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浜田一平、個展『それぞれ まちまち』で魅せるアートと音楽と人生と「生で見るとどんな人間にでも絶対に伝わる何かがあるんです」

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浜田一平

シンガーソングライター/イラストレーターとして活動する浜田一平が、個展『それぞれ まちまち』を、6月1日(水)~30日(木)eplus LIVING ROOM CAFE&DININGにていよいよ開催する。自身最大最長となる同展では、さまざまな素材に鮮やかな色使い×いびつなバランスで描かれた25作品を展示。会期中も似顔絵ワークショップと並行し、その音楽同様、日々に潜むドラマにインスパイアされた新作をどんどん追加する予定と、溢れる創作意欲を独特のタッチで落とし込んでいく、生きた個展となっている。さらには、6月3日(金)には自身の音楽キャリアにおけるキーマンであるSundayカミデ(ワンダフルボーイズ、天才バンド)を迎えたツーマンライブを実施し、個展の幕開けを歌でも彩る。

2011年、チャットモンチーらも賞賛の声を寄せた1stミニアルバム『午前三時のグライダー』を全国リリース。2016年よりSundayカミデ主催の関西の名物イベント『Love sofa』のレギュラーメンバーに。2019年には活動の拠点を大阪から東京へ。2020年以降はイラストレーターとしても5度の個展や期間限定ショップ「PEI」を展開するなど、近年は音楽/アートの両軸で表現活動をしてきた浜田一平。飾らない言葉で紆余曲折の人生を振り返ったインタビューの端々からにじみ出る人間味と表現者としての生きざまを、ぜひ見届けてほしい。自らを称し「遅れ過ぎたルーキー」と笑う彼の行く末に、並々ならぬ予感を感じるのはきっと私だけではないだろう。

「僕にもこんな絵が描けるんや……」と思った

――シンガーソングライターとして活動しながら、30代も半ばで全く接点のなかった絵を描き始めて。ミュージシャンが自らのジャケットやグッズを手掛けることはあっても、イラストレーターとしても活動するようになる人は珍しいと思います。まずはそうなったいきさつを教えてください。

2015年に家業を継ごうと親父の経営している会社に就職したんですけど、そう思ったきっかけは結婚で。「夢を追いかけるのもええけど、一度会社に入って働いてみるのもええんちゃうか?」みたいな感じで……当時でもう35歳だったので、かなり遅いんですけどね。

――その段階で就職する=若い頃とはまた違った決断の重さにもなりますよね。

とは言え、親父からは「ぷらぷら生きてたヤツがいきなりやれと言われても難しいと思うし、2年間の猶予をやるからその間に決めろ」と言われたんです。でも、うだうだ考えてたら結局やらへんなと思って、「じゃあ来月からお願いします」って。だって、2年経ったらもう37歳でしょ? 37歳のアホのボンボンがいきなり会社に横滑りしてきて、「すいません、次期オーナーは僕です」ってヤバいじゃないですか(笑)。だから、すぐにでもやろうと。

――音楽をやめるなら、もっと早いタイミングがあったはずで。むしろ35歳まで続けたのに、よくキッパリやめようと思えましたね。

僕は親父の言うことにすごく影響されるというか、今まで全く口うるさく言わなかった人が、真剣な顔をしてここまで言ったということは、相当な覚悟やろうなと思って。でも、やっぱり……辛かった、うん。「俺はこれから重い決断をするんやな」って。

――ただ、今、僕の目の前にいるのは会社員でも経営者でもないわけで。

結果的にはもう全然、うまくいかなかったです。絵を描き始める話にしては相当イントロが長いですけど(笑)。そりゃ親父の下でアルバイトから始めて、社員になって、店長になって……とコツコツ積み上げてきたところに息子がヌルッと入ってきても解せんやろうなと思ってたし、風当りの強さは十分に覚悟して入ったんですけど、まぁ反りが合わず(苦笑)。何とか精一杯のユーモアで返したりもしたけど、最終的にいわゆるパニック障害になって、電車に乗ることも、人と会うのも怖くなってしまって。

