腕が壊死して3日で切断…致死率30%の「人食いバクテリア」恐るべき症状進行の速さを経験者が語る
全国に広がっている致死率の高い「劇症型溶連菌」。
「ただごとじゃないな…死んじゃうのかな…」
感染者の女性と、父を亡くした元ファイターズの選手が、いまの思いを語ってくれました。
札幌市に住む、植田万喜子さんは3年前、命にかかわる感染症を患いました。
「どんどん本当に腕がどうしたのかなっていうくらい腫れてきて…何が起きているんだろうっていう感じ」
植田さんは、病気の進行を食い止めるため、右腕を切断。一命は取り留めたものの、手術を機に生活は一変しました。
感染したのは“劇症型溶血性レンサ球菌感染症”…いわゆる【劇症型溶連菌】です。
“人食いバクテリア”とも呼ばれ、発症すると、手足の壊死や多臓器不全を引き起こすなど急速に症状が進み、致死率は30パーセントとされています。
札幌市保健所感染症担当部に話を聞くと、「菌が侵入した場合、爆発的に増えて急激な短期間で症状が進む」といわれているといいます。
過去最悪のペースで増え続けている”人食いバクテリア”【劇症型溶連菌】について調べました。
連載「じぶんごとニュース」
今年に入り、全国の【劇症型溶連菌】の感染者数は急増しています。
わずか半年で、過去最多だった2023年の1年間の感染者数を上回り、北海道内でも49人の感染が報告されています。
【劇症型溶連菌】とは、どのような感染症なのでしょうか?
札幌市保健所で教えてもらいました。
感染症担当部長の前木孝洋さんによると、子どもがのどの痛みや熱で症状を出す「溶連菌」と同じ菌として分類されるそう。
軽い症状で終わることがほとんどですが、たまに重い症状を示して、命に関わってしまうということです。
“溶連菌”が劇症化するメカニズムは、いまだ解明されておらず、感染経路は、手足などの傷口や粘膜、または飛沫感染が考えられます。
発症すると、発熱やけん怠感など、インフルエンザと似た症状が出るほか、手足に非常に強い痛みや腫れが現れます。
やがて、手足が壊死して、最悪の場合は死に至ります。驚くべきは、症状が進行する速さです。
右腕切断までわずか3日
3年前に【劇症型溶連菌】に感染した植田万喜子さんはその怖さを、身をもって体験しました。
「普通に熱が出て寒気がして、食欲ないけれど、ちょっと食べようかなと思ったら、右手が痛くて…赤くなっていたんですが、どんどん広がって」
「痛くて息ができないというか、どんどん色が変わって、どんどん上がってくるんですよ。多分、肩のあたりまで来てたかな。もう元には戻らない気がしていました」
体調に異変を感じてから右腕を切断するまでは、わずか3日の出来事でした。
担当医師には「植田さんの命は残り24時間もなかった」と言われたといいます。
「医師の判断も難しいようで、私は6件も病院を回ってようやく正しい診断が出た。異常を感じたら医師に『劇症型溶連菌ではないか?』と確認して、一人でも私のように腕をなくすことがないようにしてほしい」
植田さんはそう話してくれました。
変わらず会った、わずか1週間後に父を亡くす
しかし、不幸にして、命を落としてしまうケースも少なくありません。
北海道日本ハムファイターズで長年スカウトを務め、ダルビッシュ有や大谷翔平の入団に尽力した今成泰章さんは、2年前「劇症型溶連菌」に感染し、帰らぬ人となりました。
次男で元ファイターズの選手、今成亮太さんは、当時を振り返ります。
「発症の1週間ぐらい前に一緒にゴルフの打ちっぱなしに行っているんですよ…普通に元気よく。体調悪いとか、そういことも一切聞かず…」
最初の症状は、嘔吐と下痢でした。
「1日病院に行くのを我慢していたらしいんですね。病院に着いたときには、意識もちゃんとありながら、でもちょっと体調が悪いみたいな」
しかし、入院が決まってからは、みるみる体調が悪化。亡くなる寸前には手首、足首まで壊死が進行していました。
わずか一週間ほどで父親を亡くすことになった今成さんには、心残りがありました。
「1日でも早く診察していたら、助かる命だったのかな…ちょっとでもおかしかったら病院に行ってもらいたい」
“人食いバクテリア”とも呼ばれる【劇症型溶連菌】に感染した場合、早い段階で治療を受けることができるかが、生死を分けることになります。
今年は感染者数が急激に増えています。全国の感染者数の推移です。
2023年は年間900人を超えて過去最多となりましたが、今年は6月28日時点で1000人以上の感染が報告されています。北海道内では49人の感染が判っています。
東京都の感染推移をみると、50歳以降の感染者数が多く、年齢が高いほど、感染リスクも高くなる傾向が読み取れます。
新型コロナが落ち着いた今、感染症に対する意識を、改めて見つめなおす必要がありそうです。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年6月28日)の情報に基づきます。