虹色商店 〜「ここにしかない」を大切にする倉敷で、暮らしに寄り添う刺し子と雑貨、そしておいしいものたちを/倉敷市
倉敷美観地区には、日本民藝館に次いで全国で2番目に開館した民藝館である倉敷民藝館をはじめ、職人の手仕事を扱うお店が数多くあります。
国内外問わず「倉敷に来たら、お気に入りの生活の道具を手土産に持ち帰りたい」と美観地区を歩き回る観光客もよく見かけます。
その美観地区から少し離れた東町にある、「本当に良いもの」を扱うことをコンセプトにした雑貨店が「虹色商店」です。
2025年7月までは、くるりと巻かれたかわいらしいクレープを扱ったカフェでしたが、2025年10月に雑貨屋としてリニューアルオープンしました。
新しい店舗のようすや、リニューアルに至った背景を紹介します。
「本当に良いもの」のストーリーをたどりたい虹色商店
虹色商店は、一点物との出会いや手仕事の魅力を楽しめる、倉敷の小さな雑貨店です。
店内には、ていねいな手仕事の品々が並んでおり、商品を扱う以下のメンバー(運営メンバー)が月に一度の運営会議を開き、共同で運営しています。
・ajisaidrop
使い心地が良く、物語のある手染め刺し子糸を販売
・きんぎん堂
全国各地の福祉事業所や支援学校で作られた商品を販売
・nui factory
就労継続支援B型事業所「nui」では布製品を縫製・販売。素材には、国内の産地から良質なものを選び、使用している
・協同組合レインボー・カフェ・プロジェクト
岡山県倉敷市にある、障がい者の自立支援を目的とした事業協同組合
たとえば、こちらの写真の商品は、創業明治21年の帆布の老舗が手がけた綾織の生地を使用しています。現在は廃業しており、もう手に入ることのない貴重な生地です。
珈琲染めや炭染めなど、天然素材による染色を施しています。歴史ある素材選びと染めの工程、そして確かなクオリティに自信を持って縫製しています。
どの作品も、実際に手に取ってお気に入りの1点を選べる
店内の雑貨は一点物が中心です。
同じようなデザインでも、一つひとつ手触りや色合いが異なります。ぜひ、手に取ってお気に入りの一点を選んでみましょう。
雑貨だけではなく、ドライフルーツも人気です。
岡山は「くだもの王国」と呼ばれるフルーツの産地。ただ、くだものは傷みやすいため海外など遠方の家族へのお土産には不向きです。
しかし、ドライフルーツであれば手軽に持ち帰れます。協同組合レインボー・カフェ・プロジェクトが作るドライフルーツは砂糖が控えめで、くだもの本来の味を楽しめる味わいになっています。店内のカトラリーとセットで購入するのも良いですね。
ここにしかない一点物を「自分で作る」体験
「一点物」が指すのは、誰かが作ったものだけではありません。自分の手で作ったものもまた、一点物です。
虹色商店では、自分の手で一点物を作れるワークショップも開催しています。
ajisaidropの刺し子ワークショップでは、縫いたい刺し子生地を選び、糸も複数種類から選べるので、自分好みのデザインを刺せるのが特徴です。
糸はすべて手染めでグラデーションになっているものもあるので、縫い進めていくだけでカラフルな作品に仕上げられると好評なのだそう。
参加を希望する人は、虹色商店の公式Instagramのダイレクトメッセージから予約するか、直接お店で店員に希望を伝えてください。
取材時は、刺し子が好きなお客さんが集まって布を机に広げて相談しあったり、ちくちくと刺し子をする姿もあり、コミュニティとしての機能も見られました。
長蛇の列ができたことも?!ゲストシェフの来店日もお楽しみ
2025年7月まであったクレープの提供が終了してカフェ機能はなくなりましたが、2025年10月からは月に数回ゲストシェフを招いたポップアップイベントが始まりました。
ゲストシェフイベントには、実店舗がなかったり、倉敷から足を運ぶには距離があってなかなか行けなかったりするお店を中心に、運営メンバーが「自分たちも食べたい」と思うお店を選んできました。
