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余命2年と宣告され、妻と一緒に向かったのは「人生会議」 自分の最期に大切なものを、3つ選ぶなら

Sitakke

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がんが見つかり、医師から余命2年ほどと宣告された81才の男性。
妻と一緒に、札幌の病院で開かれたイベントに参加しました。

ACP人生会議)を実践するためです。

ACP(エーシーピー)とは、アドバンス・ケア・プランニングの略で、将来の医療やケアについて、患者本人とその家族、近しい人、医療やケアチームが繰り返し話し合いをして、本人による意思決定を支援する取り組みのことです。
その取り組みの内容から、「人生会議」とも呼ばれています。

超高齢社会を迎えた日本において、本人の希望に沿った医療やケアを受けることができる患者は、想像しているより多くありません。

どこで最期を迎えたいですか?

内閣府のアンケート結果によると、「最期を迎えたい場所」について、約55%の人が「自宅」と回答しています。

平成24年度 高齢者の健康に関する意識調査(内閣府)

しかし、実際には、81%の人が病院で最期を迎えている実態が浮き彫りになっています。(厚生労働省より)

医療経済研究機構:要介護高齢者の終末期における医療に関する研究報告書より

こうした現実に、患者本人が理想の最期を遂げるために、家族や医療関係者などがどのように寄り添っていくかが、これまで以上に大きな課題となっています。

「ACP(人生会議)」の本来の目的は、尊厳ある生き方の実現。

いわば「終活ノート」の一部のようなものですが、患者本人の想いを家族や医療関係者と共有しておくことが重要なポイントです。

患者自身が思い描く“最期”は、時間が経つにつれて変化していくことがあるので、繰り返し「ACP」をしておくことも大切です。

もしも、患者が自ら意思決定できない事態に陥ったとしても、「ACP」を通して情報を共有しておくことで、「本人ならこうしたいと思う」と、家族が治療やケアを決定できる大きな情報源となっています。

「ACP」を実践しておくことで、患者のみならず、その家族にとっても後悔のない選択ができるのです。## 「ACP」をどのように実践?現場はいま

 
札幌市の「手稲家庭医療クリニック」では、ACPを知ってもらおうと、スタッフや患者などを対象に、これまでに10回以上のイベントを開いてきました。

この日は、外来の患者20人ほどが参加し、もしもの時に備えて、自分の最期について考えていました。

もしバナゲーム」と呼ばれるカードゲームを使って、「余命半年。あなたはどう過ごしたい?」という状況をみんなで一緒に考えていきます。

カードの中には
・家族と一緒に過ごす
・痛みがない
・呼吸が苦しくない
・家族の負担にならない
・機械につながれていない
など、さまざまな言葉が書かれています。

参加者たちは、カードに書かれた言葉を見ながら、自分の「最期」に大切だと思うカードを取捨選択し、最終的に3枚のカードを手元に残しました。

83才の参加者は、「今回初めて参加させてもらって、自分の気持ちが明確になって整理できた。カードは『信頼する主治医がいる』とか『自分の思うようにいきたい』というカードを選びました」と話していました。

4か月前に前立腺がんが見つかり、医師から余命2年ほどと宣告された81才の男性が、妻と一緒に参加していました。

「人生の流れの中で、この時期に差し掛かったんだなと。周りが一番受け入れやすい方法で最期を迎えられればいいかな。妻が困らないようにできればそれでいい。満足のいく人生だったので、これ以上は望みません」

ACPについて、「医師からは治療方法が選択できると言われたが、自分で選択する難しさがある。もう一度頭の中を整理するのに役に立った」「医療従事者の方々が日々忙しい中で、ここまで年寄りのことを考えてくれてありがたい。本来は自分で考えなければならないことを、医療従事者がリードしてくれるのは大変ありがたい」と話していました。

なぜACPは大切か…「患者だけではない」医療現場も重要視

手稲家庭医療クリニックの松本美奈看護師は、「ACP」を患者本人や家族に任せっきりにするのではなく、医療機関がサポートすることで、より充実した最期を一緒に目指していきたいと話します。

手稲家庭医療クリニック 松本美奈看護師

「ACPは、治療とか延命とかを“する”“しない”だけではなく、その人らしく過ごすにはどうしたらいいかというのを繰り返し考えるプロセスです。病名や予後にはこだわらず、どうサポートすればいいのかを、患者本人だけでなく家族にも考えてもらいたいし、我々スタッフにも理解してもらって、『いい人生だったな』と思ってもらえるように、一緒にチームでやっている感覚です」

100%は難しいが、「ACP」をできるだけ多くの患者に届けていきたいと語る松本さん。
現場のスタッフたちにも「ACP」の重要性が徐々に浸透し、好循環が生まれ始めている段階だといいます。

「病院の中で患者に話を聞こうと思っても、なかなかタイミングが難しい。治療に向かっているのに、最期のことを考えるのも難しい。そうではない早い時期に一度考えるだけでも全然違うし、万が一のときに困らないと思うんです。だからスタッフにもこだわって話をし続けています」

患者らと「ACP」を実践するスタッフ

「なかなか浸透していない部分もありますが、患者の普段の生活や会話を通して、“尊厳ある最期の生き方”に寄り添っていきたいです」

あなたや家族の望む最期とは…。「ACP」を実践し、最期まで自分らしい生き方を見つめ直してみてはいかがでしょうか。

文:HBCデジタル編集部 長沢祐
北海道歌志内市出身。民間金融機関営業マンを経て2018年にHBC入社。記者時代は道警サブキャップや司法キャップ、経済キャップを経験し、これまでに新型コロナウイルスによる旭川の医療崩壊や乗客乗員2 0人以上が死亡した知床観光船沈没事故などを取材。現在、子育て奮闘中。趣味はラグビー観戦、サウナ、スキー。

編集:Sitakke編集部IKU

※掲載の内容は記事執筆時(2025年8月)の情報に基づきます

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