――まぁ、人と会うのが怖いのは今でも変わってないけれど(笑)。

それのMAX状態(笑)。それから親父が家に来て、僕の顔を見て「もう辞めるか?」って……。そこで、半年間ずーっと張り詰めてたものが一気に砕けて、おいおい泣いて。結局、会社を辞めることになったものの、まだ病んでるのでひたすら体が重い。そのときにふと、子どもの頃にプラ板に絵を描いて、トースターでチンしてキュッとなる遊びを思い出したんですよ。なぜか急にやりたくなって、引きこもってちょっとぷよぷよしたヒゲまみれの男が奥さんにプラ板を買ってきてもらい(笑)、当時、住んでたマンションのベランダから見た風景を描いたんです。それは今でも家に置いてますけど、「僕にもこんな絵が描けるんや……」と思った。別に今まで絵を描いてきたわけじゃなかったのにどハマりしてしまって、プラ板に絵を描いてはInstagramに上げるのが生きがいになって。

――例えば、関西では奈良にLOSTAGEの五味(岳久)さんがいて、彼は知人のSNS用に似顔絵アイコンを描いたことから音楽とはまた違うベクトルを見いだしていきましたけど、彼には絵の素養があったからまぁ分かる。でも、浜田一平は。

全くそういうわけではない(笑)。僕は『MINAMI WHEEL 2008』でライブを見てからLOSTAGEが好きになって、アイコンのことも知ってたし、五味くんの活動が気になってて。パニック障害も落ち着いていよいよ外出できるかもとなったときに奥さんが、「外に出るいい機会やし、LOSTAGEが好きなら五味くんがやってるTHROAT RECORDSに行ってみようや」と誘ってくれたんです。それでドキドキしながら夫婦でお店に行って、五味くんと初めて話して。僕がひたすら作ってたプラ板をあげたら、すごい戸惑ってましたけど(笑)。最初は完全に五味くんのまねで、五味くんみたいな線で描きたいと思ってましたね。

――最初はコピーから始めて、いずれオリジナル曲を書いていく感じにも似てますね。そこから今の画風を確立していったのは?

最初は無印良品の何てことのないペンで、五味くんみたいに白黒の細い線で描いてましたけど、やっぱりずっとモノマネをしててもカッコ悪いし、差別化するために色を付けたら離れられるかなと思って。今は小学生のときにみんな使ってたターナーの何てことのないアクリルの絵の具です(笑)。

――浜田一平の描く人物像は極端に細長かったり、顔が異様に小さかったりする、いびつな人間というか。

細いペンで描くとコントロールも細かくできますけど、絵の具を使って筆で描くとなると難しいんですよ。でも、ちまちま描いてたらいい絵にならない気がするから、なるべく一筆で描きたい。となると、いびつなバランスになるんですよね。でも、それが面白いなと。

――色がそうさせて、道具がそうさせた。これというスタイルがなかったからこそ、筆に委ねられたのかもしれないですね。

いろいろと勉強したり練習したらそりゃうまくなるとは思いますけど、そんな絵を描きたいわけじゃなくて。それは音楽にも通じますね。誰々みたいな歌とか、音楽的にきちっとした曲を作ってても楽しくないというか、僕がリスナーやったら聴いててテンションが上がらへんと思うんで。

音楽も絵も1~2テイク目が最高

――それが今では、自分のグッズやジャケットだけでなく他のアーティストのそれも手掛けるようになり。2019年に上京して間もなくコロナ禍になって、音楽活動がままならない中では絵が生活の糧にも。

わざわざ東京に行ってまでバイトをするのは違うなと思ってたんですけど、すぐにコロナが始まって。「ライブができない、どうしよう?」となったとき、初めてやった配信ライブで、それの投げ銭チケットと一緒に自分で描いた絵のTシャツとかをBASEで販売したら、すごく好評やったんですよ。そこで、これはもしかしたらいけるかもしれないと思って。

――ただのイラストレーターならこうはならないというか、音楽と絵の関係性が有機的で面白いですね。絵を描くようになって、音楽に対する感覚は変わりました?

