発達障害の子どもの「その子らしさ」に寄り添い歩んでいく。小児科医・新美妙美先生が選ぶ3冊【発達ナビ・あの人の本棚から】
小児科医・新美 妙美先生が選ぶ3冊は?
小児科医として、発達・精神分野を中心に長野県内の病院でご活躍されている新美妙美先生。そんな新美先生が「保護者の方へ」「支援に携わる方へ」「著者ご自身の作品」と、3つの観点から厳選した書籍をご紹介。
発達障害、心身症の診療や不登校支援を専門とする新美先生が推薦される3冊は、発達特性のあるお子さんや保護者の方に寄り添うものとなっています。
新美妙美先生さんが選ぶ!保護者の方におすすめの1冊:『学校の中の発達障害「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち』(本田秀夫 著)
「学校に馴染めるだろうか」「友だち関係は大丈夫?」発達障害のあるお子さんを育てる保護者の方にとって、学校生活は尽きない悩みの種かもしれません。
30年以上の臨床経験を持つ発達障害の専門家である著者、本田秀夫先生が、子どもの困りごとが「二次障害」につながらないよう、学校との折り合いのつけ方を丁寧に解説。学校・学級選び、友だち関係、勉強、登校しぶりなど、さまざまな側面から保護者と先生ができることを紹介しています。
「多数派」に合わせる学校で、お子さんが自分らしく楽しく学ぶために、私たちに何ができるのか。この本はその答えに寄り添う一冊となっています。
発達障害のある子どもが「普通」に学校生活を送ることは、実はとても難易度の高いことだと気付かせてくれる1冊です。本書を読むと、子どもを学校に無理に合わせようとするのではなく、そもそも今の学校の在り方そのものが少数派にとって厳しいのだという視点が持てるようになります。とは言え学校自体を変えるのは簡単ではないかもしれません。でも、学校や集団に合わないのは、「うちの子が悪いわけじゃないんだ」、「じゃぁどうやって学校と付き合っていくといいかな?」と考えるきっかけになったらいいなと思います。
支援者の方におすすめの1冊:『高機能自閉症・アスペルガー症候群 その子らしさを生かす子育て改訂版』(吉田友子 著)
発達障害のあるお子さんを支援する中で、「もっと良い関わり方は?」と模索していませんか?『機能自閉症・アスペルガー症候群 その子らしさを生かす子育て改訂版』は、支援に携わるすべての方におすすめの一冊です。
「この一冊でOK」と保護者からも大好評の育児ガイドを全面改訂した本書は、第一線の専門家である吉田友子先生が、長年の臨床経験に基づいた確かな知識と実践的なアイデアを凝縮。
「安定した毎日の暮らしのためのQ&A」や「コミュニケーションの意欲の引き出し方」といった具体的な悩みに対して分かりやすく回答をしています。自閉スペクトラム症の基本から、コミュニケーション、社会性、日々の暮らしのサポートまで、幅広く書かれた本書は専門的な内容を解説しており、お子さんの「その子らしさ」を尊重しながら成長をサポートするためのヒントが満載。ぜひ支援者の方に読んでいただきたい一冊です。
この本は、私が発達障害について学び始めた頃、バイブルのように読み込んだ一冊です。吉田友子先生は、ASD(自閉スペクトラム症)の子どもたちの感じ方や個性を否定せず、ありのままを大切にする視点を一貫して示してくださっています。
特性は苦労にもなるけれど、強みにもなるとして、無理やり定型に合わせるのではなく、その子が感じるそのままを大事に、その子らしく育っていくことを支える姿勢が明確に示されています。支援者として、子どもをどう理解し、どう関わるかを考えるうえで、何度でも立ち返りたくなる本です。すべての支援にかかわる方に、ぜひ手に取っていただきたいと思います。
発達ナビユーザーへおすすめの自著1冊:『かがやけなないろキッズ ~発達障害すくすくサポートアドバイス』(新美妙美 著)
発達障害のあるお子さんに対して「この子の個性をどう伸ばそう?」「日々の困りごとにどう対応しよう?」と悩むことはありませんか?小児科医・新美妙美先生による本書は、そんな保護者や支援者の皆さんのためのヒントが満載です。
「ASD(自閉スペクトラム症)」や「ADHD(注意欠如多動症)」にみられる特性による行動の理由を丁寧に解説し、お子さんの魅力を引き出す関わり方や生活に役立つ工夫を、年代別・シーン別に具体的に紹介しています。見通しを立てることで安心感につながる「視覚支援グッズ」の作り方もイラストで解説されており、すぐに実践に活かせるところもうれしいポイントです。
お子さん一人ひとりの「なないろ」の個性を尊重し、成長をサポートするためのヒントが満載の本書は、日々の支援に迷ったときに、きっと心強い指針となるはずです。
わが子が発達障害と診断されて戸惑っている親御さんに、「発達障害のある子の子育てって、めっちゃ楽しいよ、いとおしいよ、全然安心して育てていけるよ!」という思いを込めて書きました。
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)の特性のある子どもたちのユニークな魅力、独特な行動や発言の背景の解説と、日常生活に使える視覚支援によるコミュニケーションの工夫、学校との関係づくりなどを詰め込みました。子どもの個性が輝く日々を、安心して歩んでいけるよう応援します。
まとめ
新美妙美先生が選んだ3冊は、発達障害のあるお子さんを持つ保護者、支援者、そして当事者の方々にとって、心に響くメッセージと具体的なヒントを与えてくれます。
学校生活での困難を子どもの問題として捉えるのではなく、学校のあり方そのものを見つめ直す視点、発達障害のある子どもたちへの支援において子どもたちの感じ方や個性に寄り添うことへの重要性、そして特性のある子どもの子育てが「楽しく、いとおしいもの」であるという温かいメッセージと共に、具体的な支援方法を通じて、親子が安心して日々を歩んでいけるようにと心強い応援を感じるこれらの書籍は発達障害のある子どもたちが自分らしく輝くための羅針盤となるでしょう。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。