イベントによってはオープンの1時間30分前からお客さんが並び、開店前から長蛇の列ができたイベントもあります。
ゲストシェフ出店日も店内の雑貨は通常通り購入できるので、気になるシェフが来店する日に合わせて虹色商店に行ってみるのもおすすめです。
おむつ替えも安心!ユニバーサルデザインの店内
お店は東町にある三軒長屋の真ん中にあります。
町屋には大きな段差がありますが、虹色商店はバリアフリー設計にリノベーションされているので、車椅子やバギーのまま入店可能です。
店内奥には、ユニバーサルトイレもあるので安心です。
子ども連れのかたも、おむつ替えシートを利用できます。
虹色商店の亀山有香(かめやま ゆか)さんに、リニューアルに至った背景やこれからへの想いをインタビューしました。
虹色商店代表の亀山有香さんインタビュー
虹色商店の代表を務める亀山有香(かめやま ゆか)さんに、インタビューしました。
「本当に良いものを作り、適正価格で販売する」ためのリニューアル
──美観地区周辺では珍しかったクレープの提供を終了して、リニューアルした背景を教えてください
亀山(敬称略):
ありがたいことにクレープも大変好評でした。特に年齢層の若いかたが多く来店してくださっていました。一方で、カフェ利用のみで終わって店内の雑貨を目に留めたり、購入してくださったりするお客さんが少ないことに課題を感じていました。
虹色商店は、店内にある福祉事業所などで作られた雑貨の販売がおもな目的でオープンしたお店です。ただ、「本当に良いものを作り、適正価格で販売する」というコンセプトのため、雑貨一つひとつの単価が高くなってしまいます。
そこで、品質が良い分単価が高い雑貨に価値を感じてくれる人の手に雑貨が渡るための店作りが必要だと思い、リニューアルに至りました。
現在は40代〜70代前後の「本当に良いもの」を求めるお客さんが来てくれるようになり、商品の質の良さや魅力、手仕事としての面白さ、そして刺し子のワークショップをはじめとした“ここにしかない体験”を発信する場所として盛り上がり始めています。
また、海外からのお客様も増えていますよ。
ここでしか買えない一点物の雑貨をじっくりと眺めたり、海外にはなかなか持ち帰れないフルーツをドライフルーツにしたお菓子を購入されたりと、楽しまれています。
──ゲストシェフはどのような目的で招いているのでしょうか。
亀山:
リニューアルに伴い常設のクレープは終了しましたが、キッチンは残っているので、シェフを呼んでグルメを提供してもらっているポップアップイベントです。
ファンは多いけれども倉敷からは遠くてなかなか手に入らないお店や、実店舗を持っていないお店のなかで、運営会議に参加するメンバーが「自分たちも心から食べたい」と思うゲストシェフをお呼びしています。
というのも、虹色商店は倉敷美観地区の中心エリアから少し離れているので、普段はふらりと入って来られるお客様よりもこのお店の雑貨を目的にいらっしゃるお客様が多いのです。
しかし、ゲストシェフの来店日はそのシェフのファンのかたがいらっしゃいますよね。いつもと異なるお客様がお店に入って来られて、「これ素敵ね」と作家さんの作品に出会い、自宅に持ち帰っていただく。
良い流れだなと思っています。
ゲストシェフにとっても売り上げを上げる機会や、ここでの経験を生かして実店舗を持つきっかけに使っていただけたらうれしいです。
「ここにしかない」一点物との出会いの場
──ワークショップも定期的に開催されていますね
亀山:
虹色商店に並んでいる商品はどれも、ここにしかない一点物です。
では「ワークショップで作ったものは?」と思うと、それは自分が作ったここにしかない一点物になりますよね。
店内ではさまざまなワークショップを企画していて、ajisaidropさんが店頭に立っているときは、刺し子のワークショップをしています。
私たちが材料などを用意するワークショップもありますが、自分たちが普段やっている刺し子を持参してもらって、みんなで大きな机を囲んで黙々と刺し子を刺すワークショップもあります。