絵はすごく自由で、何でもできると思えるんですよ。でも、音楽も本当はそうじゃないですか? だから今は、絵を描くように音楽を作りたいなと思ってます。音楽だけとか絵だけとか、どっちか一つだけだと視野がどんどん狭くなって、煮詰まって、思い詰める。でも今は、曲作りをしていて「あかん、もう分からへん」と思ったら絵を描けばいいし、絵を描いてて行き詰まったら曲を作ればリフレッシュする。それはすごくいいことやと思ってますね。

――音楽と絵に共通するところと、逆に違うなと思うところは?

音楽も絵も1~2テイク目が最高。曲作りでもだいたい最初に思いついたメロディが最強だし、絵も一緒で、何か不自然な感じになったと思って描き足したら、もっとおかしくなる。だから集中して、なるべく一本の線で描きたいんですよね。ただ、音楽は長くやってきた分、こう思われたいとか思われたくないとか、しょーもない考えがすごい邪魔してますね。要らない知識もぎゅうぎゅうに頭に入ってしまってるから、どの手を使っても難しい。車に乗ってて駐車場を探してるのに全部埋まってる、みたいな感じ(笑)。絵は何もない土地でどこでも停められる、っていうか停まらなくてもいいぐらい。絵は誰にどう思われてもいいと、まだ思えてるんですよね。

――絵に関しては、「見た人にほんのひとときでいいからパッと花火が上がるような、水面に波紋が広がるような、自由でいいんだというインスピレーションを湧かせたい」とのことですけど、音楽に対してもそういった思いはあります?

ありますね。例えば、ワンダフルボーイズを初めて見たとき、バックの演奏が始まって焦らしに焦らしてからSunday(カミデ)さんがステージに登場するんですけど、歌い出した瞬間に「みんな自由でいいんや」という声が聴こえてくるぐらいのオーラが出てるんです。それと同じように、音楽でも「自由でいいんだ」と伝えたいのはあります。

――でも、音楽を作るときは全然自由じゃない(笑)。いろんな経験値が渋滞中という感じですね。

そう(笑)。音楽は近くになり過ぎてるというか、自分の中にあり過ぎて。でも、東京に来てから、音楽に対する愛しさがすごく湧いてきたんです。絵をずっと描いてるときに、「ギターを弾いて歌いたい!」と思うことがあって、歌うとスーッとするんですよ。「これは自分にしか思いつかないメロディやな」と思える曲ができたときは感動するし、ライブでお客さんと一つになれてるときに、やっぱり自分には音楽が必要だと思うんですよね。


浜田一平


丁寧にやったことは人に届く

――2020年には大阪the PAX、下北沢CIRCUSで、2021年には原宿kit gallery、大阪the PAX、名古屋HUNNY-BUNNYで個展を開催してきて。去年の11月には3カ月限定の実験的な店舗「PEI」を横浜にオープンしましたね。

また五味くんの話が出てきますけど、THROAT RECORDSみたいなお店ってすごくいいなとは思うけど、計画性がある人じゃないとダメだと思ってたし、周りからも「浜ちゃんは五味さんみたいなことはできへんからやったらあかんで」とくぎを刺されてて(笑)。事の発端は去年の夏に、松田“CHABE”岳二さんがやってる原宿のkit galleryで1週間個展をやらせてもらったことなんですよ。まだ大阪にいたときからよくライブをさせてもらってた下北沢のCIRCUSに、CHABEさんがよく飲みに来てたんです。そこで何回か顔を合わせて、あるときCHABEさんが僕の絵を見て、「いいじゃん! 個展やろうよ」と誘ってくれたんです。でも、僕の方が最初はビビっちゃって……。結局、コロナ禍もあってCIRCUSが閉まることになる=もうCHABEさんとも会えなくなると思って、「個展の話ってまだ生きてますか?」と思い切って聞いたら、「だからずっとやろうって言ってるじゃん! じゃあ来週打ち合わせね」って(笑)。そのときに、CHABEさんから「売上の目標を立てた方がやりがいを感じるよ」というアドバイスをもらって、自分としてはちょっと難しいかなと思うぐらいの目標を立てたんです。でも、1週間が終わったとき、それを超えられたんですよ!

