【エリアトラウト】伊藤雄大のクランク用ライン術。エステル・PE・ナイロン使い分け
クランクの釣果を引き出すのはサイズやレンジコントロールだけではない。ラインの選択がアングラーをサポートし、結果的にキャッチできる魚を増やしてくれる。エリアトラウトの第一人者、伊藤雄大さんのラインの使い分けに迫る。
解説◎伊藤雄大(いとう・ゆうだい)
写真と文◎編集部
1982年生まれ。2017年、2025年トラウトキング選手権大会マイスター。醒井名人戦3度の総合優勝。今季も既に15勝を挙げるなど絶対王者の名を欲しいままにするアングラー。バリバスフィールドスタッフ、ベルベットアーツ代表。
クランクだけでもラインにこだわる理由
エリアトラウトをこれからやり込みたいと思ったときに、まず直面するのがラインの種類の豊富さだろう。メインラインの素材の違いだけでナイロン、フロロ、エステル、PEと4種類あり、各社から多くの製品が発売されている。
現代エリアトラウトの基軸となるエステル、リーダーが必要なくクッション性が持ち味のナイロン、飛距離で他を圧倒しフッキングも決まりやすいPE。どれを使っても何かしらの答えが返ってくるのがエリアトラウトの世界だから、最初はひとつに決め打ちして使い込んでみるのもいいが、やはり状況によって使い分けてみると奥の深い世界をのぞけるだろう。
スプーンに比べてそこまで厳密にレンジのコントロールに気を遣わなくても釣果を得やすいクランクでも、状況やルアーに応じてラインを使い分けることで、クランクというルアーの威力をさらに引き出せる余地がある。
2017年トラウトキング選手権大会トップマイスター獲得をはじめ数多くのトーナメントで結果を残してきたエリアトラウトの第一人者である伊藤雄大さんも、クランク用のタックルにはエステル、ナイロン、PEを使い分けている。今回は山梨県のフィッシュオン鹿留にて実演してもらったクランクのラインセレクトをお伝えしたい。
ラインのセッティングで捕れる魚がいる
クランクが得意な状況と3つのタイプ
まずは前提として、伊藤さんはクランクというルアーをどう捉えているのか。
伊藤さんが考えるクランクの出し時は3つ。
人的プレッシャーや水温変化などの影響で、スプーンの巻きスピードでは追わせきれないスローなコンディション。スプーンよりスローなリトリーブで強い波動のアクションを出せるのがクランクの最大の強み。沖の表層に魚が溜まっている状況。シャロータイプもしくはリバースタイプのクランクなら重いスプーンと同等の飛距離を出せて、かつゆっくり表層のレンジを引くことができる。魚の活性が高い状況でスプーンに反応しない個体を取りこぼしなく釣りたい場面。早い展開ができるクランクが有効になることも多い。
また、ひと口にクランクと言ってもさまざまなタイプがあり、得意なシチュエーションが異なる。伊藤さんは大きく3つに分類している。ノーマル、ニョロ系、リバース系だ。
ノーマルはずんぐりしたボディーから下向きにリップが伸びている基本的なタイプ。リップの長さと角度で潜り方が変わり、また浮力の設定もフローティングからシンキングまでありそれぞれ浮くスピードと沈むスピードもさまざまにラインナップされている。こういった要素の組み合わせで探りやすいレンジやスピードが変わってくる。
ニョロ系は細長いボディーが大きく湾曲しているタイプで、デッドスローな巻きスピードでトラウトに追尾させて食わせるのが得意。
これら得意な状況を念頭に置いておくと、各ラインの特性との組み合わせで、より威力を発揮するセッティングにできるのだ。
ラインブレイクを防ぐ「太め派」の哲学
さて、伊藤さんがクランクに合わせるラインは素材別で言えば3種類、製品では4アイテムを使い分けている。(愛用ラインやセッティングは下記見出しを参照)注目したいのは数多くのトーナメントで活躍している強い伊藤さんでも、限界ギリギリを攻めるような極細のセッティングにはしていないことだ。リーダーも細くて3Lbで、2Lb台まで落とすことはない。
「私はメインラインもリーダーも太め派です。ひとつひとつのルアーへの愛着が強くて絶対無くしたくないんです」と伊藤さん。
クランクはスプーンと比べて高価だから、ロストしにくいセッティングを組むのはぜひ参考にしたい。まだルアーの個数が揃っていないビギナーならなおさらだ。そして、それ以上に魚に対するケアの意識も感じた。釣り場ではラインブレイクしたルアーが口もとに付いたまま泳いでいるマスもよく見かける。バーブレスフックだから自然に外れやすいといえども、やはりその状態では弱ってしまいやすいだろう。エリアトラウトというジャンルだからこそしっかりとアングラーの手でリリースしてあげたいものである。
現代エリアトラウトの基軸となるエステルライン
【長所】
伸びが少なく感度に優れる透明なため魚に警戒されにくい
【短所】
リーダーの装着が必要
1. 放流・中大型クランク用セッティング
