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【不登校】 “オンラインフリースクール”で家から出られない子が変わる 最初の「半歩」を踏み出すための活用法とは[教育ジャーナリストがルポ]

コクリコ

【不登校】 “オンラインフリースクール”で家から出られない子が変わる 最初の「半歩」を踏み出すための活用法とは[教育ジャーナリストがルポ]

フリースクールの“いま”を徹底ルポした『フリースクールという選択』(講談社+α新書)を5月11日(2026年)に刊行した教育ジャーナリストのおおたとしまささん。新書では、フリースクールを、小規模な独立型のフリースクール、大手通信制高校系列のフリースクール、オンラインフリースクール、オルタナティブスクールという4つのタイプに分けて、それぞれの特徴や選び方の観点・注意点を説明しています。

この記事ではおおたさんに、オンラインフリースクールについて書かれた「第3章 オンラインで踏み出す最初の半歩」の要点をハイライト版として教わります。

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【記事のポイント】
●便利だが、魔法の杖ではない。できて日が浅く、どこも試行錯誤の最中。

●「世界を広げる」「出席認定をもらう」「まず心を回復する」など守備範囲が違う。

●カメラオフ・マイクオフでも参加できる気軽さと引き換えに適切な介入の難しさ。

●保護者ケアの充実度も、オンラインフリースクールを選ぶ重要な観点になる。

●心のエネルギーが回復したら、次はリアルへ。中継点として活用する発想も。

少しずつ外とつながる最初の半歩

リアルなフリースクールの敷居がまだ高く見える子どもたちには、その敷居をまたぐ手前のスモールステップとしての意味合いが、オンラインフリースクールにはあります。

また、学校に行かないどころか家からも出なくなってしまったわが子が、たとえオンラインであったとしても家族以外の誰かとつながるのを見て保護者がほっとできたり、そんな状況にあるわが子をずっと孤独に支えてきた保護者がオンラインフリースクールのスタッフから支えてもらえたりすることにも大きな意味があると思います。

オンラインに居場所を見つけてしまったらずっと部屋にひきこもってしまうのではないかという懸念も世間一般にはあるようです。

しかし実際には、オンラインであったとしても家族以外の誰かとかかわるようになって、自分の存在を認めてもらって、心のエネルギーが回復して、次への一歩を踏み出せるようになる子がたくさんいます。

最初はカメラオフ、マイクオフで、チャットだけでやりとりしていた子が、そのうちマイクをオンにして話し出したり、カメラもオンにしてスタッフと面談したり、集団授業に交じったりするようになるというように、少しずつ変化は起こります。

現在多くのオンラインフリースクールがメタバース校舎(ネット上の仮想校舎)をベースにしています。

初期の「ドラクエ」の画面のような二次元の校舎の中で子どもたちやスタッフのアバター(分身)が行き来しながら、オンライン教材で教科学習をしたり、映像授業で新しい単元(学習テーマ)について学んだり、探究的な学習のライブ授業をみんなで受けたり、マンツーマンの個別面談を行ったりしています。

オンラインフリースクール「夢中カレッジ」のメタバース校舎(上)。顔を出さずともチャットだけでやり取りができる(下)。  画像提供:夢中カレッジ

オンラインフリースクールでよく利用されているオンライン教材は、「イーボード」「すらら」「デキタス」あたりです。いずれも、子どもがひとりでも学習を進められるように設計された自立型オンライン教材です。「スタディサプリ」はオンラインで視聴できる映像授業教材です。

オンライン教材もメタバース校舎構築のシステムも選択肢はある程度限られていますから、どのオンラインフリースクールも構造的には似ています。一方で得意とする守備範囲にはグラデーションがあります。

(1)リアルではなかなか出会えないひとやことやものと出会って積極的に世界を広げていくことを打ち出しているもの

(2)オンライン教材を利用した学習をして出席認定をもらうことを打ち出しているもの

(3)外に出られない子どもが家庭以外の場所とひとと少しでもつながり、その間に親がサポートを受け心を落ち着かせることを意図したもの

それらが区別されず、ひとまとめにオンラインフリースクールと呼ばれてしまっていることが、適切なマッチングや実態理解を難しくしています。

拙著『フリースクールという選択』の「第3章 オンラインで踏み出す最初の半歩」で紹介されている6つのオンラインフリースクールのなかから一例として、ここでは「夢中カレッジ」を紹介します。

オンライン校舎でも少人数制クラスにこだわるワケ

代表の辻田寛明(ひろあき)さんは学生時代に東南アジアで貧困問題のフィールドワークを行っていました。

貧困の状態にあるはずの海外の子たちに触れれば触れるほど、逆説的に、日本の子どもたちが抱える生きづらさを痛感するようになり、ビジネスを通して社会課題を解決するボーダレス・ジャパンという会社に新卒で入社します。

2020年、同僚社員の子どもが不登校になったのをきっかけに事業化したのが、一対一のオンライン家庭教師サービス「夢中教室」でした。勉強を教えない家庭教師です。

子どもの「好き」を自己表現できて、「このひとだったらなんでも話せる」と思えるような大人とのつながりが、オンラインでもいいからつくれないかと考えました。

するとこんどは、夢中教室で出会った子どもたちから「友だちがほしいけど身の回りにはいない」「もっと家から一日を通した学びをしてみたい」という声が聞こえてきました。そこで、「ひとりの大人と密な関係のなかで学ぶ」ことに加え「仲間とつながり学び合う」機会もオンラインでつくっていきたいという思いが生まれます。

