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旅先で「自分に手紙を書く」習慣が、心と時間にゆとりをくれる。多忙な人にこそ、すすめたい理由

新しい働き方メディア

旅先でも、ふと気づくとスマホ画面ばかりを見てしまう。クセのように写真を撮り、SNSに投稿し、レスポンスを気にする・・・・・・そんな自分に、ちょっと飽きてきていませんか? そんなデジタル疲れを感じている人に向けて、前回は「旅先から自分宛に手紙を出す」という意外な楽しみ方を紹介しました。

今回はその続編として、9年間にわたって旅先から自分に手紙を出し続け、2024年には手紙エッセイ本『おてがみじかんで ほんの少し 心にゆとりを』を出版したライター・小森利絵さんに、実際に「どんな手紙を書いているのか」「なぜ続けているのか」をうかがいました。

仕事や日常に追われ、心のゆとりを持ちにくい人ほど、旅先での数分の「自分に手紙を書く時間」は、情報のインプットから一度離れ、自分の内側にある思いや感情をアウトプットする時間に。また、慌ただしい日々では見過ごしてしまうような、自分の本音やささやかな感動に気づくきっかけになるかもしれません。

書き方はシンプル。「事実9割+感想1割」で十分

書くことが苦手な人にとって、手紙を書くことはハードルが高く感じられるかもしれません。しかし、「読むのは自分なので、そんなに気負わなくていいんです。私もそんなにたいしたことは書いてないんですよ」と小森さん。実際に見せてもらった、2024年夏に旅先から出した1通の手紙には、「どこに行った」「何を見た」「何を食べた」といった出来事が、淡々と記されているだけでした。

「これは旅に出てすぐに乗った観光列車の中で書きました。無地のハガキを持参して、乗車券を貼り付けて、オリジナルポストカードを創作。そこに書いているのは、何時に乗って、何を食べたかというものです。一緒に旅した娘にも、ひと言書いてもらっています」

以下はその全文です。

表(宛名)面:
2024年8月1日(木)10:40、この葉書を書き始めました。とにかく!! (電車が揺れるから)字を書くのが難しい!! 10:10出発のこの列車は大阪あべのばし。大阪府から奈良県に突入。出発と同時にバーカウンターに行って、マカロンとぶたまんを購入。お手紙タイムです!! 1時間と少しの列車旅。降りたらどこに行こうかと考えたり、ぼーっと車窓の風景を眺めたり(「きれい」「高知もこんな感じ?」とおしゃべり)、こちょこちょこのお手紙を書いてみたり。

ちえのおかげで青のシンフォニーに乗るきっかけをもらい、初◎吉野! 新しい扉を開いてもらったということで、カギの切手を選びました。

裏面:
ちえが通学途中に駅でポスターを見かけて乗りたいと!
車掌さんに押していただいた記念スタンプ。

「電車のホームの広告で見た青のシンフォニー!
ついにのることができてうれしみ。グリーンたくさん」
(ちえより)

「ただ思いついたことを箇条書きにしているだけです。ほかの人が読んだら、『だから、何?』と思うかもしれませんね。でも、私にとってはこの一文一文が“記憶のスイッチ”になっているんです。『あのぶたまん、ジューシーだったなぁ』『縦書きにするか、横書きにするか、まだ決めていない時に車掌さんがスタンプを持って来てくれたんだよなぁ』とか。書いた瞬間の空気やにおいまで、1年経った今でも思い出せることがたくさんあります」

旅の記憶は、思っている以上に“ささいなこと”に宿るのかもしれません。だからこそ、難しく考える必要はないのです。書きたいことが思いつかなくても、「残したい」と思う気持ちがあれば、それだけで十分。思い浮かぶままに書き出してみるといいのではないでしょうか。

道具もタイミングも、すべて自由でOK

あらためて、「旅先から自分に手紙を書く」ためのヒントをまとめておきます。

(1)旅先で出会うものを、手紙の素材に

ペンとノリだけを持参し、ポストカードや切手などは、旅先で調達するのが小森さん流。ご当地ならではのポストカードは、土産店のほか、アート系の雑貨店や美術館のショップなどで見つかることがあります。ホテルに置かれたメモ帳を便箋代わりにしたり、観光案内所の地図やチラシを封筒に再利用したりするのもおすすめ。無地のポストカードに風景を描いてみたり、記念スタンプや乗車券で装飾したり、ご当地限定の切手を貼ったりすれば、よりこの旅ならではの記録になります。

(2)書くのは「旅のすき間時間」で

ホテルで寝る前に、移動中の電車内で、カフェでの休憩中になど、旅の合間のちょっとした時間を使えば十分。

(3)旅先で投函することで、記録に深みが出る

「自分宛だから持ち帰ってもいいのでは?」と思うかもしれませんが、旅先で投函すると、その地域の消印や風景印、ご当地ポストなど、“その場所ならでは”の記録と体験が残ります。

思考を整える、小さな創作の時間

「日記でもメモでもなく、“手紙”というかたちにするからこそ、未来の自分と会話しているような感覚にもなるんです」と小森さん。

今の自分ではなく、少し未来の自分に宛てて書く。だからこそ、肩の力を抜いて、自分の本音に耳を傾けやすくなるのかもしれません。また、スタンプを貼ったり、旅先でもらったチラシや地図を添えたり、風景を描いてみたり……「旅先でのものをちりばめて書くこと自体が、小さな創作活動のようで楽しいんです」とも。紙に書くというアナログな行為そのものが、静かな思考整理の時間になるのです。

書いた手紙は、いったん自分の手元を離れ、郵便局員さんの手を経て、数日後に届きます。忙しい日常に戻った時、ポストに届くその1通が、忘れていた感覚を呼び起こす“スイッチ”になるはずです。自分のための、ささやかな贈り物。次の旅で、自分に手紙を書いてみませんか?

お話をうかがった小森利絵さん
「“あなた”がふと空を見上げたくなるメッセージを届け続けたい」。2008年から編集プロダクションや広告代理店、ウェブ制作・運営会社等に所属し、編集・ライティングの経験を積む。2014年からフリーライターに。主に、人物インタビューに注力している。高校生の娘と一緒にフリーペーパー『えんを描く』発行、お手紙を書く時間を楽しむ会「おてがみぃと」主宰、お手紙がある暮らしを書き綴るコラム「おてがみじかん」連載なども。2024年に『おてがみじかんで ほんの少し 心にゆとりを』を自費出版。

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