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京都大学と住友林業、世界初の木造人工衛星「LignoSat」完成。JAXAへ引き渡し宇宙での運用へ

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国立大学法人京都大学と住友林業株式会社が、2020年4月より取り組んできた「宇宙木材プロジェクト(LignoStella Project)」で、約4年かけて開発した木造人工衛星(LignoSat)が完成し、2024年6月4日にJAXAへ引き渡す

完成した木造人工衛星は1辺が100mm角のキューブサットと呼ばれる超小型の衛星で、NASA/JAXAの数々の厳しい安全審査を無事通過。世界で初めて宇宙での木材活用が公式に認められた。

宇宙空間での運用に向け今年9月に、米国フロリダ州のケネディ宇宙センター(Kennedy Space Center)から打ち上げ予定のスペースX社(Space Exploration Technologies Corp.)のロケットに搭載し国際宇宙ステーション(ISS)に移送する。ISS到着から約1カ月後に「きぼう」日本実験棟より宇宙空間に放出される予定。

今後は木造人工衛星から送信されるデータ解析を通じ、木の可能性を追求し木材利用の拡大を目指するとしている。

審査合格までの経緯と意義

今回の木造人工衛星の開発は2022年3月~12月までISSの船外プラットフォームで実施した木材宇宙曝露実験をはじめ、地上での振動試験、熱真空試験、アウトガス試験など様々な物性試験の結果得られたデータに基づいて行っている。木材宇宙曝露実験では温度変化が大きく強力な宇宙線が飛び交う過酷な宇宙の環境下でも、割れ、反り、剥がれ等はなく木材の優れた強度や耐久性を確認しているという。

その他の地上試験でも木材は宇宙飛行士の健康や安全、精密機器や光学部品などに悪影響を及ぼさないことが明らかになった。数々の実験、試験を経てNASA/JAXAの審査に合格したことで、宇宙空間での木材活用の安全性が証明された。

木造人工衛星がNASA/JAXAの安全審査に合格し、宇宙空間での木材利用が認められたことは宇宙業界にとっても木材業界にとっても非常に貴重な1歩だという。持続可能な資源である木の可能性を広げ、更なる木材利用を推進する上で大きな意義があるとしている。

宇宙空間ではスペースデブリ(宇宙ゴミ)とならないよう、役目を終えた小型の人工衛星は大気圏に再突入させ、燃焼させることが国際ルールとなっている。従来の金属製の衛星では、燃焼の際にアルミナ粒子と呼ばれる微粒子を発生し、地球の気候や通信に悪影響を及ぼす可能性があるという。

木材は大気圏再突入で燃え尽きるため、将来的に木造の人工衛星が増えることで、この影響の低減が期待できるとしている。

各種物性試験の結果から、宇宙でも安定して使用できる樹種として今回打ち上げる木造人工衛星の実機(フライトモデル)の構体にはホオノキ材を選定している。住友林業紋別社有林で伐採したホオノキを使用し、構体の構造はネジや接着剤を一切使わず精緻かつ強固に組み上げる「留形隠し蟻組接ぎ(とめがたかくしありくみつぎ)」と呼ばれる日本古来の伝統的技法を採用している。

今後の展望

ISSから放出後は木造構体のひずみ、内部温度分布、地磁気、ソフトエラーを測定し、京都大学構内に設置された通信局にデータを送信する計画だ。今後はこの木造人工衛星から得られる各種データの分析を進める方針。

京都大学は今回のLignoSat1号機の開発ノウハウと運用データを、これから計画を進める2号機の設計や2号機で計測を検討するデータの基礎資料としていくという。

住友林業は今回の開発を通して得られた知見をさらに分析し、ナノレベルでの物質劣化の根本的なメカニズムの解明を目指す。このメカニズムを解明することで木材の劣化抑制技術の開発、高耐久木質外装材などの高機能木質建材や木材の新用途開発を推進するとしている。従来は木材が使われていなかった箇所での活用、例えばデータセンター施設等への木材利用の拡大に繋げ、林業界、木材業界の発展に貢献する方針だ。

京都大学

住友林業株式会社

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