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京都で愛される「大垣書店」へ!“半径2キロ”の店づくりが観光客を惹きつける理由

京都観光Naviぷらす

京都を拠点に全国約50店舗をもつことで知られる大垣書店。本にまつわるイベントの企画や自社メディアの発行、ギャラリーやカフェの運営、京都ならではの商品の販売など多彩な手法で本と人をつないでいます。その取り組みが全国から京都を訪れる人にも注目を集めるなか、書店ならではの視点で京都観光について語ってもらいました。


まちに暮らす人に合わせた品ぞろえが観光客にも「刺さる」


(大垣書店 新文化ビルヂング店/撮影:AKIRA MATSUMOTO)

東京麻布台ヒルズをはじめ、全国に約50店舗を展開する大垣書店。京都・北大路の地で戦前の1942(昭和17)年に創業し、京都を代表する書店の一つとしても知られています。とくに京都市内の各店舗では、このまちに関連するガイドブックや、歴史本、エッセイ、写真集といった「京都本」を幅広く取り揃えるコーナーが設けられ、京都を観光する際の案内役を探すのにもひと役買ってくれる書店です。


情報のデジタル化が進み、書店業界・出版業界に急激な変革の波が訪れたことで、多くの書店が閉業する近年。そのなかで生き残り、さらに30年にわたって右肩上がりに売上を伸ばし続けている秘訣を取締役の大垣守可(もりよし)さんに尋ねたところ「半径2キロの店づくりでしょうか」という答えが返ってきました。


(大垣書店 取締役の大垣守可(もりよし)さん/撮影:AKIRA MATSUMOTO)

本部が書籍をまとめて仕入れて各書店へ配るという効率的な方法が全国的に増えるなか、同社では店舗ごとに売れ筋を分析し、周辺に暮らす1~2万人の動向を見て店舗スタッフの采配でラインナップを決めているといいます。


「これはもともと、まちの本屋ならどこでもやっていたこと。10万人単位の広い商圏から人を呼ぶのではなく、地元の人に1~2週間に1回、繰り返し来てもらえる店をつくるという発想です」と守可さん。半径2キロに暮らす人々に親しまれる店舗に育てるには、地域特性を少しずつ見極めながら2~3年を要するのだとか。


さらに、京都本についていえば、その購買層の多くは地元に住む京都の人。西陣に関する本なら西陣エリアにある店舗で一番売れる、といった傾向があるそうです。「地元に新しい店ができていないか」「珍しい発見はないか」といった情報を探すことが目的で、京都人の「地元愛」や「新しいもん好き」な気質が反映されているのかもしれないと分析します。


そうした地元のリアルな要望から店舗に地域情報が集められ、それが各店の個性になっているのが大垣書店の大きな特徴であり、強みの一つ。「大垣書店に行けば、その地を深掘りできる書籍がそろっている」ともいえ、有名な観光地だけではなく地域の文化や暮らしを知りたいという人に対して、より深い京都体験や新しい発見につながるヒントを店舗の書棚が提案してくれているわけです。


守可さんも、「京都を何度も訪れているリピーターには、やがて“行きつけ”の店や場所が出来てくるもの。地域の書店を通して、自分にとってベストな京都のルートをつくる、という観光の楽しみ方もしてもらえるのではないか」と提案します。


まず、地元の人に愛されること。それが全国から人とにぎわいを呼ぶ


(堀川新文化ビルヂング/撮影:AKIRA MATSUMOTO)

地域密着型の店舗づくりの例として、守可さんが中心となって立ち上げ、全国的に注目を集めているのが「堀川新文化ビルヂング」です。京都府の「堀川団地活性化事業」の一環として、空き店舗が目立つエリアににぎわいを取り戻すことを目的に企画されました。


ここでも守可さんは「より多くの人を呼ぶための集客の仕掛けづくりではなく、まずは地元に愛される場をつくること」をテーマとしたといいます。誕生した書店には、地元の人がデイリーに利用できるカフェやレンタルオフィス、ギャラリーが設けられているほか、ものづくりのまち・西陣に近いことにちなんで本の印刷工房を併設しています。


店舗が完成すると1年もしないうちに周辺の商店街の空き店舗が埋まり、人が増え、地域が少しずつ元気を取り戻しはじめました。さらには、地域が面白くなり、新しい情報や文化が生まれはじめたことで、興味をもった人たちが地元だけでなく、遠方からも訪れるようになっています。


ギャラリーで日本を代表するテキスタイルデザイナーの展示を行った際には、印刷工房で図録の制作も手掛けました。こうした「ものづくり」に高い価値を見出そうとする気風や、それを楽しむ文化が身近な暮らしのなかに深く根付いているのが京都のまちであり、そんな「京都の日常」を体験してみたいという人が全国各地から訪れるのも、堀川新文化ビルヂングの大きな特徴の一つになっています。


また、2019年に京都随一の繁華街・四条烏丸にオープンした京都経済センター。その顔となっている1階の大垣書店京都本店は、観光客も多く訪れる店舗です。ここの人気コーナー「万 YOROZ」は京都ならではの品を集めており、一見すると観光客向けにも思えますが、実は地元の人の利用もかなり多いのだとか。


