小林亮太×山田健登が描く双子の友情と数奇な運命 ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』“こばやま”ペアゲネプロ&会見レポート
生き別れた双子の血よりも濃い友情と数奇な運命を描くミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』が東京・シアタークリエにて開幕。主人公となる2人の青年ミッキーとエディは、2組のペアによって上演される。2026年3月9日(月)に初日を迎えたのはミッキーを小林亮太、エディを山田健登が演じる“こばやま”(小林・山田)ペア。翌10日(火)には、もう一方の主演ペアとなる渡邉 蒼&島 太星の“あおしま”(渡邉・島)ペアが初日を迎える。
9日の初日を前に実施された小林・山田ペアによるゲネプロ及び会見の様子をレポートする。
悲劇の先に見える、普遍的な愛と問い
悲劇的な結末が待ち受けていても、これはただ悲しいだけの物語ではない。今立っている場所でどう生きるべきか、血の繋がりとは何なのか。運命のいたずらに翻弄される双子の人生に、そして彼らを見守る母親の愛情と覚悟には、生きることと愛情という普遍的なテーマが滲んでいた。
ナレーター役として、ときに物語の登場人物となり、ときにストーリーテラーとして物語と観客の架け橋となる東山義久の語りと歌声と共に、双子に待ち受ける結末が最初に提示される。そこからナレーターに導かれ、双子の誕生というすべての始まりへと時が巻き戻され、物語が進んでいく。
1幕では2人の実母であるミセス・ジョンストン(安蘭けい)と、双子のうちエディを貰い受けるミセス・ライオンズ(瀬奈じゅん)との契約。そして、幼少期のミッキー(小林亮太)とエディ(山田健登)の出会いが描かれる。2人の母親が抱えることになった大きすぎる秘密は、物語終盤まで2人の心を真綿でじわじわと締め上げていく。対するミッキーとエディは、運命のいたずらに導かれて7歳で出会い、血の繋がらない兄弟の絆を交わすほどの親友となる。
1幕の見どころは、子供時代を演じる小林と山田だろう。会見では7歳の子供を演じることに最初は難しさや恥ずかしさを感じていたと稽古での苦労を語っていたが、そんな苦労は感じさせぬハツラツとした7歳の少年の姿が舞台上にはあった。
小林の演じるミッキーは、兄に追いつきたくてやんちゃに振る舞ってはいるけれど、本当は誰かに甘えたい弱さも抱える8人兄弟の末っ子感が漂う。小林の持つ芯の強さと繊細さが色濃く反映されたミッキーだ。山田演じるエディは誰にでも好かれるニコニコとした笑顔を浮かべながら、ときにそのお坊ちゃんな姿にそぐわぬ大胆さを見せる。山田の持つ軽やかさが、怖いもの知らずなエディの魅力を際立たせた。
1幕を使って2人の子供時代がたっぷりと描かれる。純粋で、素直で、怖いもの知らずなこの時代に出会ったからこそ、2人は親友として強く惹かれ合った。2幕の再会シーンで一瞬で子供の顔に戻る2人を見れば、この時代がいかに彼らにとってかけがえのないものだったかが伝わってくる。純粋な時代の思い出が宝物のように輝けば輝くほど、やがて訪れる悲劇は胸に深く突き刺さる。その光と影の落差を生み出したのは、小林と山田が1幕で丁寧に紡いだ子供時代の輝きに他ならない。
主人公はミッキーとエディだが、2人を見守る母親も物語の軸となる。若くして子宝に恵まれ、最後は女手一つで8人兄弟を育て上げるたくましいミセス・ジョンストン。安蘭は1人の少女が母として強くなっていく過程を歌声とともに表現。何度もリフレインされるメロディに、その時々の母親としての心情を乗せる。失ったエディへの愛情に満ちた眼差しに、母としての愛の深さを感じずにはいられない。
一方のライオンズ家は、最初に双子を貰い受けることを提案したミセス・ライオンズと、何も知らずにエディが息子だと信じて疑わないミスター・ライオンズ(戸井勝海)が、一人っ子のエディに惜しみない愛情を注ぐ。血は繋がっていなくとも、彼らは紛れもない幸せな家族だった。しかし、唯一にして最大のウソが、ミセス・ライオンズを苦しめる。どれだけ愛しても、双子の運命がそれを上回ろうとする度に苦悩するミセス・ライオンズの姿を、瀬奈が切なく、そしてどこか狂気的に演じ上げた。
