まもなく緑化フェア終幕 祭典支えた「裏方」たち 生産者「無理だと思った」
川崎市で4月13日まで開催の「第41回全国都市緑化かわさきフェア」では、秋開催と合わせて累計約500種類もの花が会場を彩ってきた。華やかなイベントの裏では、苦労して花を育てた生産者や、数万株の花を同時に管理するチームなど、多くの「裏方」たちが祭典を支えていた。
今回の緑化フェアは川崎市制100周年を記念し、これまで定番だった春開催に先立つ秋開催も加わった。そのため全会期を通して必要な花の量が多く、生産者たちは初めての品種に挑戦したり、開花時期を調整したりする必要があった。
高津区の花卉農家、武笠康浩さんは、秋開催に向け9月にガーデンシクラメンを1740株、春開催の準備のため11月下旬にパンジーを3万株納品した。ガーデンシクラメンは7月から育て始めたが、連日40度を超える酷暑から苗を守るため、遮光カーテンなどで工夫したという。それでも「何度も『無理!』と思った」と武笠さん。パンジーやビオラも展示デザインに合わせた色彩を持つ種類と株数が指定されたため、難しい対応の連続だったという。
10万株が一堂に
「かわさきフェア植物調達協議会」の植物調達実務統括部長を務める江口政喜さん(56)によれば、緑化フェアの全期間で必要となった花の量は約38万株。春開催だけで約12万6千株が、3会場のイベントや設営デザインに応じて植栽された。
これらの花苗は市内を中心とした神奈川県全域と、千葉県や埼玉県から集められた。すべてをいったん等々力緑地会場に隣接する「バックヤード」で集約し、多種多様な花を適切に管理したうえで、3会場のイベント設営の時期に合わせて正確に届けることが、調達協議会の任務だった。
バスケットコート1面分ほどのバックヤードに、一時は最大約10万株の花苗が集まった。混乱を避けるためにトレーや苗の入れ物に、品種と「行き先」が分かるシールを貼って管理した。
江口さんが「最も難しかった」と語るのが、寒さ対策だ。バックヤードも場所によって温度が異なり、花の種類ごとに耐寒性も異なる。「昨年のクリスマスイブの朝なんてマイナス5・8度。花苗の天敵は『霜』。メンバーで夜な夜な動画で霜について学び、対策を練った」。ビニールシートや木材などで「軒」を作り、苗を霜から守ることができたそうだ。
緑化フェア成功のために、人知れず汗を流し続けた裏方たち。江口さんはこう振り返る。「生産者や造園業者などの職人気質の方々が協力して作業を続けたことで、横のつながりが生まれた。これは今回のフェアが残した宝物の一つだと思う」