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【音楽のある街へ】川崎~クラシックにジャズ、あらゆる音楽が渦巻く街のディープな世界

さんたつ

_DSC7124川崎

クラシックにジャズ、はたまた昭和歌謡にヒップホップなど街に鳴り響く音楽は多国籍タウン・川崎らしく、オールジャンル。しかも、街を上げて音楽を楽しむ催しが一年中、繰り広げられている。

ホテルメトロポリタン 川崎

【案内人】「音楽のまち・かわさき」推進協議会事務局次長 前田明子さん

「音楽を堪能したらおいしい酒場へ!」。

東京都交響楽団、ミューザ川崎シンフォニーホール広報担当を経て、川崎市文化財団勤務。かわさきジャズ事務局長兼任。手にするのは、音楽のまち・かわさきのマスコット「かわさきミュートン」だ。地元ヒップホップグループ「BAD HOP」ファンで日本酒好き。

圧倒的な音の解像度を誇る国内最高峰のホール『ミューザ川崎シンフォニーホール』

5248本のパイプを擁する国内最大級のパイプオルガンがミューザの顔。「観客も演奏家もお互いの顔が見えて、みんなで楽しめるホール」(前田さん)。(C)青柳 聡
ペデストリアンデッキで川崎駅直結。
岡本太郎作の壁画がホワイエを彩る。
1階レストラン街に隣接するガレリア広場にストリートピアノが。

座席がステージをらせん状に取り囲むヴィンヤード(ぶどう畑)形式を採用。アシンメトリーに設計されたホールは音響が豊かで、世界で活躍するマエストロやアーティストたちも絶賛。海外の名門オーケストラによる公演が催される施設ながら、裾野を広げる活動として、ワンコインのランチタイムコンサートや子供向けのレッスン、ワークショップなど、音楽に親しむユニークな企画も多数あり。

☎044-520-0100

駅舎を彩るのは昭和の歌姫のメロディ「京急大師線 港町(みなとちょう)駅」

歴史写真とともに立つ美空ひばりの歌碑。ボタンを押すと歌声が響く。
構内には、川崎工場でプレスされた名盤を振り返る展示も。「日本初のレコードをプレスした、音楽のまちのはじまりの地です」(前田さん)。
ホームを飾る「港町十三番地」の楽譜。

南口改札前で出迎えるのは、美空ひばりの等身大パネルと「港町(みなとまち)十三番地」の歌碑。かつて駅前にあったレコード会社・日本コロムビアでは数々のヒット曲がプレスされ、昭和7年(1932)開業当初の駅名は「コロムビア前」だった。2013年の駅舎リニューアルで、駅メロディ、階段、ホーム壁面など、ひばりさん一色に。ウキウキする駅だ。

レコードライフを支える新拠点が誕生!『ディスクユニオン川崎店』

ヒップホップの街だけあってそのコーナーも充実。「名盤も多くてワクワク。ぜひ手探りのジャケ買いを楽しんで」(前田さん)。
『The Bestof Muddy Waters』は「圧倒的存在感。ロックのルーツです」と店長の赤堀さん。
デンマークのortofon製カートリッジも揃う。
赤堀さんは実は、ガチガチのクラシック派だ。

クラシック、ジャズ、ロック、ヒップホップなど、オールジャンルで6万枚! 2025年6月に開店したばかりながら、レコードを中心に、CD、カセット、さらにはターンテーブルやレコード針も常備し、初めてのレコード生活をも強力にサポート。「川崎のヒップホッパーたちも来店します。DJたちの駆け込み寺的存在になりたい」と店長の赤堀長太郎さん。

10:00〜21:00、無休。
☎044-223-6628

ヴォーカルの座に次立つのはアナタです『川崎ライブハウス Y's』

「アグレッシブな試みが楽しい。しかも、とてもフレンドリー」(前田さん)。
オーナーの町屋さんは大の長渕ファン。「長渕なら目をつむっても弾けます」。笹井さんと共にJ-POPから洋楽まで幅広く、リクエストに応える。

週1で催す「BANKARA」は、オーナーの町屋雄三さんがギターを、店長の笹井淳さんがベースを手にバックを務め、ステージ上で歌えるカラオケイベント。千葉から通う常連がいるほどの人気っぷりだ。他にも、持ち寄った楽器を手に課題曲をセッションする「Y’ s JAM」など、ユニーク企画が満載。2025年10月5日の東海道川崎宿場まつりでは、和太鼓と現代音楽のコラボをプロデュース。

