自閉スペクトラム症(ASD)の特徴と対応③複数の動作を同時にこなすコツとは?【心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話】
コレクションが好き
強いこだわりが収集癖や知識欲といった形で現れることもあります。たとえばミニカーや鉄道模型など特定のオモチャばかり何個も集めてみたり、世界の国旗や百人一首を正確に暗記していたりと、こだわりを深めることで安心感を得ているようです。なかにはただコレクションするだけではなく、一定のルールでオモチャを並べ、それを眺めることで満足感を得るといったケースもあります。
同じ動作やルールに執着する
体を揺らす、手を叩く、爪を噛むなどの同じ動作を繰り返すことを「常同行動」といいます。ストレスや不安を感じたときに決まった行動をとることで「いつもと同じ」を確認し、安心感が得られるのです。一方でさまざまなルールを守ることに固執する子どももいます。ルールに従うことで「いつもと同じ」状態を保ち、想定外の変化による不安やパニックを避けるためだと考えられています。
マルチタスクが苦手
雑誌を読みながらご飯を食べる、おしゃべりしながら服を着替えるなど、私たちは普段から特に意識せず、複数の動作を同時にこなしています。しかし、ASDの子どもはこうしたマルチタスクにうまく対応できません。本を読むなど主に目を使っているときは、食事の手が止まってしまったり、咀嚼するのを忘れたりします。当然、そのタイミングで話しかけられても聞き逃してしまうことがほとんどです。
<C O L U M N>
家族が見た発達障害③(Eさん・40代女性)大事なのは物事の頼み方
学校生活が始まっていくと、親だけではなく本人にもいろいろとやることが出てくるもの。宿題や明日持っていくものなど、多くのタスクが重複する日もある。しかし、いろいろなことを同時にこなそうとすることで一気に情報量が増え、行動がストップしてしまうこともあった。そこで複数のやるべきことをこなすためにいろいろと工夫をしてみた。そのひとつが「順番を決めてあげる」というもの。明日までに必要な事柄・物を親が把握して、どの順番でやっていくかを提示する方法だ。学校であったことを聴きながら、明日の提出物を確認。それを「じゃあ、○○してから××しようか」と順番を決めてあげると、目標が定まるため、やりやすそうであった。
【出典】『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』
監修:湯汲英史(ゆくみえいし) 日本文芸社刊
監修者プロフィール
公認心理師・精神保健福祉士・言語聴覚士。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。現在、公益社団法人発達協会常務理事、早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園巡回指導員などを務める。 著書に『0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる』(学研プラス)、『子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ』(鈴木出版)、『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 ―話す前から一・二語文まで― 』(明石書店)など多数。