ミッキーの幼馴染で、やがて2人の運命に大きく関わるリンダは、小柄な小向なるがパワフルに好演。ミセス・ジョンストンを思わせる逞しさで存在感を示す。近所の子供たちを率いるガキ大将的なミッキーの兄のサミーを演じるのは秋沢健太朗。いわゆる問題児だが、ミッキーが思わず憧れるカリスマ性も感じさせる。そして、どこからともなく現れて、予言めいた不吉な言葉を残していていく東山のナレーターの不気味さも、物語にアクセントを加える。
悲劇的な結末が待ち受けていても、双子の友情と母親たちの愛が放つ光は、観る者の心に深く刻まれる。小林・山田ペアが初日を迎えた後、10日には渡邉・島ペアも幕を開ける。2組のペアがそれぞれ描くミッキーとエディの物語を、ぜひ劇場で体感してほしい。
≫会見レポート
4人が語る、互いへの信頼と尊敬——会見レポート
ゲネプロに先立ち行われた会見では、両ペアとリンダ役の小向なる、ナレーター役の東山義久、ミセス・ライオンズ役の瀬奈じゅん、ミセス・ジョンストン役の安蘭けいが登壇した。
Wキャストで固定ペアとなった4人に、稽古期間中のエピソードを聞くと、小林は「4人で男子中学生のような時間を過ごしてきた。階段を降りながら歌ったり、遠慮なく意見を言い合ったり」と笑顔で振り返る。渡邉は「役的にも1幕は7歳で進行するので、友情を描くためにリアルに笑ったり嫉妬したりすることが大切。それをリアルに育めた」、山田は「りょうちゃん(小林)を信頼している。何が起こるかわからないけど、大丈夫だろうという感情が芽生えている」と互いへの信頼を口にした。島も「蒼くんとはキャッチボールをしたり、楽しい毎日を過ごしている。その空気感をお届けできると思う」と、カンパニーの雰囲気の良さを語った。
同じ役を演じる者同士、小林は渡邉について「最初は少し年齢差もあって距離があったけれど、どんどん心を開いてくれた。それがミッキーにいい作用をしている。超魅力的」と絶賛。渡邉も小林に対し「最初からずっとかっこよかった。なぜこんなに人に好かれるんだろうというミッキーの魅力を100%体現している。それを真似させてもらいながら稽古を重ねた」と敬意を示した。
山田は島のエディについて「自分では思いつかないような角度から芝居をする。例えばナイフが怖くて逃げるシーンで、なぜか両手を広げて近づいていくんです(笑)。でも子供だと言われたら説得力がある。天性の才能を感じる」と評価。島も山田に対し「健登のエディが大好き。彼のエディを見て勉強になるし、彼がいてくれたから迷うことなく自分のエディを作り上げられた」と感謝を述べた。
そんな4人を見守る小向は「それぞれ全然タイプが違う」とし、「憎めなくて愛おしい人たち」と笑顔を浮かべる。
ナレーター役の東山義久は、その役割について「時には牛乳配達員、時には産婦人科医、時には高校の先生。天使か悪魔か。そんな存在として、キャストに寄り添い、お客さんと舞台を繋ぐストーリーテラー。紙芝居のおじさんのような感じ」と説明。「時によってはミセス・ジョンストンの気持ちに見えてもらってもいいし、お客様がジョンストンさんを責める言葉を僕が体現しているのかもしれない。そういう2つの見方ができたら楽しい」と、観客の想像に委ねる演出の面白さを語った。
安蘭と瀬奈は、宝塚歌劇団退団後、今回が初共演。安蘭は「共演したことがあるような気がするけれど、実は初めて」と笑い、瀬奈も「4人が男子中学生のようなら、私たちは小学生のよう。本当に楽しい」と稽古期間を振り返る。4人の息子への温かな眼差しに、親子として育んだ時間を感じられた。
作品の魅力について聞かれると、小林は「台本をいただいた日から鮮度が失われない。俳優がどこまで自分事として捉えられるから深めがいがある。音楽が紡いでくれる情感の深さも含めて、心を豊かにしてくれる作品」と語る。渡邉は「各年代のしんどさが描かれる。人間の痛みを描きながら、その形が変わっていくのが面白い。シアタークリエだけのブラッド・ブラザーズができている」と力を込めた。
山田は「双子の生き別れという設定だが、これが友達だったとしても成立する物語」と、誰もが共感できることが本作の魅力だと分析。島が「主人公は誰なのかわからないくらい、全員にスポットライトが当たっている」と語ると、周りに「太星も主人公の1人だよ」とツッコまれ、「僕も主人公か」と笑いを誘う場面もあった。
最後に、渡邉は「(島と)お互いにコンプレックスを持っていると話していた。それをさらけ出し合いながら、ミッキーとエディの関係性に繋げていった。人間として成長できる稽古期間だった」と振り返り、小林は「この3人がいなかったら今の自分はない。新しいブラッド・ブラザーズを作ってきたので、それぞれの心で物語を受け取ってほしい」と意気込んだ。
取材・文・撮影=双海しお