膨らんだ姿だけじゃない!愛らしい魚<ハリセンボン>の魅力 実は身近な海で採集&飼育できる?
誰もが聞いたことある魚「ハリセンボン」。丸い体で大きな目、胸鰭を動かして一生懸命泳ぐ姿はとても可愛らしいです。
テレビやSNS、水族館など出会う機会も多く、海水魚のなかでもメジャーな魚と言えるかもしれません。
キャッチーな見た目と、姿を想像しやすい名前が特徴的。危険を感じると、膨らんでハリを尖らせる……というのも、どこかキャラクター的で愛らしい魚です。
そんなハリセンボンですが、実は身近な海で採集し、飼育することができるのも魅力のひとつに挙げられます。
ハリセンボンの針は300〜400本?
ハリセンボンはフグ目ハリセンボン科に属している海水魚。比較的暖かい海に生息しており、南日本に加えて伊豆などでも見ることができます。
この魚は身体中に鱗が変形したトゲがあり、危険を感じると水や空気を吸って膨らむ特徴が有名です。
“ハリセンボン”という名前ではありますが、このトゲは実際には1000本は無く、300〜400本と言われています。
特徴的なクチバシ状の歯
そんなハリセンボンは、歯も特徴的。上下それぞれ2枚ずつ(計4枚)が融合して、クチバシ状の歯を形成しています。
この歯はフグ目の魚にみられます。
これにより貝やエビ、カニ、ウニなども噛み砕いて食べることができます。ハタやカサゴのように魚などを丸呑みにすることはなく、バリバリと迫力のある食べ方をする肉食性魚類です。
ハリセンボンの仲間にはネズミフグ、ヒトヅラハリセンボンなど見た目が似ている種が複数います。
網で採集してみよう!ハリの引っかかりに注意
採集することも可能なハリセンボン。方法は、大きく分けて2つあります。
素潜りで捕まえるときは「網」に注意
1つ目は定番の素潜り採集です。
ハリセンボンは浅瀬の岩礁地帯やサンゴ礁に生息しており、岩陰や珊瑚の隙間など隠れているところで遭遇することが多いです。大きな岩の下などを覗いてみるのがいいでしょう。
稀にですが、泳いでいるハリセンボンに遭遇することもあります。ハリセンボンの泳ぎは遅いので、見つけたら簡単に網で採集できます。
しかし、ハリセンボンは危機を感じると膨らむので、テグス(釣り糸のような細い糸)を使ったようなデリケートな網だとトゲが引っかかってしまい外れなくなってしまうトラブルに見舞われます。
網に引っかかってしまう(提供:PhotoAC)
刺激せず優しく網に追い込んであげれば膨らまずに済むことがありますが、水からあげるときは注意が必要です。ナイロンメッシュやラバーの網だと捕まえやすいです。
素潜りでの採集方法では10から20センチの個体をよく見ることができます。一方、不思議と10センチ以下の個体は滅多に見ることができません。
漁港で流れ藻付近を狙うのもアリ
二つ目の採集方法は流れ藻採集です。
流れ藻採集とは、藻やゴミと一緒に、そこに擬態したり隠れたりしていた小さな魚が港に流れてくるところを狙う方法です。いつでも行えますが、台風などの荒れた天気のあとに行くと、流れ藻が多く流れ着いていることが多いです。
この採集方法では、普段は沖にいる珍しい魚たちを見ることができると同時に、ハリセンボンの幼魚を狙えます。
幼魚の頃は外洋で浮遊生活をしているため、船から「プランクトンネット」という円錐形のネットを使用して採集することも可能。ただ、これは誰でもできるものではありません。
一方、流れ藻採集であれば、誰でも簡単に魚を観察することができます。
ハリセンボンは流れ藻に隠れているというより、流れ藻付近にいることが多いです。従って、藻自体を網で掬っても採集できないので注意しましょう。
また、表層というよりも水面やや20~30センチ下にいることが多いので見つける為にはコツが必要です。大きな網を持っていくことをオススメします。
採集したハリセンボンを飼育する方法
ハリセンボンの飼育で重要なポイントは、単独で飼育することです。
ハリセンボンは神経質な面があり、ストレスを感じやすいです。また混泳している魚を丈夫な歯で噛んでしまったりすることもあるので、長期飼育を狙うなら単独で飼育するのが無難です。
海水は、人工海水の素で規定通りに用意。水槽のサイズは、3〜6センチの幼魚なら45〜60センチ、10〜20センチの若魚なら90〜120センチが飼いやすいでしょう。
ろ過装置は、オーバーフロー式の設置が難しくても、外部濾過や上部濾過を使って問題なく飼育できます。肉食魚なので餌や糞で水を汚しやすいですが、プロテインスキマーなどの特殊な機材は必要ありません。
冬はヒーターが必須 夏も水温調整を
しかし、ハリセンボンは熱帯性の魚類なので冬はヒーターが必須です。
また、夏でも水温は26℃付近をキープしてあげましょう。水温が上がりすぎる場合は、クーラーを導入したり、室温の調整をする必要があります。
餌はクリルを軸にバランスをとる
餌は、主にオキアミを乾燥したもの(クリル)を与えます。
時々釣り餌の生オキアミやアサリを与えて、バランスを取るのがコツです。
海水魚飼育の活き餌で一般的なイサザアミも、10センチ近い個体であれば問題なく食べます。幼魚はまだ食べるのに慣れておらず、イサザアミに逃げられてしまう様子が観察されるので、ハリセンボンの大きさに注意してください。
餌をあげる時のポイントとコツ
ハリセンボンはゆっくり近づいて、最後一気に喰らいつく動きをします。しかし、水槽のような狭い環境だと逃げられた時に壁にぶつかってしまい致命的なダメージを与えてしまうことがあります。
確実に餌をあげるためにはイサザアミをピンセットにつかんで与えるか、弱ったものを水槽に放ちます。
幼魚サイズだと気になりませんが、クリルなど柔らかい餌を与え続けると歯が伸びてきてしまうことがあります。そのため、定期的に貝などを殻ごと与えてあげましょう。
単独飼育を前提とし、日常管理としては温度変化を極力避けて定期的な水換えをすることで、長期飼育が狙えます。
飼育を続けるとペットのような存在に
ハリセンボンは人懐っこい魚です。
水槽に慣れてくると餌をねだるような動きを見せてくれることもあり、観賞魚というよりもペットを飼育している感覚に近いかもしれません。
メディア等では膨れている姿ばかりクローズアップされるハリセンボンですが、実はそれだけでなく、可愛らしい一面が多い、魅力豊かな海水魚です。
(サカナトライター:たつ)
参考文献
瀬能宏『山渓ハンディ図鑑13 日本の海水魚』株式会社山と渓谷社 p514
鈴木香里武「ときめき×サイエンス」シリーズ④『岸壁採集!漁港で出会える幼魚たち』株式会社ジャムハウス p72,73