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入学式で号泣、服を脱ぎ逃走!集団が苦手で小1で不登校寸前に。関わり方の工夫とは?

LITALICO発達ナビ

入学式で号泣、服を脱ぎ逃走!集団が苦手で小1で不登校寸前に。関わり方の工夫とは?

監修:森 しほ

ゆうメンタル・スキンクリニック理事

幼い時から人見知りが激しく、抱っこすることもできなかった孫

わが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族全員が個性いろいろで、発達に特性があるタイプです。私の孫デンデンは、幼い時から人見知りが激しくて祖母の私にもなかなか懐かず、抱っこすることができませんでした。まるでフィギュアスケートの技のイナバウアーみたいに反り返ってしまうからです。

2歳になった頃のお正月に家族全員で集まってレストランで食事会をしました。その時デンデンは、レストランに入れず、およそ1時間ほど屋外で泣き叫んでいました。初めての場所や両親以外の人には緊張してしまい、その場に入れなかったり、うまく挨拶ができなかったりするのです。

その後、私と長女ニャーイ(デンデンの母)は「たぶん場面緘黙の傾向があるのでは」と話し合いました。それぞれで場面緘黙でのこまりに対しての工夫を調べたり、発達支援施設へ相談に行き、意見交換をしてきました。

担任の機転と声かけで、クラス全体で温かく迎える雰囲気があって回復へ

昨年の春のことです。いよいよ孫デンデンの小学校入学式の日がやってきました。昔からお世話になっている発達支援施設に相談して、家族で考えた工夫を実行しました。事前に親子だけで、入学式の会場となる小学校の体育館を下見して、雰囲気に慣れるようにしました。入学式当日は、コロナ禍の後ということもあり、保護者同伴は2名までに制限するということが決まり、祖母の私は参列できませんでした。

工夫の成果が出て、落ちついて入学式に参加できているといいなと思いつつ、ニャーイからの報告を待ちました。ところが、その日の午後、ニャーイから送られてきた動画を見て、ものすごく驚きました。スーツ姿のデンデンが泣き叫びながら、ネクタイを引きちぎるように外し、ワイシャツを脱ぎ捨て、逃げ回っていたのです。ニャーイは脱ぎ捨てられたネクタイやシャツを拾いながら逃げるデンデンを追いかけています。

正直なところ、こんなパニック状態の時に、よく冷静に動画撮影ができたものだと逆に感心しました。後日、ニャーイにそのときの気持ちを確認したら「動画があると発達支援施設に相談しやすいだろう」と考えたそうです。

以下は、長女ニャーイの感想です。

ニャーイ:パニックになっているデンデンを落ちつかせるのは、何をやっても効果なしね。もう待つしかない感じ。デンデンの担任が、ベテランの優しい女性の先生だったので、とてもラッキーだったわ。

先生は、入学式の前にも建物の影から出てくることができないデンデンに寄り添ってくれて「式に出ても、出なくてもどっちでもいいんだよ、どうする?」という声かけをしてくれた。式の最中は私たち親子だけ会場の体育館裏でデンデンが落ち着くのを根気よく待つことに。

ふと思いついて、デンデンを連れて誰もいない教室を下見してみたの。デンデンの席とロッカーを確認して「ほら、知ってるお友だちがまわりの席だよ」って安心するように声かけした。それから教室を出て、また体育館の影に戻ったけど、結局、入学式の最後までデンデンは参加できず。入学式だけでなく、その後の記念撮影も背を向け嫌がってクラスの子たちと一緒に並べなかったわ。

記念撮影が終わって教室に戻った生徒と担任の先生のところに行って「私たち、帰りますね」って声かけしたら、先生の対応がとてもよかった。先生は「さっき記念写真撮ったんだけど、デンデンも一緒にまた撮ろう!」って誘ってくれたの。先生の声かけの内容は聞き取れなかったけれど、初対面なのにデンデンはなぜか納得して記念撮影に加われた。クラスの子どもたちも不平を言わずにもう一度、記念写真のやり直しに協力してくれたのよ。デンデンはせっかく正装してきたのに、ネクタイ、ワイシャツを脱いで、スーツの下はTシャツのみ。でも、先生の親切な対応に恵まれて、本当によかった!

