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「音楽の楽しみを一緒に探す」 コロナ禍の学生を応援するコンサート

HUB沖縄

サクソフォン四重奏の豊かな音色で観客を魅了する「The Rev Saxophone Quartet」

 新型コロナウイルスの影響でコンテストの中止や練習の制限が続き、吹奏楽部の学生たちはモチベーションを保つのが難しい不安な環境の中で音楽を続けている。そんな学生たちを元気づけることを目的にしたコンサートが沖縄市民会館で11月13日に開催された。演奏を披露したのは、世界的にも珍しいサクソフォン四重奏という構成で活動する「The Rev Saxophone Quartet」の4人。“コロナ禍の芸術と学生を応援するコンサート”(沖縄テレビ放送主催)と銘打ち、エネルギッシュかつ魅惑的な音色で多くの学生が訪れた会場を包み込んだ。

 プログラムの最後にはコザ、那覇、普天間、宮古の4高校の吹奏楽部員24人との共演というサプライズもあり、演奏に加わった高校生たちの快活な笑顔が弾けた。

「楽しむために上手くなる」

 The Rev Saxophone Quartetでソプラノ・サクソフォンを演奏する上野耕平さんは、第28回日本管打楽器コンクールサクソフォン部門で、史上最年少で第1位を獲得したと同時に特別大賞も受賞。『情熱大陸』や『題名のない音楽会』などの番組にも出演し、注目が集まっているプレイヤーだ。自身のサクソフォンでの表現の可能性を追求しながら、全国各地で楽器や音楽の楽しさを伝えるクリニック(講習会)にも精力的に取り組んでいる。

 今回のコンサートの前日、アンコールでの共演に向けて行われた沖縄の高校生たちとのリハーサルを終えた上野さんは「本当に良い子たちで、一緒にやればやるほど人も音も変わっていきましたね」と笑顔を浮かべた。立場としては指導する側ではあるが、上野さんは「指導してるつもりは無いんです」ときっぱり。

「感覚としては『一緒に楽しみを探している』という感じですよ。音楽には一生愛し続けても愛しきれない程の豊かさと懐の深さがあります。だから、技術的に上手くなることを目的にしてはもったいない。“より楽しむために”上手くなるんです。そういう音楽の根源的な楽しさを共有したいんです」

サクソフォン四重奏の豊かな音色で観客を魅了する「The Rev Saxophone Quartet」

高校生たちの憧れの存在

 リハーサルで上野さんと一緒に演奏した仲眞朱由さん(コザ高3年)は「いつもYouTubeで画面越しにしか上野さんを見ていませんでしたが、実際に生の響きを感じられて感動しました」と目を輝かせていた。スマホのアルバムに上野さんの画像が並んでいるほど“ガチ”のファンだという。普段はアルト・サクソフォンを吹いているが、今回は上野さんと同じ楽器を吹きたくてソプラノを手に取った。

 「本当に憧れの存在なんです」と興奮を隠せない様子の仲眞さん。今回のリハーサルでは姿勢から見直すことになって「普段の練習で基礎を疎かにしていたこと気づきました」と初心を思い出したという。「こんな機会は2度とないと自分に言い聞かせながら、固まらずに楽しんで演奏できたらいいなと思ってます」と意気込んだ。

 リハーサルを終え、アイドルを目の前にして興奮を抑えられないファンのようになった高校生たちが代わる代わるカルテットのメンバーと写真撮影をして歓声を上げていた光景がとても微笑ましかった。

カルテットのメンバーと記念撮影する吹奏楽部員たち
ソプラノ・サクソフォンの上野耕平さん(左)とバリトン・サクソフォンの田中奏一朗さん(右)

 コンサート当日。「G線上のアリア」の繊細で穏やかな調べが鳴り響いた幕開けで、会場の空気は一変した。心地よい音に身を任せてしまおう、という安心感をもたらすような演奏で一気に観客の心をつかむ。各地の民謡を織り交ぜた「ふるさと狂詩曲」は、演奏前に上野さんのMCで、沖縄民謡の「安里屋ユンタ」が盛り込まれていることが示されたこともあって、観客が聞き取ろうと集中している空気が会場を満たす。カルテットのメンバーが編曲したQUEENの美しいバラード「love of my life」と、映画の記憶も新しい「Bohemian Rhapsody」が立て続けに披露され、第1部が終了した。

音楽奏でる姿に感じる希望

 演奏の素晴らしさもさることながらメンバーによる曲間のトークも軽快で、楽曲について分かりやすく解説してくれるため、“観客フレンドリー”で全編通して曲の世界観に入りやすい。

 第2部では緩急の効いた「サクソフォン四重奏曲」に始まり、今回の公演で世界初披露となる「愛の悲しみ」の悲哀と美しさが同居した旋律も印象を残した。演奏の合間に上野さんが「金管の同属楽器でも、これだけ豊かな響きがあるんです」と説明した言葉通り、次々と演奏される楽曲はカルテットとは思えないほどの厚みと多彩さがある。

 アンコール1曲目は、金管カルテットのために作曲されたのではないかと錯覚を覚えてしまうような見事なアレンジの「見上げてごらん夜空の星を」。続いては、いよいよ高校生たちとの共演だ。

カルテットと「宝島」を演奏する吹奏楽部員たち

 楽曲は吹奏楽の言わずと知れた名曲「宝島」。ステージに高校生たちが呼び込まれると、学生を代表して前出の仲眞さんが上野さんと短く会話を交わして配置についた。軽やかなリズムが刻まれると会場からすぐに手拍子が起こり、明朗でダイナミックなメロディが空気を彩る。序盤は学生たちに緊張が見えたものの、後半に向かう楽曲の盛り上がりとともに生き生きと演奏を楽しんでいる気持ちが表情に溢れ出す。
 上野さんもリズムに合わせて手拍子する大きな仕草をして客席を煽り、満面の笑みで学生たちと目配せしながら「音楽の楽しさを共有すること」をステージで体現していた。

 演奏が終わると、達成感に満ちた爽やかな面持ちの高校生たちとカルテットのメンバーが深く一礼し、会場は大きな拍手に包まれた。

 長らく続くコロナ禍でさまざまな制限を課され、多くの高校生たちが本来過ごせたはずの学生生活という大切な時間を満足に送ることができなかった。そんな中、今回ステージで演奏した高校生たちは貴重な経験を得ただけでなく、朗らかなその姿を見ていた人たちにも希望や温もりを与え、音楽や芸術が必ずしも「不要不急」ではないことを目に見える形で示した。
 これから、この日のような光景が色んな場所で少しでも増えてほしい、そんな思いを強くするコンサートとなった。

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