だらだらしているわけではない?体の内側に感じる2つの「固有感覚」と「前庭覚」とは!?【発達が気になる子の感覚統合遊び】
理論2:体の内側に感じる2つの感覚と新たな視点①
○理論解説のポイント!
固有感覚と前庭覚を知り保育に役立てる鈍感と敏感、感情欲求を知ると多様性に寛容になれる原始系と識別系を知ることで支援の幅が広がる
【理論解説】体の内側に感じる感覚:固有感覚
「固有感覚」は筋肉や関節い感じる感覚で、普段は無意識に使っています。この固有感覚には、自分の体の動きや位置を教えてくれる、自分のボディイメージがわかるという役割があります。私たちは動く際に筋肉を引っ張ったり、緩めたりしています。これを「張力」と表現します。関節にもセンサーがあり、関節の角度や動きを感知し私たちに知らせています。
たとえば、目をつぶって「右手と左手の親指をくっつけて」みましょう。すると、見ていなくても親指はくっつくのではないでしょうか。これは、指がここにあると感じているということです。見なくても感じられる……これが固有感覚です。私たちは無意識に、「肩やひじ、手首、それに付随する筋肉の伸び具合を感じて」いるのです。
また、固有感覚の大切な役割として、重さも感じています。たとえば、水の入ったペットボトルをもってみましょう。
ペットボトルの重さや冷たさは感覚で感じますが、重さは指の関節や手首、腕の筋肉、ひじ、肩くらいまで感じていると思います。この重さを感じているのも固有感覚です。
ここがうまく働かないと重いものでも、そーっと置くことができず、力強く置いたりします。「丁寧に置いてね」といわれても感じ方の問題なので、言葉で伝えてもわかりません。これが不器用に見えたり、ものの扱いが乱暴に見えたりしているのです。体の動きがぎこちない、がさつで乱暴に見える、人やものによくぶつかるなどを問題視する前に、固有感覚の視点から考えましょう。
【理論解説】体の内側に感じる感覚:前庭覚
「 前庭覚」は揺れや回転を感じる、体のバランスをとる感覚です。耳の奥、内耳にある耳石器と三半規管という箇所で感じています。それと合わせて視覚も使っています。私たちは目で見て、自分の体がまっすぐかどうかを確認しているのです。目を開けた状態で片足立ちをしてみると、年長さん以上だと 10秒は姿勢を保っていられる子が多くいます。これは前庭覚を使って、バランスをとる力が発達しているからです。
しかし、目をつぶると途端にまっすぐに立つのがむずかしくなります。視覚は使えなくても三半規管と耳石器を使ってまっすぐと姿勢を保とうとはするのですが、うまくいきません。これが前庭覚につまずきをもつ子の「困り感」となります。
バランスをとろうとする動きは、重力に対して姿勢を保とうとする調整回路にもつながっています。ただ座っているだけでも、私たちは常に重力を感じています。
前庭覚が働きにくいと、姿勢を保とうとする調整回路につながらず、姿勢が崩れたり、机に突っ伏したりしてしまうことがあります。そうなると、立っているより、ゴロゴロしながら遊んでいる状況になるのです。
「やる気がない」「だらしない」姿に見えますが、そうならざる得ない理由があるということです。気持ちや意欲の問題ではないということを理解しないと、子どもに対して不必要な叱責をしてしまうでしょう。
五感以外の2つの感覚
①固有感覚
自分の体の動きや位置を教えてくれる感覚重さを感じる感覚
うまく使えないと…
体の動きがぎこちない人やものによくぶつかるがさつで乱暴にみえる など
②前庭覚
揺れや回転を感じる感覚体のバランスをとる感覚
うまく使えないと…
まっすぐ立てない座った姿勢を保てない(だらだらして見える) など
【出典】『発達が気になる子の感覚統合遊び』著:藤原里美