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「供血猫」って知っていますか?命をつないでくれる、大切な存在

ねこちゃんホンポ

供血猫という存在

緊急事態に輸血に協力してくれる猫を探さなければいけない、とても緊迫した状況が容易に想像できたと思います。これは実際に私が動物病院で働いている時に起きた事例です。

しかも一度ではなく、動物病院の現場では比較的よくあることです。 そんな時、命をつなぐために活躍してくれるのが供血猫です。

供血猫とは輸血の際に血液を提供するために、動物病院で飼育されている猫の事を言います。全ての動物病院にいるわけではなく、比較的規模の大きな動物病院では供血猫を飼育しているところがあります。

人では献血ルームなどで前もって採血した血液を輸血に使うことができますが、猫では血液の長期保管ができないため、基本的にその日にドナーから採血した血液を患者動物に輸血しなければなりません。

そのため、獣医療にとって供血猫という存在は、命を救うためにとても大事な存在なのです。

どんな猫が供血猫になるのか

供血猫になるには、いくつかの条件があります。

✔日常から良好な生活環境で飼育されていて、健康であること
✔年齢は1~7歳程度であること
✔定期的に健康診断を受けて、異常が認められないこと
✔過去に輸血を受けた事がないこと
✔雌の場合、出産経験がないこと
✔混合ワクチンを接種済みで有効期限内であること
✔猫白血病ウイルス抗原、猫免疫不全ウイルス抗体が陰性であること
✔体重が4kg以上であること

他にも動物病院によりその条件は変わってきます。

また、実際には猫の性格も重要となってきます。輸血の採血は数分かけて首の血管から行うため、その間動かずにいられる温厚でおとなしい猫が望ましいです。

供血猫はどこからやってくるのか

そんな供血猫ですが、実はもともとは動物病院に預けたまま飼い主さんがいなくなってしまった猫や、病気であることを理由に動物病院に捨てられてしまった猫が多いです。その中で適正のある猫が供血猫となります。

実際、私の家にも供血引退猫がいますが、この子も子猫の頃に兄弟猫と共に動物病院の前に捨てられてしまい、それから約7年間供血猫として動物病院で活躍してくれました。

輸血の流れ

輸血をする前には、ドナーとなる供血猫と輸血を受ける猫の血液適合のチェックを行います。

猫は血液型が、A・B・AB の三種類あり、異なった血液型の血を輸血すると重篤な拒絶反応を起こす可能性があります。

また、ドナーの血液検査を行い、健康状態や「ヘマトクリット値」という貧血を示す値に異常がないかも確かめます。

血液が適合すると、次はドナーから輸血のための採血を行います。おとなしい猫ではそのままの状態で採血をしますし、動いてしまう猫の場合には鎮静処置をすることもあります。

一度に採血できる量は1kgあたり10ミリリットル程度で、この量を目安に採血を行います。

基本的に一度輸血のドナーとなった供血猫は、体力の回復のため次の輸血ドナーになるまで必ず21日以上空けます。

供血猫から採血された血は、機械を使い数時間かけてゆっくり患者動物に輸血されます。

供血猫の暮らし

よく供血猫のお話をすると、そのために飼われているのはかわいそうと言われることがあります。確かに動物病院での生活は、自宅で飼育されている猫とは違った環境かもしれません。

しかし、動物病院で飼育されている猫は日々動物病院のスタッフからたくさんの愛情をこめて飼育されています。それ故に、輸血の時も怖がることなく獣医師に身を任せておとなしく採血させてくれる猫がほとんどです。

そして、ドナーとして頑張った日には特別なおやつをご褒美に準備します。採血という猫にとって苦痛なことをするからこそ、その子たちが少しでも幸せに過ごせるように動物病院スタッフも日々愛情を持って接しているのです。

そして、供血猫は引退すると動物病院のスタッフや動物病院に通う飼い主さんの自宅に引き取られ、飼い猫として第二の人生を歩んでいきます。

ドナー登録という選択肢

動物病院で働く供血猫について紹介してきましたが、供血猫を飼育していない動物病院ではそこに通う患者さんにお願いをして、ドナーとして協力してもらうことがあります。

供血猫のいない動物病院では、輸血が必要な時に電話でお願いのできる猫を、事前にドナーとして登録をお願いし、そのお礼として健康診断が無料で行えたり、フードをプレゼントしたりしているところもあります。

まとめ

供血猫は日々病気の猫を助けるために協力してくれていますが、実際は供血猫のいない動物病院が多いのが現状です。

自身の猫に輸血が必要となった時のためにも、猫を飼育している私たち一人一人のドナー登録が、病気の猫を救うことにつながります。

動物病院にドナー募集と掲載がなくても、問い合わせるとドナーを募集している場合もあります。この記事を読んで下さった方が、一人でも猫の輸血に関心をもってご協力下さると嬉しいです。


(獣医師監修:葛野宗)

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