現在事業リーダーをしている松岡達也さんとの出会いもありました。もともと公立・私立の小学校で14年間教員をしており、学校の中だけで本当に子どもたちに必要な学びを届けられるのかという疑問を抱えていました。ふたりの想いが、2024年春に夢中カレッジとして結実します。

午前、小4から中学生を対象としたコースは2つに分かれます。ぐんぐん学びコースは友達とつながりながらプロジェクト学習に取り組み、一部教科学習サポートがあるコースです。じっくりサポートコースは先生とのマンツーマン対話を重視するコースです。1クラスは12人までの少人数制とし、それぞれのクラスに2人の先生がつきます。

低学年コースは1クラス6人までです。午後は「カレッジひろば」というオンラインの遊び場が開放されます。子どもたちはそこでいっしょにゲームをしたり、イラストを描いたりしています。

カメラで顔を見せながらのオンライン授業。  画像提供:夢中カレッジ

東京学芸大学と連携し、SEL(セル/社会情動的スキル学習)の研究にも取り組んでいます。「知識ではなく『自己肯定感』や『つながる力』を育てることこそ、私たちの学びの核」と辻田さんは語ります。

「冬=安心」「春=自己理解」「夏=探究」「秋=発信」と段階を区切る季節モデルという独自のアセスメント手法も確立し、いまその子がどの段階にいるのかを見立てながらかかわり方を考えます。各段階を上とか下と序列化するのではなく、それぞれの子どもに訪れる季節のようなものだととらえます。

保護者には随時LINEでの報告を行っているほか、3ヵ月に1度は個人面談を行い、保護者座談会なども開催されます。

「春」や「夏」の段階の子どもたち向けのリアルイベントも定期的に行います。

「リアルで会うとぜんぜん違う。画面越しでは声も小さくて恥ずかしがっていた子が、リアルで会うとすごく元気で、友だちと走り回っていたりする。そういう姿を見ると、やっぱりリアルの機会も大事だなと感じます」と辻田さん。

いま構想中なのが、水族館でのリアルフリースクールです。普段オンラインで交流している魚好きの子どもたちが平日昼間にリアルな水族館に集まってともに学ぶというものです。

これができるなら、科学館や博物館などでも同様のことが可能になります。不登校でない子が来てくれてもいい。であるならばもうそれは、不登校の受け皿としてのフリースクールではありません。辻田さんはパラレル登校という概念を提唱します。

夢中カレッジでは学校復帰を促すようなことはいっさいしていませんが、結果的には約7割がなんらかの形やペースで学校に通うようになるようです。リアルなフリースクールとの併用も1〜2割います。

AIに一覧表をつくってもらうのもおすすめ

オンラインフリースクールは無数にあります。しかもオンラインですから、居住地域に関係なく、すべてが選択肢になり得ます。

選択肢が多すぎて困ってしまうという場合には、オンラインフリースクールを内容や料金で比較する一覧表をAIにつくってもらうのもおすすめです。オンラインフリースクールはどこもホームページが充実しているので、それが可能です。

そのうえで、ほとんどのオンラインフリースクールが体験期間を設けていますから、実際にいろいろなサービスを体験してみましょう。もちろん自宅から体験できます。

ちなみに、多くのオンラインフリースクールが、出席認定の対象になっている一方で、自治体のフリースクール等利用料の助成金の対象になったケースはまだ少ないようです。

なお、拙著『フリースクールという選択』の「第3章 オンラインで踏み出す最初の半歩」ではほかにも、オンライン習い事教室から派生した「SOZOW(ソウゾウ)スクール小中等部」、体験マッチングプラットフォームから派生した「aini(アイニー) school小中等部」、大手学習塾系の「クラスジャパン小中学園」と「シンガク」、完全個別オンラインフリースクールの「SUPER SCHOOL」を詳しく紹介しています。

ただし、拙著掲載のフリースクールは、多様性優先で選んだ結果であり、優良なサービスだけを選りすぐっているわけではありません。おおたとしまさが太鼓判を押しているわけではなく、あくまでも事例集としてご覧ください。

この本は、フリースクールという選択を検討しはじめた家族とともに、フリースクールという世界がどんなところなのかをざーっとひととおり見て回るガイドツアーのような本です。ただしガイドブックではありません。

各フリースクール運営者には、PRポイントよりも葛藤を詳しく聞いています。ある意味ネガティブな部分です。そこにフリースクールの現実があるし、それを語ってくれることこそが、フリースクールという選択を検討する家族の不安な気持ちに対する誠意だと思うからです。

上記6つのオンラインフリースクールの「中のひと」たちも、正直に、本音を語ってくれました。オンラインフリースクールというしくみが便利な半面、決して魔法の杖ではないことも伝わると思います。

取材・文/おおたとしまさ

おおたとしまさPROFILE
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートから独立後、教育に関してさまざまな観点から取材を行い、著書は90冊以上。どこの組織にも属さない在野の視点で現代の教育への考察・提言を続けている。メディアへの出演や講演も多数。

“フリースクール探し”で最初に読む本、登場! 『フリースクールという選択』(著:おおたとしまさ/講談社+α新書)

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