――それはうれしいですね。そうやってCHABEさんの期待にも応えられた。

kit galleryってフランクで柔らかい空気があって、CHABEさんも「一平ちゃんがこの部屋を好きになってくれること自体がうれしいから」と言ってくれたので、昼間は個展、夜は弾き語りライブみたいな感じで、来てくれたお客さんと話したり歌ったりして……。そのときに、コミュニケーションしながら絵やグッズを買ってもらうのが性に合ってるなと思ったんですよ。それもあって、いつかお店をやってみたいなと。その頃はちょうど2ndフルアルバム『であいとわかれとのであい』を作っていた最中だったんで、それを自分の店で売りたいなって。またそこで五味くんとかぶってくるんですけど、LOSTAGEのアルバム『In Dreams』の……。

――自分のお店とライブ会場でしか売らないやり方を。

それを正直、ちょっと……はい(笑)。

――パクった(笑)。

アハハハハ!(笑) それで、横浜の鴨居(THE GUILD IKONOBE NOISE)というところでお店を開きました。僕の初心者向けギター教室の生徒さんが以前やっていたお店の隣がぽっかり空いてたのを何となく覚えてたので、オーナーさんを紹介してもらって。

――周りから散々くぎを刺されてたのに、その頃にはkit galleryの成功体験があったから(笑)。

もう完全にそんなことは頭から飛んでて、「俺ならできる!」と(笑)。オーナーさんからの「家賃もちょっと安くするし、まずは3カ月お試しでどう?」という提案もあって、僕も初心者やし、むしろその方がいいなと思って。

――実際、3カ月間「PEI」を経営してみてどうでした?

お店を継続していくのは、やっぱり大変やなって。最初の1カ月はみんな来てくれるんですよ。でも、それ以降はもうすっからかん(笑)。だから、関西でゲストハウスとかピザ屋もやってるマッカーサーアコンチのアチャコ(プリーズ)さんにも相談して。それでもお店を回していくのに必死で、そうなると作曲とかもできなくなる。どうせなら、来てくれた人に楽しんでほしいじゃないですか? でも、お店の家賃、光熱費とかを考えると、お金に変わるモノやサービスが必要なわけで、そこだけを見てると非常につまらないものが出来上がってしまう。金もうけを忘れて自分が楽しいこと、テンションが上がることこそが大切なんやなと。いろいろと勉強した3カ月でしたね。

――絵とか音楽がお金に変わる喜びを味わいながら、その難しさも改めて感じた3カ月。

そうやってお店をやるのが大変やと思い知ると、来てくれるお客さんに「うわ~ありがとう!」みたいな感謝の気持ちもひとしおでした。僕のライブのMCを聞いてたら「うそつけ!」と思われるかも知れないですけど、人と話すのも少しはうまくなったと思います(笑)。あと、お店のレイアウトとかグッズのキャプションを、どう配置したら、どう書いたら、興味を持ってもらえるのか、手にとってくれるのかを考えるようになりました。結局、思ったのは、シンプルですけど、丁寧にやるということですね。丁寧にやったことは人に届く=そこをサボると届かないということですね。

世の中って何となくの雰囲気で決まってることが多いと思うんですよ

――そして、キャパシティ的にも期間的にも過去最大となる個展『それぞれ まちまち』が、6月1日(水)~30日(木)eplus LIVING ROOM CAFE&DININGにていよいよ行われます。

僕の絵のマネージャーの今井美穂(株式会社Office球根)が、たまたま用事で渋谷に行って、ふらっと入ったのがeplus LIVING ROOM CAFE&DININGで。大きいサイズの絵をたくさん飾ってたので、「ここにはどういう流れで展示できるんですか?」みたいに彼女がお店の方に聞いてくれたのが始まりですね。2019年に上京したとき、当時はまだ東京に住んでたシンガーソングライターの田渕徹くんがウェルカム飲み会を開いてくれたんですよ。たぶっちゃんは、ハーブコーディネーターでもある今井美穂がやってる高田馬場の喫茶CAPELAで1日バーテンダーとかライブをしてたから、その飲み会に彼女もいて。僕が絵を描いてるのも知ってくれてて、「いい絵ですね。これはもうちょっと広げられるんじゃない?」というところから、ハーブティーのパッケージイラストを描かせてもらったんですよ。そうしたら、その絵を見た方が「起業しようと思ってるんで名刺を描いてください」みたいにどんどん広がって……。その流れで彼女が、「じゃあもう私が絵の仕事に関しては取り持ちます!」みたいな感じになったんですよね。