「ES2」は適度なしなやかさを追求したエステルラインで0.4号の太さがあっても扱いやすいため、放流ねらいの大型スプーンとの兼用で中大型クランクを巻くためのタックルに愛用している。エステルラインはスプーンのタックルと兼用でき、タックル持ち込み制限のあるトーナメントでも重宝する。このセッティングはかなりの汎用性があり、伊藤さんのイチ押し。
■中大型クランク用 使用アイテム
ライン:スーパートラウトエリア ES2エステル ナチュラル0.4号(バリバス)リーダー:スーパートラウトエリア ショックリーダー VSP[フロロカーボン]4Lb主なクランク:パニクラDR、ワウ40F、さかさにょろ、ベルベットアーツ開発中リバースニョロ系 など
参考フック:さまざまなフックと合わせやすい
2. 小型クランク用セッティング
小型クランクを繊細に巻くためには「スーパーエステル」の0.3号をフロロリーダー3Lbとの組み合わせで使う。中軽量スプーンとの兼用タックルで、小型クランクを遠投できるよう細めを合わせている。
またクランクも小型であればアクションが小さいため、エステルのなかでもとくに伸びが少なく細号数でも高感度のスーパーエステルがマッチする。小さなバイトを逃さず捉えたい場面が多くなるため、フックはナロー気味だがわずかにハリ先が開いたキャンバス#9(バリバス)を使うことが多い。
■小型クランク用 使用アイテム
ライン:スーパートラウトエリア スーパーエステル[ナチュラル]0.3号(バリバス)リーダー:スーパートラウトエリア ショックリーダー VSP[フロロカーボン]3Lb主なクランク:ダンゴウオ SR-low、ちびパニクラ DRSS、マイクロシケイダー など
参考フック:キャンバス#9(バリバス)
クッション性を生かしたいならナイロンライン
【長所】
クッション性が高いため、掛けてからのバラシを減らせるリーダーが不要である
【短所】
小さいクランクの挙動はやや曖昧に感じられる
専用タックルで大型クランクを攻略
中~大型クランク用に専用タックルを組めるならナイロンラインも大いに活躍する。とくにリップの長いタイプやボディーが大きいタイプのリトリーブでは、ラインが常に張りつめた状態になるため、ナイロンのデメリットである感度の低さが表れにくい。魚が掛かってからはクッション性がバラシの防止に役に立つ。
リーダーは必須ではないものの、伊藤さんはより高い強度を求めてリーダー(フロロ4Lb)を装着している。合わせるフックはハリ先が内側を向いて貫通力とホールド性に優れるキャンバス#7(バリバス)を多用する。
ハリが掛かってさえくれればバラしにくいのがナイロンラインだ■ナイロンライン用 使用アイテム
ライン:スーパートラウトエリアSVG[ナイロン]3Lb(バリバス)リーダー:スーパートラウトエリア ショックリーダー VSP[フロロカーボン]4Lb主なクランク:ディープクラピー、シケイダー、キビパニ など
参考フック:キャンバス#7(バリバス)
放流ねらいの早巻き&ニョロ系にはPEライン
【長所】
最も伸びが少なく感度に優れるフッキングの力が伝わりやすいラインシステム全体の強度を最も強くできる
【短所】
リーダーの装着が必須となるハイプレッシャー環境ではラインの存在感が警戒されやすい
伸びのなさを活かして「掛けていく」
伊藤さんがPEラインのセッティングを使用するのは、早巻きに適したクランクでスプーンに口を使わない放流魚をねらっていくケース。伸びのなさを生かしてバイトに対してガツンとフッキングを入れて釣っていくので、合わせるフックはワイドゲイプタイプのキャンバス#6、同#7.5、STフック各サイズ(ヤリエ)などがマッチする。
また、ニョロ系クランクを使ったサイトフィッシングでバイトの瞬間に掛けていく釣りにもメリットが大きい。PEラインは水中で目立ちやすいため、伊藤さんはリーダーを1ヒロほどと長め(PE以外では20~30cmほど)にとっている。
横風の影響が気になるところだが、「あまり気にしなくても大丈夫」と伊藤さん。「ふくらんだなりにアタリがあったら合わせればよく、今の高弾性なカーボンロッドと伸びが極めて少ないPEラインなら、フッキングが間に合いますから」とのことだ。
■PEライン用 使用アイテム
ライン:スーパートラウトエリア インフィニティPE X8 0.2号(バリバス)リーダー:スーパートラウトエリア ショックリーダー VSP[フロロカーボン]4Lb(※1ヒロと長めに取る)主なクランク:ワウ37HF、ウッサXS、ピコイーグルプレーヤーS、ベルニョロ VAHF など
参考フック:キャンバス#6、#7.5(バリバス)など
ロッドよりも重要? フックとの組み合わせ
釣り場のコンディションに対して、投げたいルアーとアプローチが決まり、そこからさらにラインが決まる。次に気になるのはタックルだ。例えば伸びの大きなナイロンや、逆に伸びにくいPEではそれぞれ適したロッドのテーパーや弾性など、かなり気を遣わなければいけないのでは?