(大垣書店京都本店/画像提供:大垣書店)

いわゆる観光客に向けた京都らしいお土産ばかりを並べるのではなく、「京都の人が面白いと思う、地元でつくられているもの」をコンセプトに集めること。ただ、京都人にあまり知られていない隠れた名品を探すというのは思った以上に難しく、人の伝手をたどり、何十軒も直接訪ねて交渉したといいます。


(藤原食品の京納豆/撮影:AKIRA MATSUMOTO)

「象徴的な例では、オープン時から置いてもらっている藤原食品さんの納豆でしょうか」と守可さん。一般的な納豆に比べると少し割高なものの、長年、京都・鞍馬口で愛されてきた味で、地元書店のセレクトということもあって1日に3回転するほど売れ、スーパーマーケットよりも数量が出ている日もあるほどです。ほかにもここに出品したことで知名度が上がったケースもあり、いまでは地域の事業者から売り込みを受けるほど人気のコーナーになっています。


地元の人に親しまれる場所や愛されるものは、京都の人たちの飾らない日常を感じさせ、それがひいては観光で訪れる人々を強く引き付ける魅力にもなっているようです。


(書店の中に突然現れる冷蔵ケース/撮影:AKIRA MATSUMOTO)

本や書店がコンシェルジュとなって、まちとの出合いを生む


(「KYOTO MAGAZINE」コーナー/撮影:AKIRA MATSUMOTO)

「地元向け」であることが、結果として観光客にも“刺さる”-。そういった現象を象徴するもう一つの同社の取り組みが、雑誌「KYOTO MAGAZINE」の発刊です。書店が書籍や雑誌を制作するケースは全国にもいくつか例はありますが、この雑誌は京都に特化した情報を扱い、暮らしや人に寄り添った内容になっています。


(撮影:AKIRA MATSUMOTO)

とくに特集を中心として地元の人しか知らないようなディープな話題が取り上げられており、「第5号で“33人の京都さんぽ”という特集を組んだ際には、京都で暮らし、まちを知る人からお気に入りを紹介してもらいました。この人の感覚が好きだ、と思えば、その人が行きつけている場所にも興味が湧きます。そういった案内人となってくれる方とこれからもつながっていきたい」と守可さん。


(「33人の京都さんぽ」特集)

京都に根を張る書店が、そのネットワークを駆使して京都の人々と向き合い、まちを深掘りしていく記事には、ステレオタイプに語られる京都のイメージからは一線を画しているものも多く見られます。それは単なる地元タウン誌を超えて、まだ知られていない京都の魅力を知りたいという全国の人々に届くツールにもなっています。


また、手元に置いておきたい、飾りたいと思えるデザインにすることも重視しており、内容もまちのアーカイブとして残しておけるような賞味期限の長い本をつくることを意識しているとか。


「現在は雑誌=情報を買うという時代ではなくなり、書店の店頭では、なんとなくかっこいいから買う、という購買行動も見られます。だからこそ、自分たちがつくる本については紙質からこだわり、多少高くても一冊持っておきたいと思ってもらえるものをつくっていきたい」と想いを語ります。


(表紙から京都で暮らす良さが伝わってきます 画像提供:大垣書店)

「KYOTO MAGAZINE」はもちろんのこと、近年ではファッション誌やカルチャー誌が京都特集を組むことも増え、それらも店頭では平積みにして並べられ大きく取り上げています。「いろんな切り口で京都が紹介されることが、京都の楽しみ方や観光の幅を広げることにつながっているように感じます」と守可さん。


まちの日常や人々の間に溶け込んでいる本当の暮らしの文化に興味をもつ人が、大垣書店の取り組みに呼応し、店を訪れ、雑誌を購入しているという「書店と観光」のもう一つの関係性。その根底にあるのは、京都のまちがもつ多面的な面白さであり、代表的な観光地を見るだけではない旅のスタイルを求める人に応えることができるのもまた、京都のまちの魅力でもあります。


目的の本しか買わないネット販売とは異なり、書店が選んで並べられた本棚からは思いもよらないような偶然の出合いがあるものです。観光においても、検索上位や人気ランキングからだけでは見えてこない、「自分が好きな京都」を探すことがまちを楽しむコツであり、そのコンシェルジュとなってくれるのが、書籍であり、書店なのかもしれません。


(撮影:AKIRA MATSUMOTO)

大垣書店では、今後も本と人が出合う場の創出に力を入れていく計画で、2026年に予定されている京都市男女共同参画センター ウィングス京都の大幅リニューアルではその中核施設を手掛ける予定です。今後の取り組みにも期待が高まります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000151502.html


◇大垣書店
https://www.books-ogaki.co.jp/


雑誌「KYOTO MAGAZINE」最新号は2026年8月28日発刊。
タウン誌リニューアル号『KYOTO MAGAZINE』刊行のお知らせ - 大垣書店
https://www.books-ogaki.co.jp/kyotomagazine


記事を書いた人:上田 ふみこ
ライター・プランナー。京都を中心に、取材・執筆、企画・編集、PRなどを手掛け、まちをかけずりまわって30年。まちかどの語り部の方々からうかがう生きた歴史を、なんとか残せないかと日々奮闘中。

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