――個展のタイトルは『それぞれ まちまち』と、なかなか聞かない言葉です。

コロナ禍で人と人が離れていって、僕も友達とケンカしたりもして。他にも、僕の友達と友達がめちゃくちゃもめてたり。

――自分自身も、周辺もちょっとザワザワして、いがみ合ってるのを感じると。

今となっては戦争まで起きてるじゃないですか。世の中って何となくの雰囲気で決まってることが多いと思うんですよ。音楽シーンもそうですけど、四つ打ちが流行ったり、マスタリングで音圧を出すようになったり……ファッションみたいに「次の流行りはこの色です」とまで決めてるわけじゃないけど、「何となくこういう感じが流行ってるから、俺らも何となくこうしておこう」みたいなことが結構あるんちゃうかなと思って。戦争も結局、人間の雰囲気が作り出してるところもあると思うんですよね。「戦争反対」という大枠ではみんな一致してるのに、小っちゃいところで僕と友達がケンカしてたら、そりゃその積み重ねで戦争も起きるわなと。その辺の頭の中を個展のタイトルにしようと考えて、「許す」、「近づく」、「分かち合う」……でも、どれもピンとこーへん。元々みんなが「それぞれ」違って当たり前だとちゃんと認識しておけば、そもそも許す必要もないし、わざわざ近寄っていく必要もない。人間やねんから好き/嫌いも絶対にあるし。でも、「それぞれ」だけではパンチがないなと思ってたら、大阪のおばあちゃんがよく「まちまち」やなとか言うのを思い出して(笑)。『それぞれ まちまち』ってつなげたら、堅苦しくもないしいいなと思って。

――関西出身であることが思わぬところで生きたと(笑)。個展に向けて制作中の絵は、キャンバスだけではなく、木材とかいろんな素材にも描かれていて。

期間限定のお店「PEI」をやってたとき、商品を置く台とかを木で作ってたんです。それがまだめっちゃ余ってて(笑)。その木に「PEI」の壁に絵を描いたときに使ったアイボリーのインクを塗ってみたら、すごく合うなと思って。あと、とある人の個展を見に行ったとき、中にプチプチが入ってる黄色い航空便みたいな封筒に絵を描いてるのを見て、別にいろんなものに描いてもいいんだなと思って。それも『それぞれ まちまち』に通じるんじゃないかと思ったんですよね。

一瞬でも感情が「何かやってみよう」とクリエイティブになってもらえたら

――さらに、今回はただの個展ではなくミュージシャンによる個展ということで、Sundayカミデを迎えたツーマンライブが会期中の6月3日(金)に行われます。浜田一平の音楽キャリアにおけるキーマンであるSundayカミデは、改めてどういう存在ですか?

年齢はそんなに変わらないんですけど、ちょっとお父さんに近い(笑)。絵に関してもそうですけど、いつも無条件に「ええやん、もっと行け!」と言ってくれる人で、Sundayさんのとにかく人を否定しないところは僕も学んでいきたいなと思うし、Sundayさんの作った「firefly」(ワンダフルボーイズ、天才バンド)という曲をライブでよくカバーしてるんですよ。定期的にツーマンライブを続けて、そのライブで相手の曲をカバーをして、それを集めたカバーアルバムを出したいとずっと思ってたんですけど、今回の個展をやらせてもらうのにあたって、会場の方が「ライブもできますよ」と言ってくれたんで、そこをツーマンライブシリーズの初っぱなにしようと。それを誰とやるかと考えたとき、やっぱり背中をバーンと押してくれるSundayさんやなと思って。

――本当に大きな存在のアーティストと、記念すべき日を迎えられるのは楽しみですね。

一応、こう見えて音楽的にちょっと自信もついてきたんで(笑)、2017年にSundayさんとツーマンしたときは『サンデーさんといっしょ』というタイトルやったんですけど、今回のツーマンは「VS」というか、アーティスト同士の競演みたいな心持ちです。