☎044-742-8222

ジャズの調べが響く街に開かれしロビーライブ「ホテルメトロポリタン 川崎 FRIDAY MUSIC NIGHT」

「音楽のまちがテーマ。スタッフの胸元にも音符が付いてますよ」(前田さん)。

地域の魅力を取り入れている『ホテルメトロポリタン 川崎』では、2020年の開業時から音楽のまちをテーマに掲げ、ルームキー、客室のメモ帳などに音符や鍵盤をデザインしている。なかでもホールをイメージしたロビーで奏でられる金曜夜(19〜20時)のジャズライブは見逃せない。自由観覧の投げ銭スタイルで、ドリンク片手にゴキゲンな曲に身を任せたい。

ホテルメトロポリタン 川崎
住所:神奈川県川崎市幸区大宮町1-5/定休日:無/アクセス:JR川崎駅から徒歩2分

あらゆる音楽が渦巻くディープな川崎スタイル

川崎が市を上げて「音楽のまち」を推進し始めたのは2004年のこと。事務局次長の前田明子さんによると「もともと工業のまちでしたが、時代の変化で新たなまちづくりが必要となった時に、市内に音大が2つあること、合唱が盛んなことなど、音楽人口がとても多いことに目を付けたんです」。

音楽は街の資源になる。そこで、まちのシンボルにすべく同年『ミューザ川崎シンフォニーホール』を開業。今やクラシックの聖地だが、敷居は高くない。しかも、開業当初の20年前に始めた次世代向けプログラムを体験した子供が大人になり、プロのピアニストになったケースもあるからスゴイ。

クラシックだけじゃない。「川崎は歴史的に移民労働者が多かった街。在日コリアンや沖縄の文化も根づいているんです」。4月には川崎駅周辺で「アジア交流音楽祭」が、『ラ チッタデッラ』では5月に「はいさいFESTA」があり年々、フェスが増えている。9月には、キムチ専門店『おつけもの慶』によるフェス「川崎ドリームイベント」が地元ミュージシャンのプロデュースで誕生した。「カラオケ大会もあって、賞品はなんとキムチ1年分! ね、魅力的ですよね」と前田さんの鼻息は荒い。

秋恒例の「かわさきジャズ」は、競馬場や工業地帯とのコラボがユニークだ。「音楽好きは文化好き。競馬場帰りに『アニメイト』に立ち寄り、その後コンサートに出かけるなんて普通です。ありのままに楽しむ、これが川崎市民の生態です」。

川崎駅東口のストリートライブは指定の4カ所で、市に登録したアーティストたちによる1時間ごとの交代制。12~21時。
友好都市・ザルツブルクの大聖堂の鐘をイメージした案内板。

そういえば、昭和歌謡の聖地・京急大師線の港町駅では「港町十三番地」の鼻歌交じりで改札を抜けるおじさんがいたし『ディスクユニオン川崎店』では親子仲良くシティ・ポップのレコードを漁(あさ)る姿に遭遇。工業地帯で誕生したヒップホップクルーが近年活躍し、今やヒップホップの街とも言われ、まさにボーダレス。

川崎駅東口に出かけると、オペラ歌手がマイク1本で歌っていたり、40〜50代のアイドルグループが踊っていたり。

「以前からストリートライブが盛んでしたが、アニメ『ガールズバンドクライ』の聖地にもなり、今年(2025年)8月から登録制を試行実施中です」

すると、500組を超える盛況ぶりに。他にも、繁華街にはバンド付きで思いきり歌える『ライブハウスYʼs』に昭和歌謡バー、芸能人も通うカラオケサロンなど、歌好きには堪たまらないスポットが多々。「川崎の魅力は多様性です。ディープな世界を存分に満喫していってください!」。

大型ライブホールの先駆け『CLUB CITTA’』前の通りは音楽とアートでにぎやか。

2025年11月23日まで「かわさきジャズ2025」が開催中!

川崎の工場夜景を満喫しながらのジャズクルーズは人気企画。(C)かわさきジャズ実行委員会

工場夜景と楽しむ船上ライブに、『ミューザ川崎』での迫力ライブなど、川崎らしさを追求したジャズフェスティバルを70日間開催中。注目は、10月25・26日の「京急川崎Jazzステーション」と、自動車教習所の跡地を活用した『Kawasaki Spark』でのイベント「TRY! DAY」。川崎市を大きなステージと見立て、小さなスナックや酒場に至るあらゆる場所が会場。ジャズ関連のレクチャー&ワークショップも多々。

詳細はHP(kawasakijazz.jp/)まで。
☎044-223-8623

取材・文=林 さゆり 撮影=泉田真人 写真提供=ミューザ川崎シンフォニーホール
『散歩の達人』2025年10月号より

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