新国立劇場、ベンジャミン・ブリテンの名を一躍有名にした傑作オペラ『ピーター・グライムズ』を上演 芸術監督・大野和士のコメントも公開
2026年11月23日(月・祝)~12月5日(土)新国立劇場 オペラパレスにて、2026/2027 シーズンオペラ『ピーター・グライムズ』が上演される。
本作は、イギリスを代表する作曲家ベンジャミン・ブリテンの代表作で、1945年にロンドンで初演され、ブリテンの名を一躍有名にした傑作。ブリテンの故郷オールドバラを思わせる荒涼とした漁村を舞台に、孤独な漁師ピーター・グライムズが村人たちから少年殺害の疑惑をかけられ、追い詰められていく物語。貧困や児童虐待を題材にし、孤立していくピーター・グライムズの悲痛な叫びと暴走する集団心理とが描かれ、グライムズのささやかな希望と挫折、絶望への転落を緊張感の中に綴り、社会の不条理を観客へ突き付ける。海や月の光、嵐を描写する音楽の美しさ、力強さも特徴で、『ピーター・グライムズ』から編曲された「4つの海の間奏曲」は、オーケストラ作品として頻繁に演奏される名曲だ。
演出を務めるロバート・カーセンは、日本でも、バイエルン州立歌劇場、ミラノ・スカラ座など著名劇場の来日公演、またサイトウキネン・フェスティバルでも数々の演出作が紹介されている、世界トップ演出家のひとり。本プロダクションはカーセン演出により 2023年10月にミラノ・スカラ座で初演され、多くの絶賛を得た。ベンジャミン・ブリテン没後50年。社会の弱者への眼差しを持ち続けたブリテン、そして舞台作品に力を注ぎ続けたブリテンの真骨頂といえる、記念碑的上演でもある。
タイトルロールのピーター・グライムズ役を演じるのは、ウィーン国立歌劇場やメトロポリタン歌劇場の常連として活躍する世界的テノール、ブランドン・ジョヴァノヴィッチ。このロバート・カーセン演出のプロダクションのミラノ・スカラ座での初演にも出演し、爆発的な攻撃性と優しさ、脆さを行き来する圧倒的な表現が「観客の心を激しく揺さぶった」と絶賛された。グライムズが思いを寄せるエレン役には欧州主要劇場で活躍し、各地でエレンを歌って称賛を集めるイギリスのソプラノ、サリー・マシューズ、バルストロード船長にワーグナー歌手として国際舞台を駆けるジョーダン・シャナハンと理想的な歌手が揃った。
指揮はブリテンを特に愛し、モネ劇場、リヨン歌劇場、エクサンプロヴァンス音楽祭などで度々ブリテン作品を指揮している大野和士自らが当たる。もう一人の主役として真価を発揮する新国立劇場合唱団にも期待しよう。
【あらすじ】
1830年頃、北海に面した漁村。見習いの少年を死なせた罪に問われた漁師ピーター・グライムズの裁判が行われている。偶然の事故であると無実を主張するグライムズだが、付き合い下手な彼に対して、村人たちは疑惑の目を向ける。グライムズが想いを寄せる教師エレンは新たな徒弟を紹介するが、この少年もまた不慮の事故に遭ってしまう。村では少年の捜索が行われ、疑惑の念は増すばかり。グライムズに同情的なバルストロード船長も彼を庇いきれず、グライムズは一人海に船を漕ぎ出す―
新国立劇場オペラ2026/2027シーズン≪新制作≫ ベンジャミン・ブリテン『ピーター・グライムズ』トレイラー映像 Benjamin Britten Peter Grimes, Trailer
芸術監督・大野和士からのメッセージ
2026年 11-12月はブリテンの傑作『ピーター・グライムズ』を上演します。元来私には、新国立劇場でブリテンを上演したいという強い想いがありました。コロナ禍で上演した『夏の夜の夢』(2020年)は、感染対策の必要から作品本来の躍動的な舞台を創り切れなかったという思いもあり、今度こそ良い形で、そして今の、現代社会にこそ響く作品をと考え、本作を選びました。
主人公の漁師グライムズは実直で裏表のない男ですが、周囲から誤解され、社会から疎外されていきます。しかし、ブリテンの鋭い視線が描くのは、彼を糾弾する「村人(集団)」の側に潜む闇です。子供の行方不明を巡り村人が彼を詰問する場面の合唱など、人間の心理の奥底を描く音楽の劇性はたぐい稀なものです。作中に流れる波のような音楽は、この問題が時代を超えた普遍的テーマであることを暗示しています。
演出は、2023年にミラノ・スカラ座で初演され話題を呼んだ巨匠ロバート・カーセン。アイディア豊富で信頼の厚い彼との舞台が楽しみです。キャストには、スカラ座でも主演した世界的テノールのブランドン・ジョヴァノヴィッチ、英国の名ソプラノのサリー・マシューズを迎えます。実力派の邦人キャスト、そして本作の鍵を握る新国立劇場合唱団の圧倒的な表現力にもご注目ください。モネ劇場、リヨン歌劇場に続き、私にとって3度目の『ピーター・グライムズ』。これまでに蓄えた経験を活かしていけたらと思っています。皆さま、劇場でお待ちしております。