――そう考えたら絵はもちろん、音楽もしっかり準備しないと、ですね。

本当に。さっきも言いましたけど、Sundayさんは「自由でいいんだ」と感じさせてくれる人。何なら音を鳴らさなくても、ステージにいるだけでそういう雰囲気がするんですよ。それはSundayさんがそう強く思って生きてるからやと思うんですよね。僕が好きなバンドとかミュージシャンって、だいたいみんなオンリーワンでクセが強い人が多いんです。Sundayさん、クセが強いじゃないですか?(笑) だから単純に憧れますよね。

――今年やりたいこととして、過去最大の個展、ツーマンライブシリーズ、カバーアルバムという三本柱があって。ツーマンライブ自体がカバーしたくなるようなキャストを呼ぶというテーマですけど、浜田一平にとってカバーとは? 七尾旅人の「サーカスナイト」や、はっぴいえんどの「しんしんしん」などもライブでカバーしていましたが。

カバーを歌ってるときは自由なんです。他人の曲やから責任がないんで(笑)。自分の曲やと何かを背負ってるし、それがすごみに聴こえることもあるけど、時に邪魔にもなる。カバーを歌ってるときは本当に空っぽで、「歌いたい!」だけで歌ってますね。結局、音楽の課題=人間の課題やと思うんですよ。僕は人と会うことをビビッてて、どう思われるかを気にしてる。それが僕の人間の課題で、音楽の課題でもあるから。

――だからこそ、カバーというのはそれを外す装置になる。浜田一平解放計画ですね(笑)。なのでSundayさんとのツーマンでは、Sundayさんの曲をカバーすると。

もちろんするし、僕の曲でSundayさんにベースを弾いてほしいんですよね。Sundayさんはその存在自体が魅力的なのもあるけど、ベーシストとしてもなかなかクセがあるというか、すごくいいベースを弾くんですよ。昔、僕が「笑ってくれよ」という曲をライブでやって、Sundayさんがベースを弾くというシチュエーションがあったんですけど、普通のベーシストは絶対に弾かへんやろうなというフレーズを急に出してきたんです。でも、僕の歌を邪魔せず絶妙に盛り上げ、かつベースラインもすごくきれいで。

――当日はカバーのみならず、そういうコラボレーションにも期待ですね。

ツーマンシリーズに関しては今後もいろんな人とやっていくと思いますけど、僕は良くも悪くもすぐに影響されるんで、どんどん変化していくと思うんです。何だかんだ愚痴を言う割には楽天家だと自分では思ってるんで(笑)、いい感じに変身していく姿も楽しんでもらえたらなと。絵に関しては、昔から美術をやってきたわけじゃない人間だからこその独特な色使いとかタッチがあると思うし、実際そう言われることも多いので、そういうところも見てほしいですね。1カ月という期間は僕の個展史上最長で、描く絵も大きいサイズばかりで。大きい絵を描くときってものすごくエネルギーを使うんで、物理的な迫力だけじゃなくて、そういうことも感じてもらえると思う。音楽もそうですけど、生で見るとどんな人間にでも絶対に伝わる何かがあるんです。自分で描いてても絵からすごい念が伝わってくるんで。それを見て、「明日あれを食べよう」とか「やろうと思っててやれなかったことをやろう」とか、「ちょっと人に優しくしてみよう」とか何でもいいんですけど、一瞬でも感情が「何かやってみよう」とクリエイティブになってもらえたらいいなって。

――JPEGの画像を、モニターやスマホで見るのとは全く違う感情がそこにはあって。いい1カ月になりそうですね。

金土日はなるべく在廊するように努めますし、普通にカフェにお茶しに来てもらって、ちょっと絵を見てもらって。「この絵を描いてるヤツってどんな人かな?」と思ったら、その辺で「こんちわ」って言ってるんで(笑)。ぜひ遊びに来てほしいなと思います。

――今年の活動の山としてこの個展がありますけど、それ以降の目標は何かありますか?

(筆者が)いつも「一平は本当に心が動かされたときに書いた曲でこそ力を発揮する」と言ってくれるじゃないですか。だから、今年はもっと心の動く場所に出て行って、できるだけたくさんの人と出会いたいと思ってます!

取材・文=奥“ボウイ”昌史

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