入学式の後も不登校気味でなかなか学校に行けず、大変。やっと行けた学校では、担任の先生の対応と同級生に恵まれたおかげで温かく迎え入れてもらった感じ。クラスのお友だちも「デンデ~ン」って声かけしながら、たくさん来てくれて、デンデンは教室に入ることができたの。おかげで今では毎日、学校に通えている。

最近では、デンデンが「明日、学校楽しみ!」っていうの。先生とお友だちには本当に感謝しているわ。

大勢の前に立つと固まってしまうデンデンに、先の見通しとご褒美を提案

デンデンは、家以外の場所では固まって動けなくなってしまうことがあります。小さい頃から通っている保育園でさえも、おゆうぎ会では、最初から最後まで毎回、固まりっぱなしでした。4才の時、やっと舞台でおゆうぎができましたが、動作をひとつ間違えたことで固まり、泣いてしまいました。しかも一時的ではなくて、おゆうぎの間中ずっと固まって退場もできません。先生に退場を促された瞬間、さらに大泣きしてしまいました。

そんなデンデンですが、小学1年生の12月に行われた音楽発表会では、クラスでなかよしのお友だちがたくさん励ましてくれて、ついにみんなと一緒に演奏を最後までやり通すことができました。

以下、長女ニャーイの感想です。

ニャーイ:今回は念入りに準備したわ。本番の前の週に、自宅でイメージトレーニングをしたの。発表会のプログラムの最初から最後まで、しっかり説明し、楽しい催しであることを伝えたり、2歳上の兄フクロッシュの時の動画を見せたりした。フクロッシュからも、説明と励ましがあって、その時は、前向きな気持ちになれたようで「明日はがんばる」と言っていたのだけど……。

当日の朝になって過去の嫌な体験を思い出してしまったようでグズりだし、「たくさん人がいるとイヤ」とか「体育館はイヤ」とか言いだしたの。

無理強いは良くないと考えたので「じゃあ、演奏会は休もうか」といったんは受け入れ「でも、ママは行かなければならないので、デンデンはお家で留守番する?」と聞いてみたの。するとデンデンは「留守番はイヤだ。一緒に行く!でも舞台には立たない!」と主張したので、「でも、クラスのみんなはステージで演奏するのに、デンデンは客席でいいの?」と質問してみた。

デンデンは「後ろで演奏するのは目立つからイヤだ」って。クラスで背が高いほうのデンデンは一番後ろの列で演奏することになっていたのだけれど、本人は目立ってしまうと感じているみたい。兄フクロッシュも「だいじょうぶだよ」と励ました。でも本人は「失敗したら、どうしよう」と不安がっていたわ。

「じゃあ発表会が終わったら、帰りにデンデンの大好きなハンバーガーを食べに行こうね」とご褒美を用意。頭ごなしに命令しない、本人の気持ちをしっかり受け止めて否定しない。発達支援施設やラクマお父さん、ワッシーナお母さんのアドバイスをしっかり思い出しながら対応したわ。

現在、学校での授業中の様子は?

ニャーイは、三者面談のときに、デンデンの授業中の緘黙傾向について担任の先生に確認してみたそうです。

ニャーイ:先生によると「授業中にデンデンを当てると、目は合うけど、話しかけても返事がない。見た感じは、まるでやる気がないように見える。でも、本人のノートを確認したら、きちんと答えを書いているし、答えは合っている」って。どうやら先生から当てられたら固まってしまうみたい。

先生は「(授業の中で)できることか、できないことかは本人に決めさせています」とのこと。デンデンの気持ちや心の状態を尊重してくれる先生で、とても感謝しているわ。ついこの間、3学期の最後の授業参観の時にデンデンは生まれて初めて手を上げて発言した。もう涙が出るくらい感激した!

成長と共に場面緘黙の傾向も落ち着いてきたデンデン。今は環境に恵まれ、学校にも楽しんで通っていますが、新しい学年になったら先生やクラスメイトも変化があるので、状況に合わせて工夫も新しくしなければと思いを巡らせています。

執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ

(監修:森先生より)
大変な中でも動画を撮る冷静さを失わなかったニャーイさんの対応は素晴らしいですね。専門家への相談がスムーズになったことと思います。

さて、実は進級や入学のシーズンには、お子さんの場面寡黙に関してのご相談はとても多いのです。「場面寡黙」という言葉から、「黙り込んでしまう」という印象を受けるかもしれませんが、実際は特定の場面や状況で意思疎通が困難になったり、パニックになる状態を指します。新しい環境や知らない人との交流に緊張、不安やストレスを感じることが原因となります。対策としては、まずはお子さんの不安な気持ちに寄り添って、プレッシャーをかけないようにしましょう。お子さんがリラックスして、自分の気持ちを表現できるようにします。とはいえ、入学式などでは保護者自身も緊張したり慌ててしまっていて、冷静な対処が難しいことがほとんど。先生や支援機関を頼って相談することがとても大切です。情報を共有して、一緒に対処法を考えていくことです。

必要な支援を受けながら、お子さんが自分自身を表現する方法を見つけることができるように、安心できる環境を整えていくと場面寡黙の症状も徐々におさまってくるでしょう。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

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