このお店に並ぶ商品を素敵だと感じてくれる人たちにとって、コミュニティのような存在になれたら良いなという気持ちで開催しているワークショップです。
普段から作れるのは、さまざまな種類の型のなかから作りたいものを選び、数種類ある糸のなかからお気に入りの一種類を選んでくるみボタンを作るワークショップです。30分から1時間程度で完成するので、気軽に参加できます。
市販のキットなどはあらかじめ型や糸が決まっていますが、ajisaidropさんのワークショップはすべて自分で選べるので、より「ここにしかない」を実感できるものになっているのでおすすめですよ。
このワークショップは日本人にはもちろんのこと、海外からいらしたお客様にも人気です。刺し子を使った作品は世界中で愛されているので、ここでしか買えない糸や体験は貴重なようです。
──福祉事業所などで作られたものが並んでいることが、店名などに記されていないのはなぜでしょうか
亀山:
障がいのある人が作ったものは安価で市場に出回ることが多いのが現状です。しかし、虹色商店では「本当に良いもの」を並べているため、上質な材料を使っているものも数多くあります。それらを適正価格で販売したいと考えたときに、福祉を全面に出さないという結論に至りました。
雑貨や民芸品を扱うお店で商品を手に取るときは、まず「素敵だな」と見た目や肌触りからその商品に興味をもちませんか?
私たちのお店でも、商品の横にショップカードなどを置いています。
雑貨や民芸品を純粋に愛する人であれば、まずは商品そのものに興味をもってくださり、その良いと思ったものが生まれた背景にも共感してくださるはずです。
倉敷美観地区には、生活の道具を取り扱うお店が数多くありますよね。
そのようなお店のひとつとして来店していただき、目の前の商品との一期一会を楽しんでいただく。そのうえで、作家のストーリーにまで興味をもっていただけたらありがたいな……という気持ちで運営しているので、あえて店名やSNSで「障がい者福祉」というワードを使いすぎないようにしています。
また、雑貨は福祉事業所などで作られたものを並べていますが、ゲストシェフはその限りではありません。グルメを求めていらしたかたが私たちの店を初めて見て、興味を持ってくださるきっかけとしたいと思っているからです。
障がい者福祉を心から応援したい人との出会いも、純粋に作品との一期一会を楽しみたいお客様との出会いも、大切にしていきたいと思います。
──「ここにしかない」商品を選ぶコツはありますか?
亀山:
虹色商店の商品はすべて手に取れるように並べているので、実際に自分の手で持って触り心地や握り心地などを味わっていただくのがおすすめです。
同じような見た目でも、少しずつ触り心地が異なります。
暮らしのなかで日常的に使う道具たちだからこそ、自分の暮らしで使うイメージを膨らませながら選んでみてください。
「出会い」と「井戸端会議の場」として進化していきたい
──今後、虹色商店をどのような場所として活用していきたいですか
亀山:
まず「出会いの場」となってほしいです。
作品だけでなく、作家さんやその背景にあるストーリーも楽しんでいただける場にしたいからです。
それから「井戸端会議の場」にもしていきたいですね。
ワークショップは黙々と作業するのも魅力的ですが、同じことに興味関心のある人たちとおしゃべりをしながら手を動かすのも醍醐味です。
世界中で昔から、みんなで集い手を動かしながらおしゃべりをするコミュニティがありますよね。虹色商店がそのような場になったらと思っています。
おわりに
一点物の生活の道具と倉敷美観地区の人々の暮らしは非常に親和性が高く、今後も暮らしの道具を求める人々にとって欠かせないコミュニティのひとつとなっていくのではないでしょうか。
見て、触って、体験して、お迎えする。
じっくりとお気に入りの一点を探したい人におすすめのお店です。