「いえ、ロッドよりも釣り方によって適したフックを選ぶほうがはるかに大事だと考えています。まずはお手持ちのロッドでラインとフックの組み合わせにこだわってみてください。そのうえで、まずは基本となる『とりあえずこれ付けとけバリ』というものがあって、おすすめは大きめのクランクにはキャンバスの#7(バリバス)、小型クランクにはキャンバスの#9です。このふたつはハリ先がやや内向きにネムっていて、多くの状況である程度オートマチックに掛かってくれるハリです。
そこから、アングラー側で掛けにいきたいとき、例えば放流ねらいで速く巻くときなどはネムっているハリだとつるんと口から出てしまうので、よりワイドゲイプでハリ先が開いたハリを。スローなコンディションでアタリがわかりにくく完全に魚任せで乗せたいときはよりナローゲイプでさらにハリ先が内側を向いているハリにする、といったかたちで使い分けてみてください」
というのが伊藤さんのアドバイスだ。それぞれの項目に伊藤さんの使用頻度が高いフックも記載しているので参考にしてほしい。
ラインとフックの組み合わせが重要と話す伊藤さんはマグネットを敷いたフックケースですぐに取り出せるシステムにしている
自分に合う組み合わせを探そう
最後に、伊藤さんは自らのタックルセッティングを絶対のものとして勧めているわけではない。ロッドの硬さ、アングラーの反応速度、フィールドの水質やプレッシャーなど、状況は常に変化し、最適な組み合わせも人によって異なる。重要なのは、それぞれのラインがもつ基本的な特徴を理解して、そのうえで自分に合う組み合わせを探し続ける姿勢なのだ。ライン選びは難しく思えるかもしれないが、理解が深まるほどクランクベイトの楽しさは倍増する。自分に合ったラインとクランクの組み合わせを見つけたとき、その一投が魚との距離を一気に縮めてくれるはずだ。
スローシンキングの小型クランクでこの日のレンジと活性にアジャストしてキャッチした1尾。伊藤さんは魚体になるべく負担を掛けないように、ネットの下から魚を持ち上げるポーズも最近は控えている
伊藤雄大のクランク用タックルデータ
●中大型クランク用ロッド:Rose613MLL(プロト/ベルベットアーツ)リール:イグジストLT2000S-P(ダイワ)ハンドル:ファンネル45mm(REVIVE)ライン:スーパートラウトエリアES2エステル ナチュラル0.4号 または SVG[ナイロン]3Lbリーダー:スーパートラウトエリアショックリーダーVSP[フロロカーボン]4Lb●小型クランク用ロッド:Rose612L(プロト/ベルベットアーツ)リール:イグジストLT2000S-P(ダイワ)ハンドル:ファンネル45mm(REVIVE)ライン:スーパートラウトエリアスーパーエステル[ナチュラル]0.3号リーダー:スーパートラウトエリアショックリーダーVSP[フロロカーボン]3Lb●PE用ロッド:Rose612L(プロト/ベルベットアーツ)リール:イグジストLT2000S-H(ダイワ)ハンドル:ファンネル45mm(REVIVE)ライン:スーパートラウトエリアインフィニティPE X8 0.2号(プロトの高視認性オレンジモデル)リーダー:スーパートラウトエリアショックリーダーVSP[フロロカーボン]4Lb
取材協力:BerryPark in FISH ON!鹿留
問合先:0554-43-0082
住所:〒402-0032 山梨県都留市鹿留1543
営業期間・時間:
3月~11月は6:00~19:30(パインレイクは6:00~19:00)
12月~2月は6:00~17:00(パインレイクは6:00~18:00)
※定休日なし
料金:
一日券(6:00~17:00)男性4900円、女性・中高生4600円、子供(小学生以下)2700円
デイタイム券(9:00~15:00)大人4200円、子供1600円
半日券(6:00~12:00または12:00~17:00)大人4200円、子供1600円
※パインレイクを含む全エリアでの釣りにはスーパー鹿留券(一日券大人6700円など)が必要。
アクセス:中央道・都留ICを降り、R139を西進。鹿留入口交差点を左折で県道713号に入り鹿留川に沿って進む。
大ものが放流され人気のパインレイクは雰囲気抜群