は砂を触っているだけも十分ですね。水を入れれば、どろんこ遊びもはじまり
ます。泥団子をつくるのは力加減の調整になりますし、発展した遊びであるお店やさんごっこになることもあります。固くてつるつるの泥団子づくりは、集中力も養います。
砂を集めてのお山づくりも友だちとかかわりをもてる遊びです。山をつくるときには、シャベルを使ってたくさんの砂を運びます。このように、砂場遊びは、固有感覚の調整や、感覚の入力が保証されています。
山をしっかり固める、トンネルを掘るのも全身を使います。体の動かし方、力加減の調整が必要です。山が崩れないように気をつけて、素手でどんどん掘るのも楽しめます。トンネルがつながったら、トンネルの中で友だちと握手ができます。体をひねって、バランスをとりながら、見えないところを探って相手の手を探しましょう。スコップがあれば川をつくって水を流します。靴を脱いで川の中に入り、水の流れを足で感じとれば、さらに感覚を堪能できます。
【出典】『発達が気になる子の感覚統合遊び』著:藤原里美